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第二章
生徒会-07
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短剣ユニットを振り込んでくるフルフレームの二振りを、脚部と背部のスラスターを強引に運用して避け切る事に成功。
オレは一度市街地に着地した上で、機体を後方へと下げる。だが先輩はオレと同じく、機体を一度着地をさせた上で脚部キャタピラを稼働。高速移動を見せつけた。
すぐに後方へと下がったオレの秋風へと追いついてきたフルフレームが、再び一振り、短剣ユニットを縦に振り込んでくる。
身を低くして斬撃を避け、右腕部でフルフレームの顔面を殴りつけたが、踏み込みが甘い拳は、多少フルフレームの動きを脅かしたのみ。
短剣ユニットの柄を、オレが駆る秋風の胸部コックピットに思い切り叩きつけた上、肥大化した脚部が横薙ぎされる。
吹き飛ぶ機体。それによって建築物のシャッターを拉げさせ、建物の中へと入り込んだ。
どうやら武器庫のようだ。AD兵器用の装備が点在する様子を見据えたオレの眼前に、再び現れるフルフレーム。久瀬先輩はそこで動きを止めて、機体の両腕を広げた。
『元米軍のエースパイロットも、その程度かい?』
「アンタ、オレの過去を」
『知っているよ。君のお姉さんから聞いた。
――アーミー隊。米軍が有するテロ組織の鎮圧を目的として設立された、陸海空軍の垣根を超えた特殊部隊の隊長を務めていた事。そこからこのAD学園へと、逃げてきた事も』
「……お喋りだな、姉ちゃんも」
『だが解せなくてね。そんな君がなぜ、模擬弾の一つも撃とうとしないのか』
「武装に処理能力奪われたくないんだよ」
『それは嘘だな。君ならば秋風の処理能力が如何に優秀か、知り得ているだろうに』
久瀬先輩は、フルフレームの手を武器庫に点在する武器へと向け『使いなさい』と、オレに命令した。
『この武器庫は、演習中の補給を目的として設置されたものだ。火器管制にも登録されているし、全て模擬弾が装填されているから、すぐに使える』
「嫌だね。アンタ位、ぶん殴って倒してやるさ」
『それが出来ると、本気で思っているのかい?』
グ、と。言葉を詰まらせた。
先輩のフルフレームは、機動性も火力も、通常の秋風と遜色無い。
むしろ高田重工の整備により、常に万全な状態を維持している状態だろう。武装を何も持たない今のオレに、勝つ方法など無い。
――このままでは、負ける。
そう実感したオレは、深く深呼吸をした上で、一つのアサルトライフルを手に取った。
米軍で主に【ポンプ付き】用とされていた、55㎜突撃機銃だ。これの使い方ならば、慣れている。
『そう。それでいい』
オレが行った行動に満足したように、再び短剣型ユニットを両腕で構えたフルフレーム。
彼の機体に向けて、アサルトライフルの銃口を向け、トリガーに指をかける。
――だが、撃てない。
早くなる鼓動。荒くなる息。
吐息がマイク越しに久瀬先輩へ届いたのか、彼は『織姫君?』と問いかけてくる。
震える腕の動きが、反映度が一度に設定されている秋風の機体すら震わせた。
震えは大きい。がたがたと震える手の動きに連動し、機体も小刻みに動くのだ。
『君は、もしかして』
「ああ……そうだよっ、撃てないんだ……っ」
撃とうとすれば、体が震える。
寒気が訪れる。
息が荒くなり、鼓動も急激に早くなる。
そして頭の中に過るのだ。
――オレが殺した、マーク・Jrの、亡骸が。
オレはアサルトライフルを手に持ったまま、フットペダルを強く踏み込み、背部スラスターを稼働させて、フルフレームへと突撃。
『残念だよ』
ライフルのグリップを、フルフレームの頭部へと叩きつけようとした所で、短剣ユニットの一振りが、コックピットへ思い切り、叩きつけられた。
衝撃により、システムが撃墜を認識。
オレの機体内に、撃墜を知らせるブザーが鳴り響いた。
**
まるで獣のようだ、と。神崎紗彩子は島根のどかの駆る秋風を観察し、比喩を口にした。
紗彩子は今、倒壊したビルとビルの間に自身の機体を隠し、数多ある建築物を蹴り付けながら上空を飛び回る、のどか機への対処法を考えていた。
彼女は、以前戦った城坂織姫と同等の実力を持ち得ながら、さらに武装を使った戦闘方法を知り得ている。そんな彼女に勝ち得る方法は、奇襲だけだ。
どうしてもスピードでは高機動パックの出力には勝てはしないし、ピョンピョン飛び跳ねながら噛み付いてくる獣に対して自ら身を乗り出すのは分が悪い。となれば、地形を利用する他無いのだ。
紗彩子機は、右腕で瓦礫の一つを掴み取ると、それを出来るだけ遠くへと投げ飛ばす。
AD兵器の手によって投げられた瓦礫は宙を舞い、地面に落下すると共に大きな音を奏でて、散っていく。
その音に、集音装置も秀でた秋風のセンサーが反応すると、のどか機もそちらへと身体を向けた。
――チャンス!
115㎜砲の砲身を構えながらビルの隙間から機体を出して、トリガーを引く。
放たれる弾丸が、ビルの屋上に足を付けていたのどか機の胴体へと命中しようか――と言う所で。
『あはっ、そっちかぁー』
のどか機は、機体を捻らせながら弾頭を避けようとしたが、それは叶わずに左腕の関節部に受けた。
だが、そのような事を気にする様子もなく、彼女は今姿が見えた紗彩子機に向けて、背部スラスターを稼働させて急接近を仕掛けてくる。
今の一撃で、左腕は既に動かなくなっている筈なのに――!
自身の不利を、一切不利と考えぬ、思考回路がどこかおかしい女。紗彩子はのどかを、心の底で罵った。
今の一発が外れた時点で、襲撃は不可能となった。
紗彩子は迷うことなく115㎜砲と脚部追加装甲をパージし、素体の秋風を稼働させる。
素体の秋風では、高機動パックの秋風を相手にする能力は無い。だが使えもしない高火力パックを装備した鈍重の機体よりマシだろう。
腕部スリットにマウントされている対AD兵器用のダガーナイフを抜き放ち、のどか機を迎撃する為に準備すると、のどか機は脚部を振り回しながらCIWSを乱射しつつ、紗彩子機の頭部を回し蹴りで蹴り付けた。
揺らめく機体、荒れるカメラ。だが紗彩子は、乱暴に操縦桿を押し込んで、ダガーナイフを眼前に向けて突き付けると、それがのどか機の右腕関節に食い込んだ。
「よしっ!」
――敵の両腕が死んだ!
それを勝機と読み、紗彩子機は胸部CIWSをのどか機に放ちながら、再度ダガーナイフを、今度はコックピットに向けて振り込もうとしたが――
その時、僚機の撃墜を知らせるブザーが、機体内に鳴り響いて。
紗彩子は一瞬「え」と、そちらに意識を持っていかれた。
『……神崎ちゃん、つまんない』
のどかの、心底幻滅したと言わんばかりの言葉と共に、のどか機は右脚部で紗彩子機を蹴り飛ばしながら、背部スラスターを強く吹かし、建築物に叩きつけられた紗彩子機の胸部コックピットに、思い切り飛び蹴りをかます。
蹴られた衝撃と、背後にある建築物に強く殴打される衝撃によって、紗彩子機のシステムが、撃墜認識を施す。
――この時。城坂織姫と、神崎紗彩子のチームは、敗北が決定した。
**
「勝者・生徒会チーム」
多目的ホールの管制室に腰かけながら、モニター観戦をしていた秋沢楠が小さくマイクに向けて吹き込むと、通信を聞く四機に、声が響いたようだった。
良司機は織姫機を、そしてのどか機は紗彩子機の手を取り、その場から撤収を開始する様子を見据えて、楠はマイクを取り外して電源を切り――一筋だけの涙を流した。
「ごめんなさい、お兄ちゃん……ごめんなさい」
彼女はただ、謝るしかない。
その声が、愛しい兄に聞こえる事は無くとも――
彼女は自身の罪と、何も知らぬ兄に対し、言葉を止める事は無かった。
オレは一度市街地に着地した上で、機体を後方へと下げる。だが先輩はオレと同じく、機体を一度着地をさせた上で脚部キャタピラを稼働。高速移動を見せつけた。
すぐに後方へと下がったオレの秋風へと追いついてきたフルフレームが、再び一振り、短剣ユニットを縦に振り込んでくる。
身を低くして斬撃を避け、右腕部でフルフレームの顔面を殴りつけたが、踏み込みが甘い拳は、多少フルフレームの動きを脅かしたのみ。
短剣ユニットの柄を、オレが駆る秋風の胸部コックピットに思い切り叩きつけた上、肥大化した脚部が横薙ぎされる。
吹き飛ぶ機体。それによって建築物のシャッターを拉げさせ、建物の中へと入り込んだ。
どうやら武器庫のようだ。AD兵器用の装備が点在する様子を見据えたオレの眼前に、再び現れるフルフレーム。久瀬先輩はそこで動きを止めて、機体の両腕を広げた。
『元米軍のエースパイロットも、その程度かい?』
「アンタ、オレの過去を」
『知っているよ。君のお姉さんから聞いた。
――アーミー隊。米軍が有するテロ組織の鎮圧を目的として設立された、陸海空軍の垣根を超えた特殊部隊の隊長を務めていた事。そこからこのAD学園へと、逃げてきた事も』
「……お喋りだな、姉ちゃんも」
『だが解せなくてね。そんな君がなぜ、模擬弾の一つも撃とうとしないのか』
「武装に処理能力奪われたくないんだよ」
『それは嘘だな。君ならば秋風の処理能力が如何に優秀か、知り得ているだろうに』
久瀬先輩は、フルフレームの手を武器庫に点在する武器へと向け『使いなさい』と、オレに命令した。
『この武器庫は、演習中の補給を目的として設置されたものだ。火器管制にも登録されているし、全て模擬弾が装填されているから、すぐに使える』
「嫌だね。アンタ位、ぶん殴って倒してやるさ」
『それが出来ると、本気で思っているのかい?』
グ、と。言葉を詰まらせた。
先輩のフルフレームは、機動性も火力も、通常の秋風と遜色無い。
むしろ高田重工の整備により、常に万全な状態を維持している状態だろう。武装を何も持たない今のオレに、勝つ方法など無い。
――このままでは、負ける。
そう実感したオレは、深く深呼吸をした上で、一つのアサルトライフルを手に取った。
米軍で主に【ポンプ付き】用とされていた、55㎜突撃機銃だ。これの使い方ならば、慣れている。
『そう。それでいい』
オレが行った行動に満足したように、再び短剣型ユニットを両腕で構えたフルフレーム。
彼の機体に向けて、アサルトライフルの銃口を向け、トリガーに指をかける。
――だが、撃てない。
早くなる鼓動。荒くなる息。
吐息がマイク越しに久瀬先輩へ届いたのか、彼は『織姫君?』と問いかけてくる。
震える腕の動きが、反映度が一度に設定されている秋風の機体すら震わせた。
震えは大きい。がたがたと震える手の動きに連動し、機体も小刻みに動くのだ。
『君は、もしかして』
「ああ……そうだよっ、撃てないんだ……っ」
撃とうとすれば、体が震える。
寒気が訪れる。
息が荒くなり、鼓動も急激に早くなる。
そして頭の中に過るのだ。
――オレが殺した、マーク・Jrの、亡骸が。
オレはアサルトライフルを手に持ったまま、フットペダルを強く踏み込み、背部スラスターを稼働させて、フルフレームへと突撃。
『残念だよ』
ライフルのグリップを、フルフレームの頭部へと叩きつけようとした所で、短剣ユニットの一振りが、コックピットへ思い切り、叩きつけられた。
衝撃により、システムが撃墜を認識。
オレの機体内に、撃墜を知らせるブザーが鳴り響いた。
**
まるで獣のようだ、と。神崎紗彩子は島根のどかの駆る秋風を観察し、比喩を口にした。
紗彩子は今、倒壊したビルとビルの間に自身の機体を隠し、数多ある建築物を蹴り付けながら上空を飛び回る、のどか機への対処法を考えていた。
彼女は、以前戦った城坂織姫と同等の実力を持ち得ながら、さらに武装を使った戦闘方法を知り得ている。そんな彼女に勝ち得る方法は、奇襲だけだ。
どうしてもスピードでは高機動パックの出力には勝てはしないし、ピョンピョン飛び跳ねながら噛み付いてくる獣に対して自ら身を乗り出すのは分が悪い。となれば、地形を利用する他無いのだ。
紗彩子機は、右腕で瓦礫の一つを掴み取ると、それを出来るだけ遠くへと投げ飛ばす。
AD兵器の手によって投げられた瓦礫は宙を舞い、地面に落下すると共に大きな音を奏でて、散っていく。
その音に、集音装置も秀でた秋風のセンサーが反応すると、のどか機もそちらへと身体を向けた。
――チャンス!
115㎜砲の砲身を構えながらビルの隙間から機体を出して、トリガーを引く。
放たれる弾丸が、ビルの屋上に足を付けていたのどか機の胴体へと命中しようか――と言う所で。
『あはっ、そっちかぁー』
のどか機は、機体を捻らせながら弾頭を避けようとしたが、それは叶わずに左腕の関節部に受けた。
だが、そのような事を気にする様子もなく、彼女は今姿が見えた紗彩子機に向けて、背部スラスターを稼働させて急接近を仕掛けてくる。
今の一撃で、左腕は既に動かなくなっている筈なのに――!
自身の不利を、一切不利と考えぬ、思考回路がどこかおかしい女。紗彩子はのどかを、心の底で罵った。
今の一発が外れた時点で、襲撃は不可能となった。
紗彩子は迷うことなく115㎜砲と脚部追加装甲をパージし、素体の秋風を稼働させる。
素体の秋風では、高機動パックの秋風を相手にする能力は無い。だが使えもしない高火力パックを装備した鈍重の機体よりマシだろう。
腕部スリットにマウントされている対AD兵器用のダガーナイフを抜き放ち、のどか機を迎撃する為に準備すると、のどか機は脚部を振り回しながらCIWSを乱射しつつ、紗彩子機の頭部を回し蹴りで蹴り付けた。
揺らめく機体、荒れるカメラ。だが紗彩子は、乱暴に操縦桿を押し込んで、ダガーナイフを眼前に向けて突き付けると、それがのどか機の右腕関節に食い込んだ。
「よしっ!」
――敵の両腕が死んだ!
それを勝機と読み、紗彩子機は胸部CIWSをのどか機に放ちながら、再度ダガーナイフを、今度はコックピットに向けて振り込もうとしたが――
その時、僚機の撃墜を知らせるブザーが、機体内に鳴り響いて。
紗彩子は一瞬「え」と、そちらに意識を持っていかれた。
『……神崎ちゃん、つまんない』
のどかの、心底幻滅したと言わんばかりの言葉と共に、のどか機は右脚部で紗彩子機を蹴り飛ばしながら、背部スラスターを強く吹かし、建築物に叩きつけられた紗彩子機の胸部コックピットに、思い切り飛び蹴りをかます。
蹴られた衝撃と、背後にある建築物に強く殴打される衝撃によって、紗彩子機のシステムが、撃墜認識を施す。
――この時。城坂織姫と、神崎紗彩子のチームは、敗北が決定した。
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「勝者・生徒会チーム」
多目的ホールの管制室に腰かけながら、モニター観戦をしていた秋沢楠が小さくマイクに向けて吹き込むと、通信を聞く四機に、声が響いたようだった。
良司機は織姫機を、そしてのどか機は紗彩子機の手を取り、その場から撤収を開始する様子を見据えて、楠はマイクを取り外して電源を切り――一筋だけの涙を流した。
「ごめんなさい、お兄ちゃん……ごめんなさい」
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