私たちの試作機は最弱です

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第六章

記者会見にて-01

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「――えー。一年Aクラス、島根のどかの勝利、です」


 城坂織姫と天城幸恵の両名が退き、島根のどかと高橋佳代、両名の駆る秋風が戦闘を始めた瞬間、勝負がついた。ついてしまった。

 対戦開始のブザーが鳴り響いた時点でのどか機が『いやっふぅうううううっ!』と奇声を上げながら跳び蹴りを佳代機の腹部にぶち込み、パイロットは何が起こったのか分からぬままに気絶してしまったのだ。

 高橋佳代さんには一度も会った事は無かったが、やる気を無くさなければいいのですけれど――と、放送室で声を吹き込んでいた少女、秋沢楠は溜息をついた。

 秋沢楠は、AD総合学園高等部・パイロット科一年Aクラスに所属する少女である。橙色のロングヘアを後頭部でひとまとめにし、引き締めた表情が印象強い。

 今回の交流戦には参加していないが、パイロット能力は高く、また眉目秀麗才色兼備で生徒からの人望も厚く、AD学園高等部の生徒会長に就任している。


「会長、そろそろお時間です」

「ええ。では変わって頂けますか? 久瀬先輩」

「あい、かしこまりました。――広報担当が居ないと、会長職は大変ですね」

「これが私の仕事ですから」

「後、僕の前でぶりっ子は結構ですよ。何せ――同じ目的を持つ子供同士ではありませんか」

「……そうですね。けど今の口調は【城坂楠】としても正常ですよ。久瀬先輩は、言葉通り先輩ですから」


 久瀬先輩と呼ばれた男は、蒼色の髪の毛と端麗な顔立ち、そしてそれを際立てる銀色の眼鏡をした美少年である。彼は笑みを崩さずに「やれやれ」と言葉を紡ぎ、彼女の代わりに放送室の椅子に腰かけた。

 そんな彼に一礼しつつ、楠が放送室を出て向かった場所は、AD学園の理事長室に隣接する、応接間である。応接間にはボイスレコーダーとカメラ、そしてタブレット端末を持った大人たちがひしめき、楠の入室を待っていた。


「失礼いたします」


 ノックの後に入室。彼女の入室を確かめた幾人かは、カメラのシャッターを切る。

 眩いフラッシュの光を浴びて少しだけ苛立ちを感じながら、楠は応接間のソファに腰かけた。


「皆さん、楽になさってください。私が、AD総合学園高等部生徒会長を務めております、秋沢楠です。――それで、本日はどのような取材でお越し頂いたのでしょうか?」

「予め話は通っていると思うんだけどなぁ」


 大人の一人――くたびれたスーツを着込んだ男が苦笑と共に声を挙げた。名乗られてはいないが知っている。東洋夕刊の三好将基だ。


「ええ。聞き及んでおります。しかし私や、報告をしてくれた久瀬良司は、皆さまと比べれば若造――若輩者で御座いますので、手違いやミスも有り得てしまいます。なので皆様にご迷惑をおかけしない為にも、内容のすり合わせをと思っております」


 楠の言葉に渋々と言った様子で同意した大人たち。――彼らは日本メディアの、そして幾人かは海外メディアの記者である。


「では、僕から説明しますね」


 手を挙げて、先頭に立っていた小柄の男が声を挙げた。日刊ドロップの瀬川卓也だ。


「七月十日、二十一時頃に発生した、所属不明のAD部隊が、ここ――AD学園島を襲撃した事件に関して、まずは顛末のご説明をと思います」

「そちらの件に関しては、文科省及び防衛省の方からご説明が、各メディアに対して成されていると思われますが」

「秋沢さんが仰った様に、内容のすり合わせですよ。秋沢さんは若輩者故に伝達ミスが起こり得ると仰りましたが、大人でも十分に有り得ます。ですので、学園側の責任者からもお話をお伺い出来ればと」

「責任者と言う事であれば私では無く、学園理事長である城坂聖奈からご説明させて頂く事になりますが」

「城坂聖奈さんは当日――というより、その襲撃があった時間帯に、同じく襲撃があったとされるTAKADA・UIGへと視察を行っていたと聞いております。であるならば、陣頭指揮を執っていた秋沢楠さんにお伺いする事が、一番のすり合わせになるのかと」


 すり合わせね、と。楠が小さく、誰にも聞こえる事の無い呟きを漏らしつつ、頷く。


「かしこまりました。では私が知り得ている内容をお話します」

「お願い致します」


 楠と瀬川の会話が終わると同時に、ボイスレコーダーを起動した記者が何人かいた。

 それらが楠に向けられるまで僅かに空白の時間はあったが、確認すると同時に、語っていく。


「七月十日、二十一時過ぎ。警報が鳴る前に、学園島から目視で、自衛隊のAD学園島駐屯基地より火の手が上がっている事が確認できました。

 丁度私は帰宅しておりましたので、実際には警報を聞いてから確認を致しましたが、ここは良いでしょう。

 その後、五機編成の所属不明AD兵器・ロシア製の【ディエチ】が三編隊で、順次AD学園島を襲撃。

 内一機は編隊を離れ、丁度中等部校舎から高等部格納庫まで移動をしていた、当方生徒会所属の生徒・村上明久の機体――GIX-P4【秋風】を奪いました」

「奪われた秋風は鹵獲されたと?」

「機密条項に触れかねますので具体的な方法については黙秘させて頂きますが、そちらの機体は防衛に出た機体で撃墜致しました。

 そちらとも繋がりますが、我が生徒会と、一部生徒――当方で【武兵隊】と呼ばれる理事長直属の治安維持部隊は、有事の際には実弾の発砲許可が、文科省及び防衛省から認可されておりますので、一部機体を除き出撃。防衛作戦を開始致しました。

 作戦開始後の三十分から一時間もしない内に、ディエチ部隊は撤退。その時には駐屯基地の方々も、また横須賀基地からのスクランブルも可能でしたので、追跡はそちらへお願いを致しました。

 ――以上、当方が語れる内容となりますが、文科省及び防衛省からのご報告と、差異はありますでしょうか?」


 記者たちは、皆揃って口を閉じる。

 当然だ、この報告はそれこそ上記の省とすり合わせた内容であるからして、ここに食い違いがある筈も無い。
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