魔法少女の異世界刀匠生活

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第七章

秩序を司る神霊-02

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「まずは前提として何故私がお前たちに手を貸すのか、だ」

「神なのですから、我々人間をお救いする、という事ではないのですか?」

「阿呆かシドニア。いちいち神が人間を助けるかよ。そんな簡単に手を貸してたら、それこそ人間は堕落し、いずれ進化が停滞する。少しは頭を使え」


 バカにしつつ副流煙をシドニアの顔に吹きかけられ、青筋を立てながらもカルファスに「シドちゃんどーどー!」と宥められる彼が「では、何故……!?」と怒りを内包した問いをする。


「私はクアンタにして貰いたい事がある。それがクアンタをこのブリジステ諸島に転移させた理由なのだが、それはマリルリンデという別のフォーリナーが存在する限り果たせない。

 しかし、相対するお前たちは奴について、というより奴等の情報を持たな過ぎる。これでは非効率極まりない為、仕方なく私が干渉できる範囲で干渉してやる事にした、という訳だ」

「一つ質問、よいか?」


 シドニアの部下であるサーニス、アメリアの部下である黒子たちもいない為、アメリアはクアンタが用意した水を飲みながら、手を上げた。


「ああ、どうぞ、アメリアさま」

「先ほど貴様は、愚弟を阿呆と小馬鹿にしておったが、しかし吾輩も若干解せん。

 確かに人間というのは愚かしいものじゃ。宗教という麻薬に手を染める事によって、居もしない架空の存在を崇拝し、時には『神のお導きがいずれ在る』と信じて腑抜ける、度し難き愚図もおる。

  しかしじゃ、今回の問題に際しては、民衆にも知れ渡っておらん、情報操作の行き届いた現状がある。その状態で神が暗躍して事態を収束したとしても、民草への影響は少ないじゃろうて。

  むしろ事態を理解しており、この状態を良いと考えておらん貴様が、吾輩らに目もくれず、勝手に解決してくれていた方が、手っ取り早いのではないかえ?」


  アメリアの言い分に、ヤエは「お前はやはり話が早い」と、先ほどまでシドニアを小馬鹿にした嘲笑ではなく、真っすぐに彼女の目を見て白い歯を見せたのだ。


「その通りだ。可能ならば私がさっさと事態を収束させた方がいい。お前らがこうして『あーだこーだ』と言っている間に問題を解決し『なんで何も問題が起きないんじゃ?』とするお前ら間抜け面を眺めた方が、個人的にも手っ取り早いし、楽しかったろうよ」

「先ほど貴様は『私が干渉できる範囲で干渉してやる』と言っておったな。――神さまとやらは、人間への干渉に制限でもあるのかえ?」

「少し違うが、近いぞ。私たち神霊は、先ほどのような物理法則を捻じ曲げる等の他、個々に特殊能力を持ち得ている。そしてその能力を持ち得るが故に、弱点に近い制約が存在する。

 例えば私の後輩で『時を飛ばす能力』を持つ神がいるが、コイツの能力は『どれだけ時間を飛ばすか自分でも制御が効かない』という弱点がある、という感じだな」

「もしや貴様の持つ力とやらは『事態を把握できるが干渉範囲が限られる能力』――とでも言うのでは無いか?」


 アメリアの言葉に、数秒返答が無い事が答えだった。

  アメリアとヤエ、他者を挟む余裕などない口頭と目線同士の諍いは、腹の探り合いを超えた、腹の読み合いだ。


「その通りだよアメリア。――ムカつく程に正しい」

「貴様は自分の能力が持つ弱点を早々に見切られ悔しかろうがな、此方とて別に貴様が敵というわけではない。貴様の弱点が此方の弱点にならぬよう、理解しておきたいのじゃ。疾く申せ」

「アメリアの言う通り、私と同化する神霊【コスモス】が持ち得る特殊能力は『過去・現在・未来における状況を観察できるが、自身による干渉が出来ない』能力だ。

 だからマリルリンデや災いという問題が発生した際、私は奴らの状況・情報を把握したが、それに関与する事は出来ず、またその情報を他者に伝える場合も制限がかかる」

「つまり、じゃ。貴様は事態をすべて把握しておる上、どう対処すれば良いかもわかっておるが、それを話す事は出来んというのじゃな?」

「少し違う。確かに話す内容に制限は生まれるが、話せないというワケじゃない」


 もう一つよいか、とアメリアがそこで会話を、一旦止める。


「――憚っておらんじゃろうな」

「それは」

「目を見ぃ」


 アメリアと合わせていた視線に、まぶたを閉じる事によって躱そうとしていたヤエに、アメリアは声のトーンを下げた。

  故に、ヤエも毅然とした態度で彼女と目を合わせ続けた。

  数秒、その時間、姉弟の間に会話も、雑音も無い。


「――良し。全てではないが、嘘はないな」

「す、全てですけどぉ?」

「否、今までの言葉に嘘があるとは言うておらん。まだ貴様には隠し事があるというだけで、これまでの内容に嘘は無いじゃろて」

「……一つ誤解を解くぞ? 私の隠し事は、クアンタにやらせたい事だ。それはクアンタ本人にも伝えていないし、伝える気も無い」

「マリルリンデや災いは、それに関係しておらんと?」

「間接的に関係するからこそ、奴らが蔓延っていては、クアンタにやらせたい事に支障をきたすだけだ」

「ふむん――まぁ、そこを『言いたくない』と申すのであれば良い。隠している事があるというのを隠さぬ輩は、信頼は出来んが信用は出来る故な」


 続けるが良い、と言ったアメリアに、ヤエも少々やりにくそうな顔をする。

 恐らく彼女は今までのらりくらりとした物言いで、ありとあらゆる追求から逃れてきた女だが、アメリアという知略策略、他者の嘘や隠し事に慣れた女は、そうした態度を取る者の真意をも見抜いてしまう。

  そして、四人の姉弟は、そうしたアメリアの強みを理解しているからこそ、彼女にそうした追及を任せたのであろう。


「私が知り得、ある程度話せる情報は、三つ。

 虚力と、マリルリンデというフォーリナーに関する情報。

  そして、リンナさんと刀、災いに関する情報だ」


  まず、と口を開いたヤエは、チラリと寝室へと目を向け、寝室で眠るリンナの寝息を確認する。目を覚ます気配は無いとしたのだろう。


「率先してリンナさんと災いに関する情報から話そう。コレは彼女に聞かれたくない」

「個人的に苦手だからではないのかぇ?」

「ち、違う。確かに怖いけど、べ、別に私の方が強いし」

「なら何故、恐怖心を感じるのですか?」


 単純に疑問としたシドニアの言葉に、ヤエは「そこ聞くか……?」と答えにくそうにした。


「……いや、自分の中でも整理できてるわけじゃないんだが、信じる信じないは別として、神さまと知った上で私を怒った奴は……それも殺意とか無しに、ただ『叱りつける』為に殴り、怒鳴ってきたのは彼女だけだった」

「さっきのオレ達と何が違う?」

「お前たちは自分の立場が偉いとふんぞり返りながら、無礼者と喚くだけの輩にしか見えない。私は五百年近く生きているが、そんな奴ごまんと見てきた。

 ――だがリンナさんは違った。彼女は自分の立場とか、そういうのとは関係なく『大切な弟子であるクアンタを馬鹿にされ、それに怒るのは師匠として当然の事だ』として、私を怒鳴った。

 そんな経験は初めてだったから、私も驚き、怖がってる……いや、少し尊敬しているのかもしれない」


 喋りにくいと言わんばかりに語った内容をさっさと終わらせ、本題に入る。


「結論から言おう。お前たちが調べ上げた『災いに関する刀の伝承』は全て真実だ。

 災いには、リンナさんの打った刀でしか、対抗できない」
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