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第七章
久世良司 VS 神崎紗彩子 にて-01
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『こ、これより、交流戦二回戦第一試合、三年Aクラス所属・久瀬良司と、二年Aクラス所属・神崎紗彩子……隊長……の、勝負を開始しますっ』
二年Aクラスに所属する坂本千鶴による声がスピーカーに響き渡る。
生徒会会長補佐を務める久瀬良司は、慣れぬ声を機体内で聞きつつ、通信機の電源をオンにして、生徒会副会長である明宮梢に連絡を取った。
「明宮、今日のアナウンス当番は君だった筈だが」
『現在トラブルによって、当番を武兵隊の面々にお願いしております』
「トラブル? 何があった」
『会長補佐に知る権利はありません』
「いや会長補佐だからこそ知る権利があると思うのだが」
『会長補佐に、知る権利は、ありません』
ブツッと切られる通信。良司は少々寂しさを覚えながらも「あい分かった……」と小さく声に出し、目の前の機体にメインカメラを向ける。
「やぁ、神崎。君と直接対決は、あの模擬戦以来かな」
『あの模擬戦では島根のどかさんとの一騎打ちで終わってしまいましたからね。久瀬先輩との対決は、今回が初めてと言っていいでしょう』
相対する敵は、AD総合学園の治安維持部隊【部兵隊】の隊長を務める、神崎紗彩子である。
搭乗する秋風は115㎜滑腔砲を装備し、追加装甲によるウェイトを有する【高火力パック】で、彼女が普段より使用する後方支援用のプラスデータだ。
「聞きたい事があるのだが、君は現在生徒会が対処しているトラブルに関して、何か知り得ているかな」
『否定します。先ほど当方の副隊長がアナウンスをしておりましたので、何かあったのか隊員に問い合わせましたが「存じ上げません」というお役所仕事をされました』
「そちらもか。こっちは頑なに『知る権利は無い』との事だった。お互い苦労しているな」
『……そちらはお役所仕事では無く拒絶ではありませんか?』
「言わないでくれ、切なくなってくる」
紗彩子は現AD学園生徒の中でも、高火力パックを装備した際の戦闘能力は折り紙付きである。
基礎を全て知り得た上で、応用に応用を重ねた戦闘方式を取り入れ、通常脚部ウェイトと鉤爪を用いた鈍重な高火力パックの秋風にあるデメリットを全て自前の操縦能力で無くしている。その実力に関しては、良司も認めている。
しかし――負けるつもりは、一切無い。
『し、試合開始っ!』
交流戦の開始が叫ばれる。
二機は互いに背部スラスターから暴風を吹かし、機体を僅かに浮かせた上で、背部の115㎜滑腔砲を構え、引き金を引く。
初弾の発砲は、紗彩子機の秋風が僅かに早かった。模擬弾の発砲と共に機体全身を襲う衝撃。しかし紗彩子は冷静かつ高速で操縦桿と姿勢制御悍を操り、衝撃を殺した。
「流石だ!」
通常、機体を固定していない状態での滑腔砲の使用は、機体自体に大きな衝撃が襲い掛かる。
これによる機体の破損・故障を避ける手立てとしては、衝撃を吸収できる関節強化を行うか、通常装備されている鍵爪等を利用して機体を固定し衝撃を地面に逃がす方法などが挙げられる。
フルフレームが採用している衝撃による影響緩和は前者だ。
フルフレームはAD兵器開発を携わる高田重工と内部OMS(オペレーティング・マニピュレート・システム)を開発しているアストレイド・ブレイン社によって共同開発された試作機である為、機体の関節部強化などは全て高田重工により成されている。
しかし、神崎紗彩子の取った方法は両者どちらでも無く、ただ「自分の操縦技術のみを用いた衝撃緩和方法」でしかない。彼女のパイロット能力が如何に優れているかを物語っている。
双方の機体に襲い掛かる砲弾。しかし避ける事も無く脇を逸れた二つの銃弾は、観客席に命中する事の無い様に設置された特殊ネットによって受け止められ、観客を沸かせた。
両者は、僅かに後方に跳ぶ。着地と同時にフルフレームは、サイドアーマーに備えていた二振りの短剣型ユニット【四川】を両手に掴むと、脚部に搭載されている高速戦パックのキャタピラを展開、紗彩子機に近付いた。
しかし、同じタイミングで着地をしていた紗彩子機の動きは早かった。フルフレームの行動を読んでいたように、滑腔砲の砲身を地面に押し付けると、装弾を完了させ、放つ。
再び放たれる砲弾。地面を抉りながら砂嵐を撒き散らし、フルフレームの視界を遮ったのだ。
猪口才な、と舌打ちながら、僅かに左右へ機体を揺らした後、動きを止めたフルフレーム。機体をむやみに動かし、砂嵐から抜けると、滑腔砲の餌食になる可能性を鑑みた結果だ。
だが、またも行動は読まれていた。
フルフレームの装甲に襲い掛かるは、小口径の銃弾である。機体の胸部に搭載された自動迎撃装置・CIWSからの銃撃である。
「しま――!」
大した威力では無い。せいぜい機体の動きを止める、衝撃を与える程度でしかないものの、しかし紗彩子の狙いは別にある。
轟音と共に、機体右腕へ着弾する砲弾。システムが警報を鳴らし、右腕が落とされた事を良司に知らせていた。
紗彩子が取った行動は、砂嵐を撒き散らし、良司の動きを止める事だけでは無い。その後に放ったCIWSの着弾地点から相手の居場所にアタリを付け、その場所に合わせて砲身を向け、放ったのだ。
着弾地点が機体腹部等であれば、今の一撃で勝負はついていた。これは良司が如何に幸運であったかを現していたが、しかしそれを喜んでも居られない。
二年Aクラスに所属する坂本千鶴による声がスピーカーに響き渡る。
生徒会会長補佐を務める久瀬良司は、慣れぬ声を機体内で聞きつつ、通信機の電源をオンにして、生徒会副会長である明宮梢に連絡を取った。
「明宮、今日のアナウンス当番は君だった筈だが」
『現在トラブルによって、当番を武兵隊の面々にお願いしております』
「トラブル? 何があった」
『会長補佐に知る権利はありません』
「いや会長補佐だからこそ知る権利があると思うのだが」
『会長補佐に、知る権利は、ありません』
ブツッと切られる通信。良司は少々寂しさを覚えながらも「あい分かった……」と小さく声に出し、目の前の機体にメインカメラを向ける。
「やぁ、神崎。君と直接対決は、あの模擬戦以来かな」
『あの模擬戦では島根のどかさんとの一騎打ちで終わってしまいましたからね。久瀬先輩との対決は、今回が初めてと言っていいでしょう』
相対する敵は、AD総合学園の治安維持部隊【部兵隊】の隊長を務める、神崎紗彩子である。
搭乗する秋風は115㎜滑腔砲を装備し、追加装甲によるウェイトを有する【高火力パック】で、彼女が普段より使用する後方支援用のプラスデータだ。
「聞きたい事があるのだが、君は現在生徒会が対処しているトラブルに関して、何か知り得ているかな」
『否定します。先ほど当方の副隊長がアナウンスをしておりましたので、何かあったのか隊員に問い合わせましたが「存じ上げません」というお役所仕事をされました』
「そちらもか。こっちは頑なに『知る権利は無い』との事だった。お互い苦労しているな」
『……そちらはお役所仕事では無く拒絶ではありませんか?』
「言わないでくれ、切なくなってくる」
紗彩子は現AD学園生徒の中でも、高火力パックを装備した際の戦闘能力は折り紙付きである。
基礎を全て知り得た上で、応用に応用を重ねた戦闘方式を取り入れ、通常脚部ウェイトと鉤爪を用いた鈍重な高火力パックの秋風にあるデメリットを全て自前の操縦能力で無くしている。その実力に関しては、良司も認めている。
しかし――負けるつもりは、一切無い。
『し、試合開始っ!』
交流戦の開始が叫ばれる。
二機は互いに背部スラスターから暴風を吹かし、機体を僅かに浮かせた上で、背部の115㎜滑腔砲を構え、引き金を引く。
初弾の発砲は、紗彩子機の秋風が僅かに早かった。模擬弾の発砲と共に機体全身を襲う衝撃。しかし紗彩子は冷静かつ高速で操縦桿と姿勢制御悍を操り、衝撃を殺した。
「流石だ!」
通常、機体を固定していない状態での滑腔砲の使用は、機体自体に大きな衝撃が襲い掛かる。
これによる機体の破損・故障を避ける手立てとしては、衝撃を吸収できる関節強化を行うか、通常装備されている鍵爪等を利用して機体を固定し衝撃を地面に逃がす方法などが挙げられる。
フルフレームが採用している衝撃による影響緩和は前者だ。
フルフレームはAD兵器開発を携わる高田重工と内部OMS(オペレーティング・マニピュレート・システム)を開発しているアストレイド・ブレイン社によって共同開発された試作機である為、機体の関節部強化などは全て高田重工により成されている。
しかし、神崎紗彩子の取った方法は両者どちらでも無く、ただ「自分の操縦技術のみを用いた衝撃緩和方法」でしかない。彼女のパイロット能力が如何に優れているかを物語っている。
双方の機体に襲い掛かる砲弾。しかし避ける事も無く脇を逸れた二つの銃弾は、観客席に命中する事の無い様に設置された特殊ネットによって受け止められ、観客を沸かせた。
両者は、僅かに後方に跳ぶ。着地と同時にフルフレームは、サイドアーマーに備えていた二振りの短剣型ユニット【四川】を両手に掴むと、脚部に搭載されている高速戦パックのキャタピラを展開、紗彩子機に近付いた。
しかし、同じタイミングで着地をしていた紗彩子機の動きは早かった。フルフレームの行動を読んでいたように、滑腔砲の砲身を地面に押し付けると、装弾を完了させ、放つ。
再び放たれる砲弾。地面を抉りながら砂嵐を撒き散らし、フルフレームの視界を遮ったのだ。
猪口才な、と舌打ちながら、僅かに左右へ機体を揺らした後、動きを止めたフルフレーム。機体をむやみに動かし、砂嵐から抜けると、滑腔砲の餌食になる可能性を鑑みた結果だ。
だが、またも行動は読まれていた。
フルフレームの装甲に襲い掛かるは、小口径の銃弾である。機体の胸部に搭載された自動迎撃装置・CIWSからの銃撃である。
「しま――!」
大した威力では無い。せいぜい機体の動きを止める、衝撃を与える程度でしかないものの、しかし紗彩子の狙いは別にある。
轟音と共に、機体右腕へ着弾する砲弾。システムが警報を鳴らし、右腕が落とされた事を良司に知らせていた。
紗彩子が取った行動は、砂嵐を撒き散らし、良司の動きを止める事だけでは無い。その後に放ったCIWSの着弾地点から相手の居場所にアタリを付け、その場所に合わせて砲身を向け、放ったのだ。
着弾地点が機体腹部等であれば、今の一撃で勝負はついていた。これは良司が如何に幸運であったかを現していたが、しかしそれを喜んでも居られない。
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