魔法少女の異世界刀匠生活

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第十六章

菊谷ヤエのドキドキ! 源の泉・探検ツアー(ポロリもあるよ)-08

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「ダメよクアンタ。あまり沖の方へ出ちゃ」

「問題無い筈だ。それより光の屈折によって上手く視認できない海中へと潜ってみたい」

「ああ、もう分かった。分かったから、一人で行かないの」


 なんだか子供の相手をしているようだと思いながら、アルハットが手を繋ぎながらクアンタと沖合の方へ進んでいく。


(いけ、波! そこだ! バシャーッて! 下から、すくい上げるようにっ!!)


 リンナはそんな二者の仲睦まじい姿を見ながらも、邪な考えを波に向けて指示している。

  確かに波はそれなりにクアンタやアルハットの身体を襲うが、きつく結ばれた水着を取っ払う程の威力など勿論ない。


「……そういえばリンナ。一つ言っておくけど」


 そんなリンナの考えを読んでいるかのように、アルハットが若干顔を赤めて声をかける。


「な、なぁにアルハット」

「私達の水着は全部、魔術外装処理を施されてるから、通常の水着よりも圧倒的に頑丈で、結んでる紐とかも人間の介入以外では解けないわ。流石に頑丈さはゴルタナには及ばないけれどね」

「え……ッ!!」

「だから、ポロリを期待しても無駄よ」

「そ……そんな、だ、だって神さまがポロリもあるよって……ッ!」

「そう言われても、海中トンネルを通る必要があるとなれば海中用装備になるしかないけれど、岩場とかで装備に傷が付くと死の危険性も高まるから、そういう魔術外装処理を施すのよ?」

「聞きたくないっ! 大人の理屈なんか聞きたくないよぉっ!!」

「別に大人の理屈じゃないし、どれだけポロリが見たいのよ……リンナのえっち」

「え、えっちじゃないっ!! 女体に並々ならぬ関心があるだけだしっ」

「それをえっちと言うんじゃないの……」


 ハァ、とため息をついたアルハットがクアンタへとついていこうとすると、クアンタも足を止めて、リンナへと手を伸ばす。


「お師匠も行こう」

「え、アタシも?」

「ああ。多分、海中はもっと綺麗だ」


 表情はそれほど、元々のクアンタと変わりないが、その瞳は何時もより輝いているように見える。

  海や太陽の光を瞳が反射していると言ってしまえばそれまでだが――リンナはそんなクアンタを見て、彼女が本当に楽しんでいるのだと実感する。


「……ん。じゃあ行こうかな」

「よし、では行こう」


 リンナの手を握り、そのまま沖合の方へと出ようとしたクアンタだが、しかしそこで一つの問題が。


「がぼ、がぼがぼ」

「クアンタッ!?」

「……もしかしてクアンタ、泳げない?」


 少し深い所に入り、そのまま身体を浮かそうとしたクアンタだったが叶わず、海中に沈んでいってしまったのだ。


「ぷはっ」


 リンナとアルハットが両腕を掴んで、クアンタの身体を安定させる。

  クアンタに呼吸は必要ないし、一応海中を見たいという望みは叶ったが、そこで一つの疑問が。


「……何故、お師匠とアルハットは、浮ける?」

「身体の力を抜けば自然と浮くわよ?」

「嘘だ。私は別に力等入れていない」

「ホントだってば。アタシもそんな泳ぐ練習とかしてないけどさぁ、ホラ」


 クアンタをアルハットに任せ、リンナがその場で背を海に付けながら、プカリと浮く。


「……」


 リンナが実際に浮いた事の真似をしようと、背中からバシャンと倒れてみたクアンタ。

  しかし背中からドンドンと沈んでいく結果、彼女は海中で真顔のまま「ふぁふぇふぁ何故だ……」と悔しがる。


「あー、ちョッといいか、クアンタ」


 と、そこでイルメールが、普段の胸元を隠す布ではなく、青と白の入り混じった柄の水着を着て、近付いてくる。フリルなどの遊び心や装飾こそないが、しかし彼女の肉体に相応しいシンプルなマイクロビキニに、僅かながらな柄が映えるように思える。


「イルメールの水着……良いっ!!」


 そんなイルメールの水着に目を輝かせて興奮するようなリンナだったが、イルメールは僅かに複雑そうにしながら、彼女へ「あー、ありがとよリンナ」と雑に返事をした。リンナに褒められる事は嬉しいが、先ほどの豹変を見たからこそ恐怖はあるのだろう。


「クアンタ、オメェは肺に空気を入れなさすぎだ。ちょっくら空気を取り込め」

「む……」


 イルメールの指摘を受け、クアンタも「確かに空気を多く取り込めば浮くか」と納得し、深呼吸をするように、肺へ空気を送り込む。


「いいか。アルハットの言う通り、人間は基本浮く様になッてンだよ。なのに浮かねェって事は、身体のどっかに無駄な力が入ッてるっつーコトだ」

「……入れていない筈だ」

「ンじャ、もう一回浮こうとしてみろ」

「分かった」


 今一度、バシャンと背中から倒れ、海中へと沈んでいこうとするクアンタ。

  そこでイルメールが「そのままでいいゼ」と言いながら、右手でクアンタの背を支えつつ、海面へと押し出した。

 現在は、クアンタが背中をイルメールに任せた状態で、身体を浮せている。


「さっきの説明に少しだけ注釈だ。人が浮くのは『肺に一定の空気が取り込まれてる』時と『筋肉に無駄な力が入っていない』時だ。ンデ、今は肺に一定の空気入れたな?」

「肯定、人間が生存する上で必要な空気を取り込んだ」

「次だ。オレは今オメェの背中を支えてるが、それ以外の部位はどうなッてる?」

「両手が沈み、両足が浮いている。頭も少し沈んでいるな」

「両足が浮くのは、現状足の筋肉に力を入れてねェから。腕が沈むのは、両手の拳に力が入ッてるからだな」


 クアンタが浮けない理由を、一つ一つ丁寧に説明していくイルメールに、リンナが「ほぉ……」と感心するように眺めている。


「そもそも拳になってるッて事は、大胸筋か上腕二頭筋、もしくは三角筋辺りの筋肉に無駄な力があるッつー事だから、その辺の力を抜く意識してみろ」

「……了解」


 目を閉じ、ハァと呼吸をしたクアンタが、今身体の力を意識して抜く事をイメージしたのか、今まで拳を作っていた手は広がって水面へ浮かび、頭は僅かに下がったが水に浮く事でバランスが保たれた。


「手は離すけど、その脱力を維持しとけ」


 返事を聞かず、イルメールがクアンタの背中を支えていた手を離す。

  すると彼女はゆったりと海面に浮き、波に流されるように身体を揺らした。


「――良しッ! 上出来だクアンタッ! 水泳は普段使わねェ筋肉を育てるのに絶好のトレーニングになるから、今日だけでも意識して泳いでみろ!」

「……ありがとう、イルメール」


 イルメールに理知的な解説と教育をされると思っていなかったクアンタが、複雑そうにお礼をすると、彼女は波打ち際から少しだけ離れた場所へと戻っていき、太ももまでを海に浸した状態で、走り出す。


「イルメールって、トレーニングの時とかはしっかりしてるよねぇ」

「イルメール姉さまは多分、興味のある事と無い事がハッキリしているだけなのよ。正直、地頭の良さはかなり高い方だと思うわ」


 彼女は現状、皇国軍人の教育に力を注いでいるし、鍛える必要があると認識した人物へのトレーニングは率先して参加する。

  今日のアルハットがダイエットをしていた時のように、どうトレーニングをすればよいかを正確に見極め、更に当人の限界を超えたオーバーワークをさせない、トレーニング後に筋肉の超回復も加味した栄養補給の方法等々、考えなしでは無いと言う事は分かるだろう。


「イルメールは皇族だろう? であるのに、何故あそこまで強さを求める?」

「さぁ、私もそこまでは。確か子供の頃に色々あったって聞いてるけど」


 何時だって筋肉と強さを求め、強敵と戦う事を信条とするイルメール。

  そして強敵を作る為に、かつてはサーニスという自身を殺そうとした敵さえも育て、実際にサーニスは彼女に次いで二番目で強い人類と言われるまでに成長したのだという。


「子供の頃に色々……かぁ。皇族の人達って、そういうの多いね」

「まぁ、私はもう、そういう星の元に生まれたと考えているけれどね」


 物心ついた時から第七世代の魔術回路と命を狙われていた結果として【根源化の紛い物】を実現したカルファス。

  先代アルハットや政治委員だった母親を出し抜く為にわざとその渦中へと潜り込んで反面教師にしたアメリア。

  母親からの愛情を受ける事が出来ない時間を多く過ごし、皇帝である父を殺したシドニア。

  母からまともな教育は受けず、ただ親のエゴだけを与えられながらも、母に褒めて貰いたい一心で錬金術を学んでいったアルハット。


  そんな姉弟達の長女であり、深く物事を考えぬようにしているとしか思えぬイルメールに、子供の頃起こった色々とは何なのか、それが気にならないわけではなかったが――


「……まぁ、人の過去なんておいそれと探求するモンでもないしね」

「そうなのか?」


 未だ海面に浮きながら、ドンドンと沖の方へと流されていくクアンタが大きく口を開く。


「そうそう。アタシもそうだけどサァ、人生いろいろあるモンなんだから、それを他人が根掘り葉掘り聞くモンじゃねェって事――ってクアンタ流されてるーッ!?」

「流される感覚というのはなかなかに悪くないぞ」

「ちょ、クアンタ待ちなさい!? ひとまず貴女は浮けるようになったなら泳げるようになりましょうっ!」


 流されていこうとするクアンタを止めに行くリンナとアルハット。


  そんな彼女たちを見て――イルメールは僅かに、笑顔を浮かべるのであった。
  
  
  **
  
  
  コツン、コツンと、皇居にある自室兼執務室の机を指の爪で叩くアメリアは、サーニスの淹れた紅茶に手を伸ばし、一口味わってから、呟く。


「……リンナとクアンタが帰って来んのじゃが?」

「そう、ですね……もう三時間近く、シドニア様方の所にいる事となりますが」


 明らかに不機嫌な彼女にどう対応してよいか悩むサーニスをさらに強張らせるかの如く、段々机を叩く指の力を強めていくアメリア。


「あ奴ら、自分たちが狙われる立場であると忘れているのではなかろうな……!」

「ま、まぁリンナさんやクアンタは元々皇族ではありませんし、そうした意識の低さは少々大目に見て」

「腑抜けかサーニス! 確かに領営病院には黒子共も、ワネットも置いておるが、先日の収容施設のような襲撃をされれば密閉された空間というのはむしろ敵の方が圧倒的に有利なんじゃぞ!? 何より収容施設と異なり、あそこには一般領民が多くおる! そんな所を襲われでもすれば隠蔽も難しくなるではないかぁああもうっ! あ奴らは前回吾輩が言った事を忘れておるなぁ!?」
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