私たちの試作機は最弱です

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第十六章

リェータ-08

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 ズーウェイの搭乗するアルトアリス試作三号機には、現在武装が胸部CIWSと、予備装備として搭載されたダガーナイフが二本と言う、あまり好ましくない状況であることは間違いない。

  しかし、現在までその機体が深く狙われず、ただ追われている状況になっている理由は二つ存在する。

  一つは、この機体に明宮哨と明宮梢の両名が搭乗している事。

  修一の計画には、この二人――特に哨と言う存在が極めて重要だ。

 必ずしも必要なファクターではないが、しかし彼女の存在が無ければ、彼の計画は今後大きく軌道修正を行わなければならず、彼女達を無傷で連れ戻したいと言う考えがあるからこそ、量産型アルトアリスは、撃墜させるための行動に出る事が出来ない。


  もう一つは――その試作三号機を守る、二機のADが存在するからだ。

  
  オースィニの搭乗するアルトアリス試作一号機は、双剣ユニットを振るいながら、木々生繁る山道を、十メートルほどの巨体であるにも関わらず、颯爽と駆け抜けて、動きの制限される量産型アルトアリスを切り裂いていく。


『こんちくしょう……っ! どうしてそんな動け』


 動けるのよ、と言葉を発しようとしていたヴィスナーの一体が、今コックピットを貫かれて沈黙。

  それは、リントヴルムの搭乗するアルトアリス試作五号機が、一号機より預かった大型サーベルをぶん投げて、量産型アルトアリスのコックピット付近を丸ごと貫いたのだ。


『バカかヴィスナーちゃんは。――年の功と経験の差って奴さァ!』


 木々を蹴るようにして移動するリントヴルムの、常人には理解が及ばぬ超高機動。

  速射砲も、レールガンも、数多の射撃が彼の前では意味をなさず、しかも接近すればするほど、彼のテリトリーとなる。


『あ――らよッとォオオッ!』


 今、近づいてきた量産型アルトアリスの一機が、腹部を強打されると同時にパイルバンカーで貫かれ、さらに冥土の土産と言わんばかりにレーザーサーベルで胴体を真っ二つに叩き切られ、爆散。

  爆発のせいで視界状況がさらに悪くなった瞬間、リントヴルムはニヤリと笑みを浮かべて、そのまま試作一号機と隣接する。


『大暴れだね、リントヴルムさん!』

『オースィニちゃんも、楽しそうじゃねェか! やっぱシューイチの所にいるより、オメェさんはそうして自分の為に戦った方が楽しそうだっ!』

『彼の計画自体には賛同するけれど――でもやはり私は、子供達の未来を守りたい!』

『あんな機械のバケモンじゃなくて、ホントの子供をかァ!?』

『彼女達も守りたいけれど――世界は彼女達の様な機械によってではなく、血の通った人間が守るモノだ!』


 大型サーベルを拾い、木々を巻き込むように強く振り込んだ試作一号機。

  倒れた木々によって進行を止めざるを得なかった量産型三機の動きを見切ったリントヴルムは、そのままスラスターを吹かしながら地面を這う様に駆け抜け、その脚部をレーザーサーベルで切断、動きを抑制された機体は、順番に一号機が双剣を振るい、コックピットだけを貫いていく。


『今何体目だ!?』

『私は七機!』

『オレぁ八――ゴメン、今九機目落とした!』

『絶好調だね!』


 そんな二者が戦う姿をバックカメラに映しつつ、森の中を走る三号機の中で、哨と梢は息を呑んだ。


「あんな二人と戦って、四六は今まで生き残っているの……!?」

「す、凄いね皆。ホントに人間?」

「シューイチが、そういう人材を集めていたから……、っ!」


 今、目の前に現れた量産型アルトアリスに、体当たりを仕掛ける試作三号機。

 揺れる機内で哨と梢の体もグワンと揺れるが、しかしシートを掴んでいた事により、身体をぶつける事は避ける。

  試作三号機のタックルを受け止め、その機体を破壊しようと企む量産型アルトアリスに向けて、CIWSを放てるだけ放つ。

 T・チタニウム装甲の堅牢さに全て跳ね返るが、動きを抑制できればそれでいいとしたズーウェイは、冷静にトリガーを引く。

  すると、腕部のスリットから姿を現したダガーナイフを掴んで、量産型アルトアリスのコックピット付近、その装甲と装甲の繋目へ正確に刺し込まれたナイフによって、電力給電が止まったか、動かなくなる量産型を蹴とばし、踏みつけて前進を開始する。

  
  ――だが、そこから開けた場所に出ると。

  
  センサーが認識するだけでも、三十機近い量産型アルトアリスと、そして――
  

『勝手な事をしてくれたな。リントヴルム、オースィニ』

 
  空に浮き、今まさに地へと降り立った、その機体から、城坂修一の声が、聞こえた。


『オメェ、風神に乗ったのか』

『リェータが使い物にならないのであれば、量産型ヴィスナーか僕が乗るしかないだろう?』


 量産型アルトアリスの前に立つ、風神。

  その機体には、城坂修一が搭乗し、今その手には55㎜機銃が握られていた。


『確かにヴィスナーの言う通り、僕は人を見る目が無いらしい。

 ――織姫と楠の雷神に殺されるより前に、君を殺す事になるとは、思いもしなかった』


 前方には三十機近い量産型アルトアリスと、修一の搭乗した風神。

  修一のパイロット能力自体は低くとも、その超高機動を実現できるヒューマン・ユニットである彼が搭乗すれば、その力は確かに脅威となる。

  さらに、背後からは数が把握できない量産型アルトアリスが、今もなお近づいてきている。

  ズーウェイは息を呑みながら、今まさに隣に立った一号機と五号機を見据える。

 オースィニもリントヴルムも、そのパイロット能力は極めて高い。

  人類最強レベルのパイロットと呼んでも過言ではないが、しかしそれでも、数の利と疲労が問題だ。


  ――何か、この状況を打破できる、一手が欲しい。


  そう、彼女達が息を呑んだ、その時だ。

  
  接近警報が、全機へ一斉に入り込んだ。

  先ほどまで、敵味方識別反応は働いていなかった。何せその場にいる全機は、元々レイスが有する機体だ。敵味方識別は総じて味方の反応となる。

  だが、ここにきて、初めて敵識別を行ったという事は――
  

  量産型アルトアリスに向けて、振り込まれた右脚部の振り込み。

  蹴り飛ばされる一機と、そのまま量産型アルトアリスの間を縫うように駆ける、その一機が、今風神の背中を、強く殴りつける。


『城坂、修一ィ――ッ!!』

『織姫――ッ!?』
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