私たちの試作機は最弱です

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第二章

生徒会-06

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 ゾワリと、殺気がオレの背筋を横切ると同時に。

  眼前より建築物を蹴り付けながら、素早い動きで向かってくる一機の秋風が目についた。


 建築物を蹴り、高機動パックの背部スラスターを稼働させ、高速で駆け抜ける秋風は、手首に外付けされたレーザーサーベルの柄を握り、レーザーを展開した。

 本来は高熱の刃で敵の機体を焼き切る為に用意されたレーザーサーベルだが、今は模擬戦中である。赤外線技術を用いた眩い光を圧縮しただけのレーザーを模した物は、しかしオレ達を威圧するには十分だった。


  神崎の機体に突進を仕掛ける、一機の秋風。神崎機を横転させるだけでその場を離脱した機体は、空中で電磁誘導制御を行い、対空する。


『あ。アタシは島根のどか。よろしくね二人とも!』


 元気よく挨拶をした島根という少女の声を聞いて、オレは彼女に向けて飛び上がろうと、マニピュレーターと姿勢制御幹を強く握りしめた――が、その直前、再びオレに殺気が襲い掛かった。


  急ぎ、神崎機の腕を握って、その場から離脱を開始した事が幸いした。先ほどまでオレ達が居た場所に、滑腔砲の砲弾が横切った。あのままでは着弾し、開始早々リタイアとなっていただろう。


「じゃあ、会長は高火力パックか――!」


 砲弾の射出元に、カメラを向ける。そこには確かに、秋風がもう一機存在したが……その秋風には、見覚えがないのだ。


『あれは……!?』


 神崎の、驚く声が聞こえてくる。オレも、声に出さないだけで、驚きは同じである。

  眼前の秋風には、高機動パックの滑空用ウイングと脚部スラスター、高火力パックの滑腔砲、そして高速戦パックの脚部キャタピラ――

  秋風に搭載できる外部ユニット・プラスデータの装備を、全て取り付けられてあったのだ。

  さらに加えて、サイドアーマー部に一つずつある、二刀の短剣型ユニットも印象強い。

 だが、こんな物をどうやって? 重量の問題や出力の問題、OMSの問題に機密条約上の問題すらある。普通の神経をしていれば、全部乗せラーメンの感覚で出来る筈がない。


『試作試験型プラスデータユニット【フルフレーム】だ。AB社と高田重工から直々に僕へ稼働試験依頼があってね。授業で使わせて貰っている』


 久瀬先輩の声が聞こえる。AB社――アストレイド・ブレイン社と言うOMSを主に開発しているIT企業と、AD兵器を生み出した高田重工からの依頼――なるほど、機密条約上の問題は既にそちらが解決しており、技術問題も、まだ試験段階というわけだ。


『是非、稼働試験の一端を担ってくれたまえ』

『久瀬ーっ、そっちの高火力パックはアタシの獲物だかんねー!』

『好きにしろ』


 久瀬先輩の言葉に、島根機が行動を開始。同時に神崎は機体をすぐに制御した上で115㎜砲の砲身を、空中から駆ける島根機へと向け、引き金を引く。

  発砲。放たれた銃弾の機動を予め読んでいたのか、腕部と脚部を振る事によっての姿勢制御運動のみで避け切る事に成功した島根機が、踵落としを神崎機の肩に叩き込んだ。


『ぎ――っ』

『アタシ、かわいい子が大好きだから――味見させて、神崎ちゃん♪』

『拒否、しますっ!』


 115㎜砲を一度背部にマウントした神崎は、両腕で踵落としを施した島根機の脚部を握り、機体を振り回した。

 あまりの重量に、神崎機の機体関節部から水蒸気が一気に吹かされたが、すぐに機体の筋肉繊維を油圧制御から電圧制御に切り替え、一度マウントした115㎜砲を再度展開。


『そちらは任せました!』

「任せろっ」


 その動きを見て、神崎に問題はないと悟ったオレは、一先ずフルフレームとの戦闘を開始する。

 先輩のフルフレームが、背部に背負う滑腔砲の引き金に再び触れたと同時に、俺の秋風がトリプルD稼働で砂埃を撒き散らしながら、その場を舞う。

  フルフレームが発砲。空気が震える感覚と共に滑腔砲の模擬砲弾がこちら目がけて飛んでくるが、予め砲身から射線を割り出していた俺の機体は既に射線上に無く、フルフレームの右側部に回り込んでいた。

  脚部スラスターを二回、急速に吹かす事での回し蹴り。これをキャタピラ稼働で後方に逃げて避け切ったフルフレームが、腰部に搭載された二本の短剣ユニットを両手に掴む。武装を搭載していない今の機体で獲物に対抗するには、強襲の他無い。

  すぐさまフットペダルを踏み込み、距離を取る為に空を飛ぶ。回りにある建築物二個分程の高度に達した所で先輩のフルフレームを見ると、彼は一回トリプルD稼働をした後、緩やかな浮遊をしながら、こちらに向かってくる。だがその速度は、通常の秋風よりも遅い。


「速度はそんなに出ないみたいですね」

『まぁ、これだけの重量だ。浮遊できるだけマシと思うね』

「でもそれ、実用的にどう――」


 そんな世間話をしている最中だった。――彼は、背部の滑腔砲を構えたのだ。


「滞空中に!?」


 先輩が行った行動の大胆さに、驚愕を隠せない。

 何せ、高火力フレームの利点である火力と、高機動フレームの利点である滑空。

 この二つを合わせ、待つ答えは1+1=2――では無い。

 滞空中、バランス制御が出来ぬ状態であれほどの、115mmある砲弾を放ってみろ。


 ――腕部関節がイカれる。いわば、1+1=0になる可能性だって含んでいるのだ。


「ふざけてる……!」


 すぐさま射線上から退こうとするが、既にそれは発砲。

 回避運動自体に入っていたので、左腕部をかすめるだけで事済むが、模擬戦用のセンサーが反応し、左腕部が落ちた事を知らせるブザーが鳴り響く。

 ……実戦・実弾なら、左腕は消し飛んでるという事だ。

 物理的に左腕部はあるが、これからは落された事を前提に機体がシステムに犯される。

 つまり、左腕部が無くなったように機体自体が誤認するので、操縦に乱れが発生した。

 乱れを何とか慌てて調整し、立ち直ったその時。


  目の前には、両手に一本ずつ、短剣型ユニットを掴んだフルフレームが。

  腕部には……傷一つ、乱れ一つ存在しない。


「マジかよ――!」

『ああ。関節強化は万全らしい』
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