私たちの試作機は最弱です

ミュート

文字の大きさ
4 / 191
第一章

城坂織姫-02

しおりを挟む
 城坂楠。

 AD総合学園一年Aクラスに所属する少女であり――オレとの関係性は二卵性双生児の双子、妹である……らしい。

 彼女はオレにそう自己紹介をした所で、ソファに脱ぎ捨てられていた衣服――AD学園の制服を身に包み、リビングにある椅子へと腰かけた。

 対面にはオレが座っている。彼女は、未だにグズグズと涙を流しながら、しかし綺麗な声で「ごめんね、みっともない所見せちゃって」と謝った。


  だがオレは、そんな彼女を訝しむ目で見る他無かった。

  オレは妹がいるなんて事を知らない。


 母はオレが一歳にも満たない頃に病気で亡くなり、父はその後にオレを連れてアメリカへ渡った後、テロに巻き込まれて死んで、日本に残っていた姉ちゃんはそこで教養を受け、オレは――父の死後、預けられていた米軍に身を置き、戦っていたのだ。

  日本と連絡を取る事も無く、妹がいる事など、知る余地も無い人生を送って来た。


「本当に、お前はオレの妹なのか?」

「お姉ちゃんから、聞いて無いの? 私と二人で暮らせって」

「聞いて無い。オレは一人で暮らすもんだと思っていた」

「まさかお姉ちゃん、また忘れてるんじゃ」


 彼女――楠が溜息をつくと同時に、先ほどオレが取り出した携帯端末が、ブルブルと震えた。通話ボタンを押して、耳に当てた所で。


『あ、姫ちゃん? 楠ちゃんにはもう会った?』

「姉ちゃん。どういう事?」

『ごめーん、伝え忘れた』

「何でそんな大切な事、しかもオレには妹がいるなんて事を伝え忘れるんだよ!!」


 思わず怒鳴り散らしてしまう。だが姉ちゃんは『ごめんねー』とあっけらかんと謝るだけだった。


『てっきり姫ちゃんも、妹がいる程度の事は覚えてると思ってたんだけど』

「覚えている訳ないだろ。仮に覚えているとしても、二人暮らしって事も聞かされてないし」

『それは普通に伝え忘れたの。ごめんごめん』

「もういい。話はこの子から聞いたから」


 乱暴に通話終了のボタンを押して、溜息をついた瞬間。楠も同じように溜息をついた。


「やっぱりお姉ちゃんってば、伝え忘れ?」

「そうみたいだな」

「ホント、ワザとやってるんじゃないかって思うくらい、あの人は大切な事程教えてくれないんだから。お兄ちゃんが来るって知ってれば、私も歓迎の準備したのに」

「あの人は昔からあんな感じなのか……?」


 いい加減な人だ。そんなんで良く理事長なんてものが出来るな……と、少しばかり呆れていた。


「それよりお兄ちゃんは、今まで米軍に居たんだよね?」

「ん、……ああ」


 輝かしい程の光を帯びた目で、楠が問いかけてきて、オレもそれに答える。


「米軍では、ADに乗ってたの?」

「一応扱いは空軍所属だったからな。【ポンプ付き】に乗ってた」

「あ、GIX-P1Aだね」

「あっちじゃFH-26Xだぞ」

「そっか。米型番と日本型番の二つあるもんね。なら編入試験は楽勝だったんじゃない?」

「意外と難しかったな」

「じゃあランクはどうだったの?」

「C。最低ランクだな」

「そうなんだ! じゃあAランクの私がお兄ちゃんに、ADの事をいろいろ教えてあげられるねっ!」


 おそらく、楠からしたら何てこと無い一言に、オレは少しだけ――ムカついた。


「楠は、ADに乗って、実弾を撃った事はあるか?」

「一応。講習で一回だけだけど」

「なら実弾で、敵を撃った事は」

「さ、流石に無いよ。まだ学生だし」

「じゃあ仲間を、戦場で失った事は無いんだな」


 オレの言葉に、楠は何かを悟ったように息を呑んだ後、押し黙った。


「ならお前に教わる事なんか、何もない。ADを教育用ロボットかなんかと、勘違いすんな。

 ――あれは兵器だ。人を、仲間を、殺す事が出来る、兵器なんだよ」


 ギロッと、楠を睨み付ける様にした、オレの表情に、彼女は唇を固く結んで、それ以上何もいう事は無かった。

  席を離れ、荷物を持って、予めオレの部屋だと教えられた部屋に入って、鍵をかける。

  乱雑に衣服を脱ぎ捨て、用意されたベッドに身を投げたオレは――そのまま眠りについた。

  
  **

  
  城坂織姫が眠る部屋のドアに背中を預けて、城坂楠は手に持ったインスタント味噌汁に口付けた。

 温かさを感じながら、フッと息をついたその時、織姫の声が、扉の向こうから聞こえた。


『ごめん――ごめんよ、マーク……ゴメン……っ』


 小さく、しかし、確かに嘆かれる彼の言葉。それは、寝言なのだろうか。それとも、寝る前の懺悔なのだろうか。楠は、何も知らない。

  兄が、今までどんな世界を生きてきたか。


  彼女は、兄では無いから、知らない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた

九戸政景
恋愛
高校三年生の柴代大和は、小学校一年生の頃からの付き合いである秋田泰希の姉である夕希に恋心を抱いていたが、夕希の結婚をきっかけに恋心を諦めていた。 そして小学生の頃の夢を見た日、泰希から大和は夕希の離婚を伝えられ、それと同時にある頼みをされる。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

処理中です...