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第十一章
作戦終了ー03
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医務室のベッドで眠る神崎の安らかな寝顔を見届けた後、オレは一筋流れる涙を拭い、医務室前で待っていた藤堂に声をかける。
「お前、神崎のコックピット内にはいなかったのか」
「訓練だけだったからな。酒飲んでたら、占拠されちまって」
「運のいい奴」
コイツはいつもそうだ。いつもコイツが搭乗している時には機体が壊れないもんだから、オレ以外のパイロットも時々乗ってくれって頼んでたっけか。
「その、姫ちゃん」
「オレは、甘かったのかもしれない」
「え」
「オレが甘かったせいで、哨と梢さんは親父に連れていかれた。あの時周りにいた兵の安全なんかかなぐり捨てて、雷神で親父を捕まえてたら、もしかしたら救えたかもしれない」
「それは違う。姫ちゃんはその時に出来る最善をしたはずだ」
「更に言えば、前の戦闘で、一つでもアルトアリスを落とす事が出来てれば、神崎も怪我を負わずに済んだかもしれない。オレが、オレが甘いせいで……っ」
壁を殴る。コンクリートの壁が僅かに凹みと損傷を見せ、拳から流れる血が不快だったけれど――どこか、その痛みが「生きている感覚」に満ちていて、心地いいと思える事が、更にオレの不快さを増させた。
「占拠はどうなった」
「さっき、訓練所を占拠してた三人組を拘束したって」
「行ってくる」
藤堂に聞いた内容を鑑みると、おそらく捕虜はそのまま訓練施設にいるはずだ。捕虜収容所が無いので、あてがう部屋が見つかるまでその場で拘束するのは定石だ。
「姫ちゃん」
「なんだ」
「その……昔みたいな目に、なってるぞ」
「ああ――そうかもな」
昔みたいな目って、どんな意味かはよくわからない。
けれど、確かに最近のオレが甘すぎて、こうした事態を招いたのかもしれないと思ったら――そんな甘さを捨てようと思ったオレが、昔のようになるのも、当然かもしれない。
訓練所まで行く。藤堂もついてきたが、それは気にせずに。
訓練所の更衣室に、パイプ椅子に座らされ、両手と両足を拘束された三人の男たちがオレを睨んだ。
「オリヒメか」
足に巻いた包帯が若干痛々しいダディが、グロックを片手に三人を見張っており、またその場には姉ちゃんと遠藤二佐、そして神崎を除く四六のメンバーが揃っていたので、更衣室に一人の兵士を置き、更衣室を出て現状を確認。
「占拠していたメンバーは計二十人。その内三人を射殺、更にあの三人を捕虜として、残る十四名はこの海域から離脱した」
「捕捉は?」
「敵の使用する輸送機は現行の技術を遥かに凌駕するステルスモードを搭載しているらしくてな。例の通信妨害や接近にも気づかなかった事も合わせると、この差をひっくり返す事は非常に困難と言ってもいいだろう」
「睦さんはどこだ? ひとひらか?」
「……ムツミは、敵に連れ去られた」
「つまり、敵の狙いは哨と睦さんだった、って事でいいんだよな」
「恐らく」
そして、してやられてしまったという事だ。
自分の無力さが不甲斐ない。唇を噛みしめ、しかしまだやるべき事があると、オレはダディを見据える。
「尋問するぞ、あの三人」
「オリヒメ、お前」
「銃、貸してくれ」
ダディへ手を出す。ダディは元々オレが銃を撃てない事を知っているからか、僅かに葛藤を見せたものの、しかしオレへ渡してくれた。
「皆は離れてろ」
楠や、周りにいた面々にそれだけを残し、オレとダディだけが更衣室に入り、再び睨んできた三人の兵士へ、睨み返す。
「聞きたい事がある」
「捕虜の扱いはジュネーブ条約に則って頂こう」
「それはお前たちの態度次第だ」
男たちの背後に回り、一番右の椅子に座る男の頭に、グロックを突き付ける。
「レイスの拠点はどこだ。連中はどこへ帰投した?」
「知ってるぞ。オリヒメ・シロサカ。お前は重度の戦争恐怖から、銃を撃てないって事を。持ってるだけで腕が震えてるんじゃ、その通りらしいな」
ハッと嘲笑う男の声は、若干上ずっているが、それでもその情報をあてにしている。それもそうだろうとするダディもオレを見たが――しかし、オレは。
震える右手を左手で抑え込み、銃身で男の頭を抉るように押し付け、その上で引き金を引いた。
寸前、男が僅かに恐怖から体を揺らして床に倒れたから、銃弾は逸れた。男の右足に当たり、痛みから呻く。
そして、その姿を見たダディが――目を見開いて、監視していた兵を連れ、部屋を出ていく。暴発と跳弾を恐れた結果だ。実に正しい。
「逃げんなよ。お前が言ったようにオレは上手く銃を握れないからな。変な所に銃弾が当たっちまったら、余計痛いぞ」
「ま、待てよっ、捕虜だぞ!? 殺しちまったら、元も子もねぇんだぞ!? それに条約に反してる……っ」
「戦時中じゃあるまいし、テロリストにそんなもん適用してやるかよ。それに素直に話さないなら、お前らなんか必要ない。すぐに殺して飯代を節約した方がよっぽど建設的だ」
倒れた男が、瞳から涙を浮かべてジタバタとしている。
「おいどうした? そんなに死ぬのが怖くて兵隊が務まるかよ」
「お、オレ達は高い金でレイスに雇われたんだっ! 知ってる事なんでも話すから、見逃してくれよッ」
「それは情報次第だな」
真ん中の椅子に座る男に視線をやり、先ほどやったように、銃身を頭部に押し付ける。男もビクリと震え、声を荒げた。
「レ、レイスの拠点は流石に知らねぇ! オレらはイングランドのPMCで、そこの基地から直接ここまで飛んできたんだっ」
「本当か?」
周りの二人を見据えて、二人が頷いた事を確認し、その上で問う。
「レイスの所属構成員は? 輸送機はレイスが用意したのか?」
「し、知らねぇよっ! ホントに知らねぇんだっ! 輸送機も、会社の基地に来ただけだから、オレらはどんな性能してるのかも知らねぇ!」
「レイスの事を何も?」
「上がどうだったかは分からねぇがよ、オレら下っ端にそんな情報なんか出回らねぇよっ」
「所属先の名前は」
「ウェポン・プライバシー社だっ! 主に警備や軍事訓練とかをメインでやってるが、こうして裏の仕事も頼まれちゃやってるっ!」
都度、残る二人にも視線をやるが、それぞれが頷いているので、事実ではあるのだろうとする。
「そのウェポン・プライバシー社の仕事を受注している部署は?」
「ネットで検索すりゃ出る! 裏の仕事もそこから社長に回して貰えるから、多分シューイチ・シロサカもそこから……っ」
「よろしい、後で飯を持ってきてやる」
銃を下し、そのまま部屋を出る。
「お前、神崎のコックピット内にはいなかったのか」
「訓練だけだったからな。酒飲んでたら、占拠されちまって」
「運のいい奴」
コイツはいつもそうだ。いつもコイツが搭乗している時には機体が壊れないもんだから、オレ以外のパイロットも時々乗ってくれって頼んでたっけか。
「その、姫ちゃん」
「オレは、甘かったのかもしれない」
「え」
「オレが甘かったせいで、哨と梢さんは親父に連れていかれた。あの時周りにいた兵の安全なんかかなぐり捨てて、雷神で親父を捕まえてたら、もしかしたら救えたかもしれない」
「それは違う。姫ちゃんはその時に出来る最善をしたはずだ」
「更に言えば、前の戦闘で、一つでもアルトアリスを落とす事が出来てれば、神崎も怪我を負わずに済んだかもしれない。オレが、オレが甘いせいで……っ」
壁を殴る。コンクリートの壁が僅かに凹みと損傷を見せ、拳から流れる血が不快だったけれど――どこか、その痛みが「生きている感覚」に満ちていて、心地いいと思える事が、更にオレの不快さを増させた。
「占拠はどうなった」
「さっき、訓練所を占拠してた三人組を拘束したって」
「行ってくる」
藤堂に聞いた内容を鑑みると、おそらく捕虜はそのまま訓練施設にいるはずだ。捕虜収容所が無いので、あてがう部屋が見つかるまでその場で拘束するのは定石だ。
「姫ちゃん」
「なんだ」
「その……昔みたいな目に、なってるぞ」
「ああ――そうかもな」
昔みたいな目って、どんな意味かはよくわからない。
けれど、確かに最近のオレが甘すぎて、こうした事態を招いたのかもしれないと思ったら――そんな甘さを捨てようと思ったオレが、昔のようになるのも、当然かもしれない。
訓練所まで行く。藤堂もついてきたが、それは気にせずに。
訓練所の更衣室に、パイプ椅子に座らされ、両手と両足を拘束された三人の男たちがオレを睨んだ。
「オリヒメか」
足に巻いた包帯が若干痛々しいダディが、グロックを片手に三人を見張っており、またその場には姉ちゃんと遠藤二佐、そして神崎を除く四六のメンバーが揃っていたので、更衣室に一人の兵士を置き、更衣室を出て現状を確認。
「占拠していたメンバーは計二十人。その内三人を射殺、更にあの三人を捕虜として、残る十四名はこの海域から離脱した」
「捕捉は?」
「敵の使用する輸送機は現行の技術を遥かに凌駕するステルスモードを搭載しているらしくてな。例の通信妨害や接近にも気づかなかった事も合わせると、この差をひっくり返す事は非常に困難と言ってもいいだろう」
「睦さんはどこだ? ひとひらか?」
「……ムツミは、敵に連れ去られた」
「つまり、敵の狙いは哨と睦さんだった、って事でいいんだよな」
「恐らく」
そして、してやられてしまったという事だ。
自分の無力さが不甲斐ない。唇を噛みしめ、しかしまだやるべき事があると、オレはダディを見据える。
「尋問するぞ、あの三人」
「オリヒメ、お前」
「銃、貸してくれ」
ダディへ手を出す。ダディは元々オレが銃を撃てない事を知っているからか、僅かに葛藤を見せたものの、しかしオレへ渡してくれた。
「皆は離れてろ」
楠や、周りにいた面々にそれだけを残し、オレとダディだけが更衣室に入り、再び睨んできた三人の兵士へ、睨み返す。
「聞きたい事がある」
「捕虜の扱いはジュネーブ条約に則って頂こう」
「それはお前たちの態度次第だ」
男たちの背後に回り、一番右の椅子に座る男の頭に、グロックを突き付ける。
「レイスの拠点はどこだ。連中はどこへ帰投した?」
「知ってるぞ。オリヒメ・シロサカ。お前は重度の戦争恐怖から、銃を撃てないって事を。持ってるだけで腕が震えてるんじゃ、その通りらしいな」
ハッと嘲笑う男の声は、若干上ずっているが、それでもその情報をあてにしている。それもそうだろうとするダディもオレを見たが――しかし、オレは。
震える右手を左手で抑え込み、銃身で男の頭を抉るように押し付け、その上で引き金を引いた。
寸前、男が僅かに恐怖から体を揺らして床に倒れたから、銃弾は逸れた。男の右足に当たり、痛みから呻く。
そして、その姿を見たダディが――目を見開いて、監視していた兵を連れ、部屋を出ていく。暴発と跳弾を恐れた結果だ。実に正しい。
「逃げんなよ。お前が言ったようにオレは上手く銃を握れないからな。変な所に銃弾が当たっちまったら、余計痛いぞ」
「ま、待てよっ、捕虜だぞ!? 殺しちまったら、元も子もねぇんだぞ!? それに条約に反してる……っ」
「戦時中じゃあるまいし、テロリストにそんなもん適用してやるかよ。それに素直に話さないなら、お前らなんか必要ない。すぐに殺して飯代を節約した方がよっぽど建設的だ」
倒れた男が、瞳から涙を浮かべてジタバタとしている。
「おいどうした? そんなに死ぬのが怖くて兵隊が務まるかよ」
「お、オレ達は高い金でレイスに雇われたんだっ! 知ってる事なんでも話すから、見逃してくれよッ」
「それは情報次第だな」
真ん中の椅子に座る男に視線をやり、先ほどやったように、銃身を頭部に押し付ける。男もビクリと震え、声を荒げた。
「レ、レイスの拠点は流石に知らねぇ! オレらはイングランドのPMCで、そこの基地から直接ここまで飛んできたんだっ」
「本当か?」
周りの二人を見据えて、二人が頷いた事を確認し、その上で問う。
「レイスの所属構成員は? 輸送機はレイスが用意したのか?」
「し、知らねぇよっ! ホントに知らねぇんだっ! 輸送機も、会社の基地に来ただけだから、オレらはどんな性能してるのかも知らねぇ!」
「レイスの事を何も?」
「上がどうだったかは分からねぇがよ、オレら下っ端にそんな情報なんか出回らねぇよっ」
「所属先の名前は」
「ウェポン・プライバシー社だっ! 主に警備や軍事訓練とかをメインでやってるが、こうして裏の仕事も頼まれちゃやってるっ!」
都度、残る二人にも視線をやるが、それぞれが頷いているので、事実ではあるのだろうとする。
「そのウェポン・プライバシー社の仕事を受注している部署は?」
「ネットで検索すりゃ出る! 裏の仕事もそこから社長に回して貰えるから、多分シューイチ・シロサカもそこから……っ」
「よろしい、後で飯を持ってきてやる」
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