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第十六章
菊谷ヤエのドキドキ! 源の泉・探検ツアー(ポロリもあるよ)-07
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イルメールにすら窘められる程に落ち着きのないクアンタをカルファスが押して、脱衣所に向かう全員。そこにアルハットが多くの荷物を荷台に乗せつつ、霊子転移してくる。
「……アレ。ヤエさん、皆はどこに?」
浜辺を見渡しても、ヤエしかいない状況に首を傾げていたアルハットだが、そこでヤエが「脱衣所」と指示すると、彼女もそちらの方を見据えた。
「アルちゃーんっ! こっちおいでーっ」
「……なんで脱衣所に?」
「クアンタが海に入りたいそうだ」
「……そう、船の用意は時間がかかるのね」
「呑み込みが早くて助かる」
遊んでいる場合でもないでしょうに、と呟きながらも、アルハットは浜辺の隅に荷台を移動させると、その足で脱衣所へと向かう。
「ハイ、アルちゃんの水着っ」
「……クアンタのもそうですが、露出多くないですか?」
「深水も出来るように設計してるから大丈夫っ!」
アルハットの水着はフリルの多く付けられた、胸元が見えるタイプのコルセット水着で、柄は灰色と白色の縞々。
あまり露出が好きではないアルハットは、しかし触れて材質を確認して「ああ、確かにゴルタナみたいな魔術外装処理が行われていますね……」と納得して渋々と言った様子で受け取り、脱衣所の中でさっさとジャージを脱ぎ、黒のビキニを着こむクアンタへ、視線を移す。
「……大きいわね」
「何がだ?」
「い、いいえ。別に」
「アルハットの水着も可愛いから安心してッ! ていうか早く着替えて見せてッ!!」
「何故リンナがそんなに興奮してるの……? そ、それより、あまり見ないで……は、恥ずかしいわ」
顔を真っ赤にして今まさに着替えているクアンタと、着替えようとしつつもジッとリンナに見られていると気付いた結果、恥ずかしがるアルハットを交互に見据えているリンナへ、今度はカルファスが水着を渡す。
「リンナちゃんのはコレ。ゴメンね、丁度いいサイズこれしか無くて、可愛いの用意できなかったや」
「あ、いえ。アタシも正直、可愛いのとか露出多いのとか、あんま好きじゃないからコレが良いです」
リンナに渡された水着は競泳タイプの、紺一色の水着である。肌に張り付く感覚は若干違和感があったようだが、ササッと着替えた彼女は、そこでカルファスへグルリと首を回す。顔を赤くして、何かへ期待するように。
「カルファス様は着替えないんですか!?」
「え、私? 私は王服にそのまま魔術外装処理してあるから、別に問題無いよ?」
だがその期待は裏切られたようで、彼女のテンションはジェットコースターのように急降下。
「そ……そんな……ァッ!!」
「リンナちゃん、前に私の子機が死んだ時より絶望的な顔してない?」
「こうなったら――イルメールにもゴルタナじゃなくて水着を用意するべきですッ!!」
「ぶっちゃけ見たい? イル姉さまの場合、水着を用意する方が難しいんだけど」
なにせ身長は女性の平均身長を優に超えて百八十センチ弱、肉の塊と言わんばかりに膨れ上がった筋肉に合う水着となると、それこそ紐を伸ばしたマイクロビキニ位しかなく、言ってしまうと現在も乳房を覆う布地はビキニにしか見えない。
そう言ったカルファスに、ハァアアァ……と深いため息をついたリンナは、頭を抑えながらヤレヤレと言わんばかりに首を横に、何度も何度も振った。
「……まさかこんな初歩で、皇族の方に意見する事になるとは思いませんでしたが、良いでしょう。ちょっと語らせて下さい」
「え、何、どうしたのリンナちゃん」
「良いですかカルファス様。どんな女体にも貴賤なんか無いんですよ。例えばクアンタみたいにおっぱいが大きくてキレイな丸みを帯びてるのに反して腰のクビレが細くて凄いみたいな超絶体系も素晴らしいですし、それより更におっぱいが大きくも重力に逆らうように天へ反るアメリア様みたいなおっぱいも美貌があって最高です。
でもね違うんですよ。それが女体の全てじゃないんですよ。アルハットみたいに普段は王服で隠れてるけど意外と大きなおっぱいと肌艶、それに加えて彼女の恥ずかしがるあの感じが堪らないんです。大きさにおいてアメリア様やクアンタに勝てなかったとしても問題はありませんし、もっと小さくても良い程です。更にアルハットの魅力を語るとなると外せないのが、恥じらい……ですかねぇ……ホントにこれが追加されるだけで最の高になるわけです。
カルファス様にも水着になって貰いたかったのは、この間カルファス様からぎゅーってされた時に感じたおっぱいの感覚からするとカルファス様もそれなりに大きいモノをお持ちですよね? だからこそ解放的な水着になってもらって確認したかったのと合わせてカルファス様の女体を普段見れない姿で感じたかったわけで、これが分からないなら『素人は黙っとれ――』ってカンジなわけですよ。
で、ここからが本題ですけどイルメールは確かに普段から水着みたいな格好してるし、そもそも女性が好む身体ではないかもしれないです。でも普段のイルメールが着てるのじゃなくてちょっと柄を変えたりとかするだけでも可愛さとか妖艶さとか変わると思いますし水着を着ない理由ないですよね。ていうか何であれば女性にある筋肉ってのも非常に良いと思うんですよイルメールの場合は多すぎる気もしますけどその雄々しく猛々しい筋肉に添えられた母性というか女性らしさというかアクセントとしてあるおっぱいというのは神の恵みにも等しいものですよホント。
何であればイルメールで一番好きな所は筋肉とおっぱいの二律背反みたいな部分なわけで」
「ス……ストップ、リンナちゃん、ストップストップッ!!」
「何ですかまだ十分の一も語ってないんですけど」
「ゴ、ゴメン私が悪かった! イル姉さまの水着も用意するからちょっとだけ待ってて!?」
「分かって下さればいいんですっ!」
カルファスの謝罪とイルメールの水着を用意するという結論に満足したのか、今まで見たことが無いような晴れやかな笑顔でニパッと笑ったリンナが、スキップしながら脱衣所を後にする。ちなみにアルハットとクアンタは既に水着へと着替え終え、脱衣所から出ていっている。
「り、リンナちゃんの目が怖かったよぉ……っ」
「……正直オレの筋肉が褒められてるのは嬉しかったけどヨォ、それ以上に狂気を感じて嬉しい気持ちがどッか飛んでッたぜ……魔術狂いしてるカルファスより狂うとは思わなかった……」
霊子端末を震えた手で操作しつつ、リンナと約束したイルメールの水着を用意するべく、どこかへと去っていくカルファスと別れ、イルメールも海へと行く。
「ッ、」
若干の痛みが、愚母によって切断されて、現在はギブスによって閉ざされている左腕の切断面より走り、僅かに表情をしかめる。そんな彼女へと近付くヤエが「痛いか?」と尋ねた。
「そりャ、傷口は痛むさ」
「そうだろうよ。……クアンタたちの仮説は正しい。お前の精神高揚の結果として細胞活性を引き起こし、愚母の固有能力である浸蝕を食い止めているという仮説はな。だが、それは浸蝕を遅めているだけで、浸蝕による痛みを止めてるわけじゃない」
「問題ねェ。痛みには慣れてる」
「もう何度死んでいてもおかしくない位の激痛が走ってる筈だろう?」
「死んでいてもおかしくない? それこそ可笑しな話じゃねェか。事実として、オレは死んでねェ。つまり、この痛みは耐えきれる痛みだ」
人は一定以上の痛覚を感じると、神経をシャットアウトさせたり、気を失ったり、酷い場合には痛覚によるショック死等も十分にあり得る。
イルメールに毎秒襲い掛かる痛みは――それこそ、身体をバラバラに切り刻まれる痛みと同程度の痛みであり、常人であれば、その痛みに耐えきる事が出来ず、精神を病むか、ショック死を果たすだろう。
だが、イルメールはそれに耐える。
そして耐えられるという事は、死ぬ痛みではないという証明であると考え、その考えが精神高揚を引き起こし、結果として彼女を助けている。
「子供の頃よォ、神さまと同じような雰囲気の女に会ッたンだ。リュート山脈で一人、武者修行してた時だ」
ふと、思い出した事を口にすると、ヤエは煙草のボックスを取り出そうとした所で手を止め、イルメールへ問う。
「そいつ、名前は?」
「知らねェ。聞いてねェ。聞く必要もねェと思ッた。アイツは、オレに筋トレの仕方と、痛みに耐える極意を教えてくれた後、『その内また会えるさ』ッて言って、どっか行っちまった」
「痛みに耐える極意、それは?」
「『痛みなんかその内消えるから頑張ってねっ』ッてよ」
「それは極意なのか?」
「オレも思わず『んなアホな』って返しちまッたけどヨォ、確かに考えてみりャ、傷口ッていつかは塞がるし、考えずに痛みに耐えてりャいいか、ッて考えるようになっちまって、それ以来気にしない事にしてる」
どんな結論だ、と思わず呟いたヤエが、しかし堪える事が出来なかったようにクククと笑みを溢し、口元に煙草を咥える。
「……全く、アイツらしいし、お前らしい」
「アイツ? 神さま、その女のコト知ってンのか?」
「気にするな。すぐに会えるからな」
そう言ったヤエはイルメールから離れ、浜辺の隅で携帯灰皿を片手に煙草を吸い始めた。
首を傾げながらも、しかし考える事が苦手なイルメールは、カルファスが持ってくる水着を待つために、浜辺へ寝ころんだ。
**
リンナの目付きがおかしい。
クアンタが海へと入り込み、まずは全身で海を感じる為に前面から倒れ込んでバシャンと沈んでいるところから、彼女の眼は大きく開かれている。
瞬きも惜しいと言わんばかりにずっと開け続け、目が乾燥しているのではないかと思いつつ、アルハットはクアンタを観察するリンナへ近付いた。
「その……リンナ? そんなに目を大きく開いて、大丈夫?」
「ううんっ! 大丈夫、何でもないよっ!」
明らかに何でもあるとしか思えぬ大声で返したリンナの声色に、アルハットは狼狽えながら「そ、そう……」と納得したように頷き、今海中の砂に足を付け、顔を出したクアンタへ声をかける。
「クアンタ、初めての海は、どうかしら」
「ぷはっ……気持ちいい」
返事をする為に顔を上げ、僅かに上ずった声で答えてくれたクアンタは、そこで身体を起こしつつ、もっと沖合の方に行きたいと進んでいこうとする。
「……アレ。ヤエさん、皆はどこに?」
浜辺を見渡しても、ヤエしかいない状況に首を傾げていたアルハットだが、そこでヤエが「脱衣所」と指示すると、彼女もそちらの方を見据えた。
「アルちゃーんっ! こっちおいでーっ」
「……なんで脱衣所に?」
「クアンタが海に入りたいそうだ」
「……そう、船の用意は時間がかかるのね」
「呑み込みが早くて助かる」
遊んでいる場合でもないでしょうに、と呟きながらも、アルハットは浜辺の隅に荷台を移動させると、その足で脱衣所へと向かう。
「ハイ、アルちゃんの水着っ」
「……クアンタのもそうですが、露出多くないですか?」
「深水も出来るように設計してるから大丈夫っ!」
アルハットの水着はフリルの多く付けられた、胸元が見えるタイプのコルセット水着で、柄は灰色と白色の縞々。
あまり露出が好きではないアルハットは、しかし触れて材質を確認して「ああ、確かにゴルタナみたいな魔術外装処理が行われていますね……」と納得して渋々と言った様子で受け取り、脱衣所の中でさっさとジャージを脱ぎ、黒のビキニを着こむクアンタへ、視線を移す。
「……大きいわね」
「何がだ?」
「い、いいえ。別に」
「アルハットの水着も可愛いから安心してッ! ていうか早く着替えて見せてッ!!」
「何故リンナがそんなに興奮してるの……? そ、それより、あまり見ないで……は、恥ずかしいわ」
顔を真っ赤にして今まさに着替えているクアンタと、着替えようとしつつもジッとリンナに見られていると気付いた結果、恥ずかしがるアルハットを交互に見据えているリンナへ、今度はカルファスが水着を渡す。
「リンナちゃんのはコレ。ゴメンね、丁度いいサイズこれしか無くて、可愛いの用意できなかったや」
「あ、いえ。アタシも正直、可愛いのとか露出多いのとか、あんま好きじゃないからコレが良いです」
リンナに渡された水着は競泳タイプの、紺一色の水着である。肌に張り付く感覚は若干違和感があったようだが、ササッと着替えた彼女は、そこでカルファスへグルリと首を回す。顔を赤くして、何かへ期待するように。
「カルファス様は着替えないんですか!?」
「え、私? 私は王服にそのまま魔術外装処理してあるから、別に問題無いよ?」
だがその期待は裏切られたようで、彼女のテンションはジェットコースターのように急降下。
「そ……そんな……ァッ!!」
「リンナちゃん、前に私の子機が死んだ時より絶望的な顔してない?」
「こうなったら――イルメールにもゴルタナじゃなくて水着を用意するべきですッ!!」
「ぶっちゃけ見たい? イル姉さまの場合、水着を用意する方が難しいんだけど」
なにせ身長は女性の平均身長を優に超えて百八十センチ弱、肉の塊と言わんばかりに膨れ上がった筋肉に合う水着となると、それこそ紐を伸ばしたマイクロビキニ位しかなく、言ってしまうと現在も乳房を覆う布地はビキニにしか見えない。
そう言ったカルファスに、ハァアアァ……と深いため息をついたリンナは、頭を抑えながらヤレヤレと言わんばかりに首を横に、何度も何度も振った。
「……まさかこんな初歩で、皇族の方に意見する事になるとは思いませんでしたが、良いでしょう。ちょっと語らせて下さい」
「え、何、どうしたのリンナちゃん」
「良いですかカルファス様。どんな女体にも貴賤なんか無いんですよ。例えばクアンタみたいにおっぱいが大きくてキレイな丸みを帯びてるのに反して腰のクビレが細くて凄いみたいな超絶体系も素晴らしいですし、それより更におっぱいが大きくも重力に逆らうように天へ反るアメリア様みたいなおっぱいも美貌があって最高です。
でもね違うんですよ。それが女体の全てじゃないんですよ。アルハットみたいに普段は王服で隠れてるけど意外と大きなおっぱいと肌艶、それに加えて彼女の恥ずかしがるあの感じが堪らないんです。大きさにおいてアメリア様やクアンタに勝てなかったとしても問題はありませんし、もっと小さくても良い程です。更にアルハットの魅力を語るとなると外せないのが、恥じらい……ですかねぇ……ホントにこれが追加されるだけで最の高になるわけです。
カルファス様にも水着になって貰いたかったのは、この間カルファス様からぎゅーってされた時に感じたおっぱいの感覚からするとカルファス様もそれなりに大きいモノをお持ちですよね? だからこそ解放的な水着になってもらって確認したかったのと合わせてカルファス様の女体を普段見れない姿で感じたかったわけで、これが分からないなら『素人は黙っとれ――』ってカンジなわけですよ。
で、ここからが本題ですけどイルメールは確かに普段から水着みたいな格好してるし、そもそも女性が好む身体ではないかもしれないです。でも普段のイルメールが着てるのじゃなくてちょっと柄を変えたりとかするだけでも可愛さとか妖艶さとか変わると思いますし水着を着ない理由ないですよね。ていうか何であれば女性にある筋肉ってのも非常に良いと思うんですよイルメールの場合は多すぎる気もしますけどその雄々しく猛々しい筋肉に添えられた母性というか女性らしさというかアクセントとしてあるおっぱいというのは神の恵みにも等しいものですよホント。
何であればイルメールで一番好きな所は筋肉とおっぱいの二律背反みたいな部分なわけで」
「ス……ストップ、リンナちゃん、ストップストップッ!!」
「何ですかまだ十分の一も語ってないんですけど」
「ゴ、ゴメン私が悪かった! イル姉さまの水着も用意するからちょっとだけ待ってて!?」
「分かって下さればいいんですっ!」
カルファスの謝罪とイルメールの水着を用意するという結論に満足したのか、今まで見たことが無いような晴れやかな笑顔でニパッと笑ったリンナが、スキップしながら脱衣所を後にする。ちなみにアルハットとクアンタは既に水着へと着替え終え、脱衣所から出ていっている。
「り、リンナちゃんの目が怖かったよぉ……っ」
「……正直オレの筋肉が褒められてるのは嬉しかったけどヨォ、それ以上に狂気を感じて嬉しい気持ちがどッか飛んでッたぜ……魔術狂いしてるカルファスより狂うとは思わなかった……」
霊子端末を震えた手で操作しつつ、リンナと約束したイルメールの水着を用意するべく、どこかへと去っていくカルファスと別れ、イルメールも海へと行く。
「ッ、」
若干の痛みが、愚母によって切断されて、現在はギブスによって閉ざされている左腕の切断面より走り、僅かに表情をしかめる。そんな彼女へと近付くヤエが「痛いか?」と尋ねた。
「そりャ、傷口は痛むさ」
「そうだろうよ。……クアンタたちの仮説は正しい。お前の精神高揚の結果として細胞活性を引き起こし、愚母の固有能力である浸蝕を食い止めているという仮説はな。だが、それは浸蝕を遅めているだけで、浸蝕による痛みを止めてるわけじゃない」
「問題ねェ。痛みには慣れてる」
「もう何度死んでいてもおかしくない位の激痛が走ってる筈だろう?」
「死んでいてもおかしくない? それこそ可笑しな話じゃねェか。事実として、オレは死んでねェ。つまり、この痛みは耐えきれる痛みだ」
人は一定以上の痛覚を感じると、神経をシャットアウトさせたり、気を失ったり、酷い場合には痛覚によるショック死等も十分にあり得る。
イルメールに毎秒襲い掛かる痛みは――それこそ、身体をバラバラに切り刻まれる痛みと同程度の痛みであり、常人であれば、その痛みに耐えきる事が出来ず、精神を病むか、ショック死を果たすだろう。
だが、イルメールはそれに耐える。
そして耐えられるという事は、死ぬ痛みではないという証明であると考え、その考えが精神高揚を引き起こし、結果として彼女を助けている。
「子供の頃よォ、神さまと同じような雰囲気の女に会ッたンだ。リュート山脈で一人、武者修行してた時だ」
ふと、思い出した事を口にすると、ヤエは煙草のボックスを取り出そうとした所で手を止め、イルメールへ問う。
「そいつ、名前は?」
「知らねェ。聞いてねェ。聞く必要もねェと思ッた。アイツは、オレに筋トレの仕方と、痛みに耐える極意を教えてくれた後、『その内また会えるさ』ッて言って、どっか行っちまった」
「痛みに耐える極意、それは?」
「『痛みなんかその内消えるから頑張ってねっ』ッてよ」
「それは極意なのか?」
「オレも思わず『んなアホな』って返しちまッたけどヨォ、確かに考えてみりャ、傷口ッていつかは塞がるし、考えずに痛みに耐えてりャいいか、ッて考えるようになっちまって、それ以来気にしない事にしてる」
どんな結論だ、と思わず呟いたヤエが、しかし堪える事が出来なかったようにクククと笑みを溢し、口元に煙草を咥える。
「……全く、アイツらしいし、お前らしい」
「アイツ? 神さま、その女のコト知ってンのか?」
「気にするな。すぐに会えるからな」
そう言ったヤエはイルメールから離れ、浜辺の隅で携帯灰皿を片手に煙草を吸い始めた。
首を傾げながらも、しかし考える事が苦手なイルメールは、カルファスが持ってくる水着を待つために、浜辺へ寝ころんだ。
**
リンナの目付きがおかしい。
クアンタが海へと入り込み、まずは全身で海を感じる為に前面から倒れ込んでバシャンと沈んでいるところから、彼女の眼は大きく開かれている。
瞬きも惜しいと言わんばかりにずっと開け続け、目が乾燥しているのではないかと思いつつ、アルハットはクアンタを観察するリンナへ近付いた。
「その……リンナ? そんなに目を大きく開いて、大丈夫?」
「ううんっ! 大丈夫、何でもないよっ!」
明らかに何でもあるとしか思えぬ大声で返したリンナの声色に、アルハットは狼狽えながら「そ、そう……」と納得したように頷き、今海中の砂に足を付け、顔を出したクアンタへ声をかける。
「クアンタ、初めての海は、どうかしら」
「ぷはっ……気持ちいい」
返事をする為に顔を上げ、僅かに上ずった声で答えてくれたクアンタは、そこで身体を起こしつつ、もっと沖合の方に行きたいと進んでいこうとする。
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