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第九章
兵器足りえるもの-05
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五機のポンプ付きが確認。リントヴルムは手首を動かし、自分の挙動一つで反映される機体の精度を確認しつつも、下唇を舌で舐め「ひゃはっ」と小さく歓喜の声を挙げた。
『……楽しそうね』
ヴィスナーがそんな彼の声を聴いて、ため息交じりに尋ねる。
「楽しいさ――なんたってこんな上質のオモチャを与えられたんだ、ガキだったら嬉しいに決まってらぁなっ!」
背部スラスターを吹かしながら、ポンプ付き二機が接敵。
一瞬の内に、一機の頭部を掴んだまま、パイルバンカーを起動させる。
空中から地上へと、強く機体を叩き込んだアルトアリス五号機。リントヴルムはパイルバンカーを連続投射、頭部にいくつも穴が開くポンプ付きの顔を見届けた後、コックピットに向け短く三発の銃弾を射出。
一機撃墜。
二機目のポンプ付きが、同じくアサルトライフルを構えながら突撃してくるので、それに威嚇射撃と共にダガーナイフを振り込んだ。
すれ違い様に斬り込まれた一機が、腕部を無くす。
何が起こったかを理解する前には、コックピットに腕を突き付け、撃ち込まれるパイルバンカー。
「あい、二機目!」
リントヴルムの言葉通り、既に二機目も撃墜している。
三機目、四機目、共に距離を取ってリントヴルム機への射撃。
それらは決して模擬弾等ではない。彼は背後に下がりつつ、一つの建造物を盾にした上で――上昇し、アサルトライフルを構えて二機に向けて放ちながら、背部スラスターを全開、両機に接近し、二機の獲物を持つ手首を掴んだ。
「あ――らよっとぉっ!」
手首を握りながら、ポンプ付き二機を地面に向けて降下させる。
腕を振り下げるようにした五号機の力を振り解けず、背中から落ちた二機は、次第に操縦回路を損傷させたか、動かなくなる。
そうなると、リントヴルムに興味はない。
残る一機がヴィスナーの駆る二号機へと交戦に入るが――情けも容赦もなく、彼女は右掌に搭載された速射砲を頭部へ、左掌に搭載された速射砲をコックピットへ撃ち込む事で、全ての撃墜が確認された。
『状況終了――?』
「あのガントレットが、この程度の防備しかしてねぇ筈はねぇが……まぁ、今の状況も含めて、あのシューイチの仕組んだ事って可能性も考えられるわぁな」
リントヴルムはミィリスに在籍して以来、織姫や彼を指揮するガントレットの部隊と、数えきれないほどの戦場を共にしている。敵味方こそ違うが、それぞれの実力を過信無く見て来たつもりである。
今回の作戦は、北太平洋上日米共同管轄島【プロスパー】の短時間による制圧だ。
事前扇動による欧州系テロ組織【ブリテン】の部隊をプロスパーの防衛海域まで送り込み、その隙をついた奇襲攻撃、というのが城坂修一の提示した作戦だった。
当初は「あまりに簡潔過ぎる」とヴィスナーとオースィニが声を挙げたが、しかし対案が無かった為と、リントヴルムとしては現在ガントレットの率いる部隊がどの程度の兵力を持ち得ているかを自分自身の手で確かめたかった事もあり、それを良しとした。
しかし、実際に城坂修一の言う通りとなった。
制圧はほとんど完了している。半径九キロに及ぶプロスパー全域にAD反応は無し、正確には数機程目視確認できる機体はあるものの、人員不足かはたまた別の理由か、搭乗している様子は見受けられなかった。
「何にせよ、制圧するぜ。地上部隊の準備は?」
『後十分で到着だそうよ』
「五分で来させろ」
『無茶を』
言葉の途中で。
プロスパーを離れていた艦艇【スタウト】より、何かが放たれたかのような光りが見えて、リントヴルムは身構えた。
ガントレットの事だ、自分だと分かった瞬間にハープーンを打ち込んで来てもおかしくねぇ、という考えの元だったが――しかし、それは違った。
それはADだった。
計三機のAD。それは先ほどまで交戦していたポンプ付きではなく。
『アキカゼ――!』
何故ここに、と言わんばかりに驚いているヴィスナーだが、リントヴルムはその事に驚きはなかった。
元々プロスパーは日米共同管轄だ。日本自衛隊の機体があってもおかしくはない。
しかしリントヴルムは違う理由で驚いていた。
それは、急激に接近してくる一機の秋風は、リントヴルムから見ても頭のおかしい挙動としか思えなかったから。
それは、スタウトの甲板に設置されたAD用カタパルトデッキから出撃すると、滑空を開始。
しかし空を浮くのではなく、海面スレスレを滑空する。
一歩間違えれば、海面に機体を叩きつけ、お釈迦になってもおかしくない。
その上で、その機体は海面を――蹴りつけた。
蹴ると同時にドライブDでの上昇を開始、海水をまき散らしながら上空からプロスパー港までたどり着くと、リントヴルム機へと接敵。
「何だぁ、オメェ!?」
『アンタ、もしかしてリントヴルム!?』
「女、名前呼んだか!? オレァ日本語はちょっとしか喋れないんだ、英語かロシア語で頼むわっ」
『あー、アタシ英語もロシア語もわかんないから――ッ』
高機動パック装備の秋風が、接敵と同時にレーザーサーベルを展開させる。リントヴルムは『やべ』とだけ呟きつつ、アサルトライフルの銃口をその機体へ向けた。
だが――彼女は銃口など見ていない。
僅かに銃口から機体を逸らせるだけで、秋風はレーザーサーベルを横薙ぎに振り込んだ。
寸で、背後へ跳んだ事によって避けた五番機だが、しかしコックピットハッチ表面はレーザーの高熱によって焼け、機体内に警告音を響かせる。
『……楽しそうね』
ヴィスナーがそんな彼の声を聴いて、ため息交じりに尋ねる。
「楽しいさ――なんたってこんな上質のオモチャを与えられたんだ、ガキだったら嬉しいに決まってらぁなっ!」
背部スラスターを吹かしながら、ポンプ付き二機が接敵。
一瞬の内に、一機の頭部を掴んだまま、パイルバンカーを起動させる。
空中から地上へと、強く機体を叩き込んだアルトアリス五号機。リントヴルムはパイルバンカーを連続投射、頭部にいくつも穴が開くポンプ付きの顔を見届けた後、コックピットに向け短く三発の銃弾を射出。
一機撃墜。
二機目のポンプ付きが、同じくアサルトライフルを構えながら突撃してくるので、それに威嚇射撃と共にダガーナイフを振り込んだ。
すれ違い様に斬り込まれた一機が、腕部を無くす。
何が起こったかを理解する前には、コックピットに腕を突き付け、撃ち込まれるパイルバンカー。
「あい、二機目!」
リントヴルムの言葉通り、既に二機目も撃墜している。
三機目、四機目、共に距離を取ってリントヴルム機への射撃。
それらは決して模擬弾等ではない。彼は背後に下がりつつ、一つの建造物を盾にした上で――上昇し、アサルトライフルを構えて二機に向けて放ちながら、背部スラスターを全開、両機に接近し、二機の獲物を持つ手首を掴んだ。
「あ――らよっとぉっ!」
手首を握りながら、ポンプ付き二機を地面に向けて降下させる。
腕を振り下げるようにした五号機の力を振り解けず、背中から落ちた二機は、次第に操縦回路を損傷させたか、動かなくなる。
そうなると、リントヴルムに興味はない。
残る一機がヴィスナーの駆る二号機へと交戦に入るが――情けも容赦もなく、彼女は右掌に搭載された速射砲を頭部へ、左掌に搭載された速射砲をコックピットへ撃ち込む事で、全ての撃墜が確認された。
『状況終了――?』
「あのガントレットが、この程度の防備しかしてねぇ筈はねぇが……まぁ、今の状況も含めて、あのシューイチの仕組んだ事って可能性も考えられるわぁな」
リントヴルムはミィリスに在籍して以来、織姫や彼を指揮するガントレットの部隊と、数えきれないほどの戦場を共にしている。敵味方こそ違うが、それぞれの実力を過信無く見て来たつもりである。
今回の作戦は、北太平洋上日米共同管轄島【プロスパー】の短時間による制圧だ。
事前扇動による欧州系テロ組織【ブリテン】の部隊をプロスパーの防衛海域まで送り込み、その隙をついた奇襲攻撃、というのが城坂修一の提示した作戦だった。
当初は「あまりに簡潔過ぎる」とヴィスナーとオースィニが声を挙げたが、しかし対案が無かった為と、リントヴルムとしては現在ガントレットの率いる部隊がどの程度の兵力を持ち得ているかを自分自身の手で確かめたかった事もあり、それを良しとした。
しかし、実際に城坂修一の言う通りとなった。
制圧はほとんど完了している。半径九キロに及ぶプロスパー全域にAD反応は無し、正確には数機程目視確認できる機体はあるものの、人員不足かはたまた別の理由か、搭乗している様子は見受けられなかった。
「何にせよ、制圧するぜ。地上部隊の準備は?」
『後十分で到着だそうよ』
「五分で来させろ」
『無茶を』
言葉の途中で。
プロスパーを離れていた艦艇【スタウト】より、何かが放たれたかのような光りが見えて、リントヴルムは身構えた。
ガントレットの事だ、自分だと分かった瞬間にハープーンを打ち込んで来てもおかしくねぇ、という考えの元だったが――しかし、それは違った。
それはADだった。
計三機のAD。それは先ほどまで交戦していたポンプ付きではなく。
『アキカゼ――!』
何故ここに、と言わんばかりに驚いているヴィスナーだが、リントヴルムはその事に驚きはなかった。
元々プロスパーは日米共同管轄だ。日本自衛隊の機体があってもおかしくはない。
しかしリントヴルムは違う理由で驚いていた。
それは、急激に接近してくる一機の秋風は、リントヴルムから見ても頭のおかしい挙動としか思えなかったから。
それは、スタウトの甲板に設置されたAD用カタパルトデッキから出撃すると、滑空を開始。
しかし空を浮くのではなく、海面スレスレを滑空する。
一歩間違えれば、海面に機体を叩きつけ、お釈迦になってもおかしくない。
その上で、その機体は海面を――蹴りつけた。
蹴ると同時にドライブDでの上昇を開始、海水をまき散らしながら上空からプロスパー港までたどり着くと、リントヴルム機へと接敵。
「何だぁ、オメェ!?」
『アンタ、もしかしてリントヴルム!?』
「女、名前呼んだか!? オレァ日本語はちょっとしか喋れないんだ、英語かロシア語で頼むわっ」
『あー、アタシ英語もロシア語もわかんないから――ッ』
高機動パック装備の秋風が、接敵と同時にレーザーサーベルを展開させる。リントヴルムは『やべ』とだけ呟きつつ、アサルトライフルの銃口をその機体へ向けた。
だが――彼女は銃口など見ていない。
僅かに銃口から機体を逸らせるだけで、秋風はレーザーサーベルを横薙ぎに振り込んだ。
寸で、背後へ跳んだ事によって避けた五番機だが、しかしコックピットハッチ表面はレーザーの高熱によって焼け、機体内に警告音を響かせる。
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