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第十八章

戦いの中で-01

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 作戦を開始する。

  城坂修一の言葉を、ヴィスナー全機と霜山睦が聞いている。

  現在、AD総合学園の二千フィート上空には、ステルス輸送機が十七機、距離こそおいてはいるが、隣接して滞空している。

  一つの輸送機には三機のADを収容でき、実際に総機体数は風神を含めて五十機。

  それらが一斉に、空へ放たれる。

  少しずつ、空から見る地上が見えてきて、その小さな島を捉えた一機の量産型アルトアリスが、率先してAD総合学園高等部格納庫区画へと着地した。
  

  城坂修一の立案した作戦は、大量のAD兵器を投入した電撃作戦だ。

  まず上空から急降下した量産型アルトアリス全機による着陸、十機編成で高等部区画、中等部区画、商業区画、居住区画、そして駐屯基地区画を占拠するという、作戦と言いつつ子供でも立案できそうな単純なものだ。

  しかし、単純な作戦程効果は高い。

  事実早々に格納庫区画にあるADを破壊し、駐屯基地区画も占拠してしまえば、学生や教師陣には成す術はないし、占拠した後であれば、横須賀基地からのスクランブルも慎重にならざるを得ない。

  しかし、ヴィスナーはそれが若干不満だった。

  勿論、彼女とて修一の目指す世界の事は知っているし、それを元々望んでいた人物が、彼女の崇拝するお父様である事も知っていた。

 だからこそ作戦には従うが、それでもリントヴルムより受けた屈辱を、ガキ共を殺しまくって発散しようとする彼女にとっては、詰まらない作戦としか考えられなかった。

  だから、満足にロックもかけず、掌速射砲を向け、今銃弾を放とうとした時。

  
  格納庫のシャッターが突然開かれ、何だと動きを止めたヴィスナーの隙を付くように。

  
  115㎜砲の砲身を向けた三機の秋風が、今一斉に弾頭を、放った。


『な――ッ』


 突然の事で反応が遅くなったヴィスナーは満足に避ける事も出来ず、放たれた弾丸は全て着弾。

  少し遅れて着陸した九機の量産型が慌てて拡散するが、しかし弾丸をまともに食らった一機は、何とも無さそうに立ち上がった。


『っ、は……? なに、模擬弾頭?』


 実弾の115㎜をまともに着弾すれば、機体は四散していてもおかしくない筈なのに、何ともない。

 ともすれば、それは実弾ではなく安全対策の施された模擬弾頭に他ならない。


『……はっ、アタシなんか模擬弾頭で十分だってェの……!?』


 湧き立つ怒りを抑える事無く、再び速射砲を構えて、三機の秋風に向けて、放つ。

  着弾。避ける動作も、慌てる様な動きも見せる事無く散っていった秋風を見て、ヴィスナーはそこで何かがおかしいと感じ取る。
  

 格納庫の奥から、何かが動いた。


  それは、姿勢を低くして走り、ぼうっとしていたアルトアリスの懐まで潜ると、レーザーサーベルを展開し、正確な動きでコックピットを、焼いた。
  

『実弾攻撃確認! 当方・坂本千鶴、実戦装備へと変更し、一機撃破!』

『結構。では無人機を含め一班三十機編成で作戦を開始してください』

『了解いたしました!』


 一機が落とされた事を知ったアルトアリスが、固まって速射砲を構えようとするも、しかし次々に115㎜砲を構えた高火力パックの秋風が格納庫から現れ、一斉にそれを放つ方が早かった。

  弾頭の雨を躱していく量産型アルトアリス。それは狙いが浅いものもあれば、中には回避ルートを想定した砲撃もある。


『隊長、隊長代理!』

『第三班はこのまま高火力パックでの砲撃を続けて。味方に当てないでよ』

『では天城さん、千鶴、お願いします』

『了解!』


 高速戦パックを装備した、二機の秋風が115㎜の砲撃が止んだ瞬間、駆けた。

  既に量産型アルトアリスの数は、格納庫区画へ着陸した数だけで言えば残り四機。


『な――めんなぁっ』


 アルトアリスは速射砲を放つ機体、電磁砲を放つ機体とそれぞれアクションは異なるが、突撃を仕掛ける二機に対して攻撃を開始。

  しかし、冷静に射線を見切るように、キャタピラ装甲を駆使した稼働を見せる二機が避ける間に、その奥から冷静な115㎜の砲撃が襲う。


『ち、くしょ、何よ、何なのよぉ……っ』


 115㎜の弾丸を無視する事は出来ない。避けつつ、接近する秋風に向けて胸部CIWSを放つものの、その程度は堅牢なT・チタニウム装甲の前に弾かれるだけ。


『ッ――!』


 一機の秋風が振るったレーザーサーベル。真っ二つに裂けたアルトアリスの果てた姿を見届けた一機も、今真っ向から襲い掛かるレーザーサーベルを何とか避け、反撃として速射砲を向けようとするも、しかしそれは叶わない。


  背後に回っていたフルフレームが、今四川を構えてそれを振るう。

  背後から叩き切られたアルトアリスが姿勢を崩し、前のめりに倒れ掛かった所を、コックピットに向けて突き出したレーザーサーベルが貫き、沈黙。


『こちら生徒会会長補佐・久世良司だ。旧世代パケット通信は出来ているな』

『こちら生徒会書記・清水康彦。問題無し。オレが趣味で通信システムと受信機を作ってて良かったな』

『やはり敵は現在の音声通信に使用される周波数帯の通信妨害を行っているようだな。旧世代のパケット通信は阻害されていない』

『音質は悪いけどねぇ。二千年代の人ってコレで通話してたってマジ?』

『オレが趣味で作ったものだからな。本物はもっとマシだったんじゃないか?』


 今、放たれた速射砲をゼロ距離から回避した秋風が、左右の拳でアルトアリスの顔面を殴りつけた後、脇腹を蹴りつけて動きを止めた敵機に向けて跳び蹴りを叩き込み、沈黙させた。レーザーサーベルを使用して、敵機の両腕両足を切り裂いたので、動けたとしても攻撃は不可能だ。


『第一班、そちらはどうだ?』

『あー、こちら第一班の村上明久です。今三機撃墜されましたけど、全機無人機なんで大丈夫っす。けどオレの指揮だとあんま持たないかもしれないので、誰か来てくれると助かります!』

『了解、我々の第二班が行く』


 現状確認。

  現在高等部区画、中等部区画、居住区画を占拠しようと着陸した敵機は、全機放置。

  続けて格納庫区画は、全戦力の八割――第二・三・四班を投入し、戦線維持に務めている。そして今、格納庫区画を占拠しようとしていたアルトアリスを全機撃墜確認。

  続けて商業区画には残る二割――第一班の戦力を割いているが、これには現状苦戦中の為、久世良司の率いる生徒会組――第二班が商業区画に駆け付ける為、向かっていく。

  自衛隊駐屯基地のある基地区画は――既に自衛隊駐屯基地に席を置く第507飛行分隊による迎撃準備を既に手配しており、敵の侵入を確認した段階で警告及び攻撃へと移っており、こちらも現在迎撃中だ。

  
  秋沢楠の立案した作戦は、こうだ。

  城坂修一は恐らく上空からの強襲で、一気に各区画へとアルトアリスを投入し、鎮圧する事。

 そして重要なのは自衛隊駐屯基地のある基地区画と、全ADの整備や補給を行う格納庫区画の鎮圧をされる事。何としてもこれは回避しなければならない。


  だが、問題が大きく二つ。


  AD総合学園は、敵の攻撃を確認していない段階で実弾装備を行う事は、文科省及び防衛省との取り決めで禁じられている。

  その為、模擬弾頭装備の秋風を全機第二警戒待機を維持し、敵機の襲撃があった場合、まず模擬弾頭装備の無人操縦システムを搭載した秋風で攻撃し、敵機の攻撃を引き出した後、実戦装備へと切り替えた有人機で攻撃を開始する事。

  
  もう一つは、居住区画等に要る筈の、住民の安全だが――

  これは、本日全居住者対象の大型避難訓練を実施しており、九割の市民は既にシェルターへと逃げている事。

  そしてさらに、避難訓練参加をサボった者に被害が万一にも及ばないよう、あえて中等部、高等部、居住区画へ戦力は投入せず、元々夏休みで帰省している生徒も多かったことから、もぬけの殻だ。

 敵対勢力の無いアルトアリスは現在迎撃されている格納庫区画か、もしくは商業区画へと向かっている。
  

  そしてここからが、本当の作戦開始だ。
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