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第十六章
リェータ-01
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リントヴルムは、風神とアルトアリス試作四号機を回収した後、共に格納庫へと辿り着いたアルトアリス試作二号機より降りて来たヴィスナーを見た。
「余計な事してくれたなぁヴィスナーちゃん」
話しかけるも、しかし彼女はリントヴルムに目を向けぬ。
何時もならばリントヴルムの憎まれ口に何か返しそうなものだが、しかし無言で、何の態度も見せずに風神へと行き、コックピットハッチをこじ開けて霜山睦を回収した後、アルトアリス試作四号機のコックピットにも立ち寄る。
身体の半分が潰れたズィマーの死体を抱き、涙を流していたリェータのパイロットスーツを掴み、コックピット外へと放り投げた。
「何を……するの」
「何じゃないわよ。撤収を後三分でするのよ」
「……いかない」
「は? 敵がすぐそこまで迫ってんのよ。呑気な事言ってないではよ行動しろっつの」
リェータの背中を蹴ったヴィスナーは、その場で唾を吐き捨てながら、霜山睦の体をリントヴルムに預けた。
「アンタも口を動かしてないで、機体を輸送機にドッキングさせなさい」
「……雰囲気変わったなぁ。なんかヤな事あったンかい?」
「はぁ? むしろ清々しい位よ」
その言葉に偽りは無さそうに、ニヤリと笑いながら試作二号機へと乗り込んだヴィスナーを見届ける。
「パイロット各員! 各自機体に搭乗し、輸送機とのドッキング作業に急いでくれ!」
輸送機のパイロットが声をあげる。リントヴルムはひとまず輸送機の作業員に睦の体を預けた後、リェータの腕を引いて自身の試作五号機に押し込んだ。
「おね、お姉ちゃん」
「おぉい、四号機はどうするぅー?」
通信機を入れて問うと、その問いは今格納庫へとやってきた男が答えた。
『置いていく。パイロットもそのままだ……っ』
城坂修一だ。
彼は何時もの淡々とした声ではなく、何やら怒りか焦りか、随分と声を荒げているようにも思える。
「や、や……っ、おね、お姉ちゃんも、いっ、一緒……っ」
「……つってるけど?」
『死体も半壊した機体も邪魔だ。それに試作四号機には大したデータなどない』
「へいへい……」
随分と錯乱した様子のリェータを押さえつけ、機体を動かして風神をまずドッキングさせる。
そのまま五号機もドッキング作業へと入り、リェータへとエチケット袋を渡すと、彼女がその袋へと嘔吐する。
ミィリスで何度か嘔吐する新兵の面倒を見て来たリントヴルムは、嘔吐前に震える反応を見逃さなかったのだ。
「落ち着いたかァ?」
「……おち、つく……わけ、ない……っ」
「揺れるぜ」
ガゴン、と音がすると共に、輸送機が動き出した。まずは風神と試作五号機の収容された一機が離陸準備を済ませたのだ。
「所でオースィニちゃんは?」
『ただいま帰還したよ』
話をし始めた直後、オースィニの搭乗する試作一号機も格納庫へ到着し、試作二号機が収容されているもう一機の輸送機とドッキングに入る。
『では、離陸しろ』
修一の言葉で、輸送機は離陸を開始する。既に先行離陸して戦線から離脱している一機を追いかけるようにした二機は、ガントレットや四六の指揮する艦隊と一定の距離が離れたことを確認すると、輸送機の高度を安定させた。
そうなると、リントヴルムも機体から出る事が出来る。
リェータを抱いたままコックピットから出て彼女を降ろすと、丁度機体収容室へと訪れた修一が、リェータの頬をぶった。
「なぜ機体から降りた」
「……」
リェータは何も答えない。否、修一の言葉など、何も聞こえていないと言った様子だった。
リントヴルムは普段こうした事に口を挟まぬのだが、修一が気に食わない事も相まってか、割って入る。
「自分の姉が目の前で死ンでんだぜ? そンくらいいいじゃねぇか」
「リェータの命よりも、風神と言う機体が我々にとって必要なんだ。睦ちゃん一人では操縦できないシステムなのに、その機体を降りる等、あり得ない」
「おい、何があったか知らねぇが、そこまでにしとけよシューイチ」
「君には関係の無い事だ……っ」
「ほぉ……まぁ、大体予想はつくぜ。お前、自分の息子に否定されたろ?」
「、っ」
「図星か。オラァお前が何企ンでるかは知らねぇけど、オメェさんとオリヒメ、ホントに親子かと思う位似てねぇからな」
「黙れ……っ」
「リェータちゃん、行くぜ」
無理矢理彼女の手を引っ張り、リェータを機内にある緊急医務室へと連れて行くリントヴルムは、睨み続けている修一の視線を受け、小さく呟く。
「……そろそろ潮時かねぇ」
「何がよ」
彼の言葉に、少女からの質問が返ってきた。
リェータを医務室へと預け終わったリントヴルムは、質問を返した少女へと、問う。
「……ヴィスナーちゃん? もう一機の方に居たんじゃねェの?」
「あぁ、あのアタシと、このアタシは別個体よ」
ニヤニヤと笑いながら椅子に腰かけるヴィスナー。しかし彼女は自身の試作二号機に搭乗し、別の輸送機に乗り込んでいたのだが、その質問に対する答えすら、彼には理解できずにいた。
「一体どうなってやがンだ……?」
その問いには、誰も答えない。
「余計な事してくれたなぁヴィスナーちゃん」
話しかけるも、しかし彼女はリントヴルムに目を向けぬ。
何時もならばリントヴルムの憎まれ口に何か返しそうなものだが、しかし無言で、何の態度も見せずに風神へと行き、コックピットハッチをこじ開けて霜山睦を回収した後、アルトアリス試作四号機のコックピットにも立ち寄る。
身体の半分が潰れたズィマーの死体を抱き、涙を流していたリェータのパイロットスーツを掴み、コックピット外へと放り投げた。
「何を……するの」
「何じゃないわよ。撤収を後三分でするのよ」
「……いかない」
「は? 敵がすぐそこまで迫ってんのよ。呑気な事言ってないではよ行動しろっつの」
リェータの背中を蹴ったヴィスナーは、その場で唾を吐き捨てながら、霜山睦の体をリントヴルムに預けた。
「アンタも口を動かしてないで、機体を輸送機にドッキングさせなさい」
「……雰囲気変わったなぁ。なんかヤな事あったンかい?」
「はぁ? むしろ清々しい位よ」
その言葉に偽りは無さそうに、ニヤリと笑いながら試作二号機へと乗り込んだヴィスナーを見届ける。
「パイロット各員! 各自機体に搭乗し、輸送機とのドッキング作業に急いでくれ!」
輸送機のパイロットが声をあげる。リントヴルムはひとまず輸送機の作業員に睦の体を預けた後、リェータの腕を引いて自身の試作五号機に押し込んだ。
「おね、お姉ちゃん」
「おぉい、四号機はどうするぅー?」
通信機を入れて問うと、その問いは今格納庫へとやってきた男が答えた。
『置いていく。パイロットもそのままだ……っ』
城坂修一だ。
彼は何時もの淡々とした声ではなく、何やら怒りか焦りか、随分と声を荒げているようにも思える。
「や、や……っ、おね、お姉ちゃんも、いっ、一緒……っ」
「……つってるけど?」
『死体も半壊した機体も邪魔だ。それに試作四号機には大したデータなどない』
「へいへい……」
随分と錯乱した様子のリェータを押さえつけ、機体を動かして風神をまずドッキングさせる。
そのまま五号機もドッキング作業へと入り、リェータへとエチケット袋を渡すと、彼女がその袋へと嘔吐する。
ミィリスで何度か嘔吐する新兵の面倒を見て来たリントヴルムは、嘔吐前に震える反応を見逃さなかったのだ。
「落ち着いたかァ?」
「……おち、つく……わけ、ない……っ」
「揺れるぜ」
ガゴン、と音がすると共に、輸送機が動き出した。まずは風神と試作五号機の収容された一機が離陸準備を済ませたのだ。
「所でオースィニちゃんは?」
『ただいま帰還したよ』
話をし始めた直後、オースィニの搭乗する試作一号機も格納庫へ到着し、試作二号機が収容されているもう一機の輸送機とドッキングに入る。
『では、離陸しろ』
修一の言葉で、輸送機は離陸を開始する。既に先行離陸して戦線から離脱している一機を追いかけるようにした二機は、ガントレットや四六の指揮する艦隊と一定の距離が離れたことを確認すると、輸送機の高度を安定させた。
そうなると、リントヴルムも機体から出る事が出来る。
リェータを抱いたままコックピットから出て彼女を降ろすと、丁度機体収容室へと訪れた修一が、リェータの頬をぶった。
「なぜ機体から降りた」
「……」
リェータは何も答えない。否、修一の言葉など、何も聞こえていないと言った様子だった。
リントヴルムは普段こうした事に口を挟まぬのだが、修一が気に食わない事も相まってか、割って入る。
「自分の姉が目の前で死ンでんだぜ? そンくらいいいじゃねぇか」
「リェータの命よりも、風神と言う機体が我々にとって必要なんだ。睦ちゃん一人では操縦できないシステムなのに、その機体を降りる等、あり得ない」
「おい、何があったか知らねぇが、そこまでにしとけよシューイチ」
「君には関係の無い事だ……っ」
「ほぉ……まぁ、大体予想はつくぜ。お前、自分の息子に否定されたろ?」
「、っ」
「図星か。オラァお前が何企ンでるかは知らねぇけど、オメェさんとオリヒメ、ホントに親子かと思う位似てねぇからな」
「黙れ……っ」
「リェータちゃん、行くぜ」
無理矢理彼女の手を引っ張り、リェータを機内にある緊急医務室へと連れて行くリントヴルムは、睨み続けている修一の視線を受け、小さく呟く。
「……そろそろ潮時かねぇ」
「何がよ」
彼の言葉に、少女からの質問が返ってきた。
リェータを医務室へと預け終わったリントヴルムは、質問を返した少女へと、問う。
「……ヴィスナーちゃん? もう一機の方に居たんじゃねェの?」
「あぁ、あのアタシと、このアタシは別個体よ」
ニヤニヤと笑いながら椅子に腰かけるヴィスナー。しかし彼女は自身の試作二号機に搭乗し、別の輸送機に乗り込んでいたのだが、その質問に対する答えすら、彼には理解できずにいた。
「一体どうなってやがンだ……?」
その問いには、誰も答えない。
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