私たちの試作機は最弱です

ミュート

文字の大きさ
6 / 191
第一章

城坂織姫-04

しおりを挟む
 姉ちゃんが用意した車に乗り込んで、AD学園へと向かう。

  AD学園は先ほどまでいた居住区画や商業施設などの存在する商業区画の他、大きく分けて三つの区画が存在する。


  まずは最低学年・中等部区画。

 ここでは基本的にADには搭乗せず、まずは国際AD操縦免許の取得が義務付けられている。免許はどんなに子供であっても一定の知識と技術さえあれば取得自体は可能であるから、高等部に進学するまでに取得しなければならない。エリアはAD学園内では一番面積が狭く、学園島の中で一番住宅地に近い場所に存在する。


  次に中等部区画を超えた先にある、格納庫区画。

 ここはその名の通り訓練用ADの格納庫が存在する。パイロット科の生徒は、ここで自身が貸し与えられている訓練用ADに搭乗し、訓練に向かう事となる。


  さらにそこを超えると――オレがこれから在籍する高等部の校舎が見えてきた。

 高等部の校舎周りには、無数のグラウンドや演習場などがある。AD兵器を実際に動かして学習する事を目的に設置されている為、面積はAD学園内で最も広い。


「では、峰岸先生。愚弟ですが、よろしくお願いします」

「かしこまりました、理事長」


 高等部の職員室へと連れていかれたオレは、髪の毛を全て刈り、一切を残さぬ坊主頭の男性に手を差し出されたので、握手をした。男性はオレが在籍する事となる一年Cクラスの担任、峰岸と名乗った。


「今まで米軍に居たんだってな」

「ええ、まあ」


 少しだけ話しにくいと言わんばかりの歯切れの悪さで答えると、峰岸も笑いながらオレの頭を撫でた。


「ヒイキはしないからな。覚悟しろよ」


 オレの頭を撫でる手の大きさがどこか懐かしくて、オレは少しだけ顔を赤くしながら、歩き出す峰岸の背を追いかけた。


「これからお前が在籍するクラスは――言っちゃあ悪いが、最低の成績を持つ生徒たちのクラスだ」


 AD学園は入学時――大抵は高等部に進級する際に、ランクテストと言うものが設けられる。テストの結果次第で、最高のAランクから最低のCランクまでランク付けが成され、クラスが分けられる。

 オレは筆記試験の成績も悪かったし、基本的なADの乗り方と言うものに慣れていなくて、先日受けたテストではCランクと判断された。


「だがオレは、技術はこれから学ぶ事が出来ると信じている。お前もいずれは名パイロットになれるさ!」

「まぁ、頑張ります」

「ああ! っと、ここだ」


 連れていかれたクラスの前で立ち止まり、峰岸が力強くスライドドアを開けた。


「おはよう皆!」


 今まで、雑談により喧騒の絶えていなかった教室内に峰岸の声が鳴り響くと、全員が全員、彼に視線を送った――後に、オレを見据えた。


「せんせー。その女の子誰~?」

「なんでスカート履いて無いの?」

「カワイー。お人形さんみたーい」

「静かにしろ! この子は転入生だ。今日から皆と一緒に勉強する事になる! さぁ、自己紹介しろ、城坂」

「はい」


 教卓の前に立たされて、足を開き、手は後ろにやってから、息をスッと吸い込んだ。


「城坂織姫です」


 名を述べた。だが、誰も何も、反応をしない。十五秒程経過した段階で、一番手前の席に座っていた女子が訝しむように


「そんだけー?」

 と尋ねてきた。


「それだけだけど」


 淡々と返すと、また別の女子が手を上げて、オレに質問した。


「織姫ちゃんは、何でスカート履いて無いの?」

「? 当たり前だろ。オレが、男だからだ」


 質問の意味が分かりかねる。オレは男子なのだから、制服のズボンを履いていて何がおかしいと言うのだろう。


「えぇ、男子だったの!?」

「見えなーい!」

「ぶっちゃけ有り得なーい!」

「可愛い顔してるし小っちゃいし、声も高いし、どっからどう見ても女の子でしょ」

「ていうか織姫って、女の子の名前っしょ?」

「いや。そこは強く言うが、男だ」


 米軍に所属している時も何度か勘違いされたが、オレは正真正銘の男である。

  確かに身長は百五十三センチで十五歳と言う年齢を鑑みても小さい方であるし、おまけに童顔で女声だとは理解しているので、言われ慣れてはいるのだが、あまり気持ちのいいものでは無い。


「じゃあ、織姫ちゃんのあだ名は何て言うの?」

「あだ名――ニックネームか」

「そうそうー」

「アメリカに居た頃は『プリンセス』って、たまに呼ばれてたけど」

「お姫様だ!」

「そう。だからそのニックネームで呼ばれる度に、言った奴の顔面をぶん殴ってた」

「怖いってば! じゃあ何て呼べばいい?」

「普通に、城坂や織姫と呼んでくれればいい」

「じゃあ皆『姫ちゃん』って呼ぼうか」

「止めてくれ」

「えー、つまんない。じゃあ、姫ちゃんが決めていいから、なんて呼べばいいー?」


 少しだけ思考する。このままでは『姫ちゃん』と言うあだ名が浸透してしまう。男である筈なのに、女子と思わしきニックネームは避けたい。


「……じゃあ『アーミーワン』で」


 かつてオレが所属していた隊でのコールサインだ。これならば呼ばれ慣れているし軍人っぽいので、女子と思われる事は無いだろう。


「やっぱ姫ちゃんって呼ぼうかー」

「そうだねー」

『異議なーし』


 なぜだ。なぜなんだ。これ以上ない完璧なニックネームじゃないか!


「はい、自己紹介は終了したな。じゃあ城坂は村上の隣に座れ。あそこの空いている席だ」

「あ、ちょっと待ってください先生」

「待てん。これからHRだからな」


 クククと笑いながら、オレへ「早く座れ」と指示する峰岸に恨みの視線を送りながら、俺は予め用意されていた勉強机の椅子に腰かけた。


「よう、姫」

「次そう呼んだらぶん殴るぞ」

「こえー。あ、オレは村上明久。宜しくな」


 隣に座る男子生徒――村上明久と名乗った少年は、黒髪の短髪とそこそこ整っている顔立ちをしながら、頬を手で支え、肘を机の上に置いてゆっくりとしている。


「オレ、クラス委員と生徒会の会計もやってるから、後でいろいろ教えてやるよ」

「助かる」

「所でさ、姫はどっから来たんだ?」

「一回」

「アメリカからってのは分かったけど、アメリカのAD学園で勉強してたのか?」

「いや。そもそも今まで学校に通ったことすらなかった。それにアメリカにはAD学園は無い」

「マジ? 各国にあると思ってた。じゃあ姫はちゃんとAD乗れんの?」

「二回。ADには乗れる。向こうで国際免許を取った」

「何、姫は軍隊かどっかにでも居たの?」

「三回。幼い頃から米軍に身を預けていて、後に在籍した」

「姫はさっきから何カウントしてんのさ」

「四回。お前が『姫』と呼んだ回数だ」

「もしかして、その回数分、後でオレを殴るつもり?」

「その通りだ」

「姫、姫、姫、姫、姫……」

「九回」

「姫ちゃん可愛い♪」


 瞬間、いつの間にかオレの腕は伸びていて、一瞬の内に村上の顔面を捉えていた。

  クラス内に、爆笑が蔓延う。ちなみに俺に対するお咎めは何も無かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

サイレント・サブマリン ―虚構の海―

来栖とむ
SF
彼女が追った真実は、国家が仕組んだ最大の嘘だった。 科学技術雑誌の記者・前田香里奈は、謎の科学者失踪事件を追っていた。 電磁推進システムの研究者・水嶋総。彼の技術は、完全無音で航行できる革命的な潜水艦を可能にする。 小与島の秘密施設、広島の地下工事、呉の巨大な格納庫—— 断片的な情報を繋ぎ合わせ、前田は確信する。 「日本政府は、秘密裏に新型潜水艦を開発している」 しかし、その真実を暴こうとする前田に、次々と圧力がかかる。 謎の男・安藤。突然現れた協力者・森川。 彼らは敵か、味方か—— そして8月の夜、前田は目撃する。 海に下ろされる巨大な「何か」を。 記者が追った真実は、国家が仕組んだ壮大な虚構だった。 疑念こそが武器となり、嘘が現実を変える—— これは、情報戦の時代に問う、現代SF政治サスペンス。 【全17話完結】

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

昔好きだったお姉さんが不倫されたので落としに行ったら後輩からも好かれていた

九戸政景
恋愛
高校三年生の柴代大和は、小学校一年生の頃からの付き合いである秋田泰希の姉である夕希に恋心を抱いていたが、夕希の結婚をきっかけに恋心を諦めていた。 そして小学生の頃の夢を見た日、泰希から大和は夕希の離婚を伝えられ、それと同時にある頼みをされる。

処理中です...