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第十章
過去の遺産-07
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「ボク、学園襲撃の時も、爆弾テロの時も、ここ襲撃の時にも思ったんだけどさ」
海を泳ぎ、少々疲れたと浜辺へ戻り、横たわるオレの下へ、哨が座り込んで話しかけて来た。
「何を」
「やっぱり、戦争って嫌いだって」
膝を折って、ギュッと腕に力を込めて、表情を俯かせる哨の顔が、何だか新鮮だった。
「お姉ちゃんから、聞いてるよね。ボクがどうしてAD学園に入ったか」
「ADが好きだから、整備士を目指したって聞いてる。そんでもって、梢さんは戦場に出ていかない様に、哨を傷つけてでも、守ろうとした」
「お母さんだって止めてくれた。……お母さんは、ちょっと行き過ぎだけどね。戦場とか兵器とか、そういう物を一緒くたにして、それで嫌ってるだけだから。
けれど、決して間違ってるわけじゃなかった。戦争っていう物が無ければ失われる命もなくて、大切な人が死んでしまうかも、なんて恐怖もないんだから」
初めて戦場という恐怖を目の当たりにした哨は、一体どんな思いを持っているのだろうか。
すぐにでも整備士なんか辞めて、戦争とは無関係な場所に行きたいと願うのか。
それとも……。
「それでも、ボクはADが大好き。秋風ちゃんも雷神ちゃんも、何だったらポンプ付きもみんなみんな大好き。
だからこそ、戦争なんてなくて、平和な世界で、ADってものが人の生活をよくするツールとなってくれればいいと思う。そんな可能性だって、ADにはあるんだよって、お母さんに伝えてあげたい。
ああ――だからボクは、雷神プロジェクトって夢物語を信じるつもりになったんだって、実感するんだ」
こんなボクは間違ってるのかな? と悩む哨に、オレは笑って首を振ってやる。
「間違いじゃないよ。確かに価値観は人それぞれで、リントヴルムみたいに平和を嫌う奴も確かにいて、オレみたいに戦場でなきゃ生きられない存在だって、いる。
でも、だからって平和が意味のないモノ、なんて事は絶対に無い。
哨の価値観は哨のモノで、その願いは尊ぶべき感情だ。
だから、その願いを何時までも捨てずに、抱き続ければいいんだよ」
オレの言葉に、哨がフッとほほ笑んだ。
その表情は――可愛くて、綺麗で、水着姿も相まって、思わずドキッとさせられる。
「織姫君」
そんなオレに気付いたか、少々低めの声で梢さんが不意に話しかけて来た。
え、何だろ、哨にそういう感情を持つな的な感じか?
「……私も哨と同意見です。だから、そういう世界を作りたいと思ったんです」
「え」
「哨を守りたいという感情だけで、雷神プロジェクトなんておとぎ話を信じる気になったわけではない、とご理解頂ければ」
プイッと表情を逸らした後、哨の手を引いて海へと駆け出していく姉妹。
何だかんだ、仲が良いというより一心同体にも思える。
「興味深い話をしていたね」
久世先輩が、水滴を垂らしながら海より上がって、オレの隣へ座る。何かオレの隣は人気席みたいだ。
「皆、雷神プロジェクトへなし崩し的に参加したように見えたが、意外としっかり考えた上で、参加していたのだな」
「そういう久世先輩は? 楽しそうだ、とは聞いたけど」
「その理由が八十パーセント位を占めているかな。
自慢ではないが、僕は現在自衛隊と高田重工、AB社のそれぞれから推薦を頂いていてね。正直、卒業後の進路に悩める贅沢な立場なんだ」
ホントにそれ自慢じゃないの?
「でも、どこもピンと来ていないんだ。
自衛隊なら、確かに市民の生活を守る為に活動できる。
高田重工ならば守る為に必要な兵器を開発する事が出来る。
AB社ならば人々の生活をよくするシステムを生み出す事が出来る。
しかし、それが本当に、僕のやりたい事なのか、と自問する」
「立派な事だと思う。どんな選択をしたって、最後には誰かを笑顔にする職業だよ」
「そうだね。けれど、どこかに僕しか出来ない事や、僕がやるべき事があるんじゃないかと考えてしまったら、二の足を踏んでしまうんだ」
選択肢が多ければ多い人程、悩むべきだと思う。
本来、人には多く可能性があるべきだ。
教育とはその可能性を広げるモノで、それを怠ったオレには狭い一本道しか無くて、その教育を利用し続けて来た久世先輩には、多くの広い道がある。
これは、本来あるべき、当たり前の事だ。
「……オレには、久世先輩の悩みが、贅沢に思えるよ」
「そうだね、僕は贅沢だ」
「オレは、生まれた時からコックピットパーツとしての運命があった。その運命に従うかどうかは別として、最初からADしかなかった身だ。
戦う事しか頭に無かったオレへ、雷神プロジェクトなんて使命がやってきて――初めて、誰かを殺す以外で戦える場所を得る事が出来た」
「けれど、君はそうして満足のいく道を見つける事が出来たのだろう?」
久世先輩が立ち上がり、遠くを見据える。
「僕はまだ、見つける事が出来ていない。
だからこそ、雷神プロジェクトという計画へ加担すれば、少しは違う道も、見つける事が出来るかもしれないと思った。これが残るニ十パーセントの理由かな」
眼鏡を取り、まとめてある荷物の一つに混ぜ、その上で久世先輩は、再び海へと行こうとする。
「所でさ」
「何だね」
「何でこんな暴露大会になってるんだろうな」
「海だからだろう」
「意味わかんないんだけど」
「海は人を裸にする。体だけだく、心をもね。海でナンパが絶えないのはそれが理由さ」
海を泳ぎ、少々疲れたと浜辺へ戻り、横たわるオレの下へ、哨が座り込んで話しかけて来た。
「何を」
「やっぱり、戦争って嫌いだって」
膝を折って、ギュッと腕に力を込めて、表情を俯かせる哨の顔が、何だか新鮮だった。
「お姉ちゃんから、聞いてるよね。ボクがどうしてAD学園に入ったか」
「ADが好きだから、整備士を目指したって聞いてる。そんでもって、梢さんは戦場に出ていかない様に、哨を傷つけてでも、守ろうとした」
「お母さんだって止めてくれた。……お母さんは、ちょっと行き過ぎだけどね。戦場とか兵器とか、そういう物を一緒くたにして、それで嫌ってるだけだから。
けれど、決して間違ってるわけじゃなかった。戦争っていう物が無ければ失われる命もなくて、大切な人が死んでしまうかも、なんて恐怖もないんだから」
初めて戦場という恐怖を目の当たりにした哨は、一体どんな思いを持っているのだろうか。
すぐにでも整備士なんか辞めて、戦争とは無関係な場所に行きたいと願うのか。
それとも……。
「それでも、ボクはADが大好き。秋風ちゃんも雷神ちゃんも、何だったらポンプ付きもみんなみんな大好き。
だからこそ、戦争なんてなくて、平和な世界で、ADってものが人の生活をよくするツールとなってくれればいいと思う。そんな可能性だって、ADにはあるんだよって、お母さんに伝えてあげたい。
ああ――だからボクは、雷神プロジェクトって夢物語を信じるつもりになったんだって、実感するんだ」
こんなボクは間違ってるのかな? と悩む哨に、オレは笑って首を振ってやる。
「間違いじゃないよ。確かに価値観は人それぞれで、リントヴルムみたいに平和を嫌う奴も確かにいて、オレみたいに戦場でなきゃ生きられない存在だって、いる。
でも、だからって平和が意味のないモノ、なんて事は絶対に無い。
哨の価値観は哨のモノで、その願いは尊ぶべき感情だ。
だから、その願いを何時までも捨てずに、抱き続ければいいんだよ」
オレの言葉に、哨がフッとほほ笑んだ。
その表情は――可愛くて、綺麗で、水着姿も相まって、思わずドキッとさせられる。
「織姫君」
そんなオレに気付いたか、少々低めの声で梢さんが不意に話しかけて来た。
え、何だろ、哨にそういう感情を持つな的な感じか?
「……私も哨と同意見です。だから、そういう世界を作りたいと思ったんです」
「え」
「哨を守りたいという感情だけで、雷神プロジェクトなんておとぎ話を信じる気になったわけではない、とご理解頂ければ」
プイッと表情を逸らした後、哨の手を引いて海へと駆け出していく姉妹。
何だかんだ、仲が良いというより一心同体にも思える。
「興味深い話をしていたね」
久世先輩が、水滴を垂らしながら海より上がって、オレの隣へ座る。何かオレの隣は人気席みたいだ。
「皆、雷神プロジェクトへなし崩し的に参加したように見えたが、意外としっかり考えた上で、参加していたのだな」
「そういう久世先輩は? 楽しそうだ、とは聞いたけど」
「その理由が八十パーセント位を占めているかな。
自慢ではないが、僕は現在自衛隊と高田重工、AB社のそれぞれから推薦を頂いていてね。正直、卒業後の進路に悩める贅沢な立場なんだ」
ホントにそれ自慢じゃないの?
「でも、どこもピンと来ていないんだ。
自衛隊なら、確かに市民の生活を守る為に活動できる。
高田重工ならば守る為に必要な兵器を開発する事が出来る。
AB社ならば人々の生活をよくするシステムを生み出す事が出来る。
しかし、それが本当に、僕のやりたい事なのか、と自問する」
「立派な事だと思う。どんな選択をしたって、最後には誰かを笑顔にする職業だよ」
「そうだね。けれど、どこかに僕しか出来ない事や、僕がやるべき事があるんじゃないかと考えてしまったら、二の足を踏んでしまうんだ」
選択肢が多ければ多い人程、悩むべきだと思う。
本来、人には多く可能性があるべきだ。
教育とはその可能性を広げるモノで、それを怠ったオレには狭い一本道しか無くて、その教育を利用し続けて来た久世先輩には、多くの広い道がある。
これは、本来あるべき、当たり前の事だ。
「……オレには、久世先輩の悩みが、贅沢に思えるよ」
「そうだね、僕は贅沢だ」
「オレは、生まれた時からコックピットパーツとしての運命があった。その運命に従うかどうかは別として、最初からADしかなかった身だ。
戦う事しか頭に無かったオレへ、雷神プロジェクトなんて使命がやってきて――初めて、誰かを殺す以外で戦える場所を得る事が出来た」
「けれど、君はそうして満足のいく道を見つける事が出来たのだろう?」
久世先輩が立ち上がり、遠くを見据える。
「僕はまだ、見つける事が出来ていない。
だからこそ、雷神プロジェクトという計画へ加担すれば、少しは違う道も、見つける事が出来るかもしれないと思った。これが残るニ十パーセントの理由かな」
眼鏡を取り、まとめてある荷物の一つに混ぜ、その上で久世先輩は、再び海へと行こうとする。
「所でさ」
「何だね」
「何でこんな暴露大会になってるんだろうな」
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