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3-1.恋人、って言っちゃうんだ?
「なあ。高木って、眞田とどういう関係?」
自分たち以外は、すでに顔見知りの集まりらしく、特に自己紹介もなく飲み会は始まった。
ってかお前誰よ? と言わんばかりの警戒心を見せれば、
「折戸たけし。よろしくね」
午後の講義に俺も出てた、同じ学科だよね、とニヤニヤと自己紹介してきた。
「高校が一緒だったって聞いたんだけど、そんだけであんなベッタリなもん?」
「ベッタリ?」
「脅威の履修シンクロ100%」
……あ、うん。確かに二年次になってまで履修登録が100%丸かぶりするのは異常だよな。ちょっと俺もそう思う。
そもそも、理央がどんな将来を見据えてこの大学に決めたのかも聞いたことがない。「俺も同じとこ受ける」と気づいたときには理央が言いだしていて、深く考えもせずに「それなら一緒に勉強しようぜ」という軽いノリだった。あいつの主体性はどうなってるんだろうな。
「同じ高校だったよ。家も、割と近所だったし」
「あー、幼馴染」
「どうかな。高校んときに理央が引っ越してきて――三年ぐらいの付き合いになるけど。その前のことは詳しくは知らねぇし」
「え、思ったより歴史が浅ぇ。
眞田ってなんか、金持ちの家の子だとかイロイロ噂があるみたいなんだけど。人当たり良さそうに見せて案外ガード固いっつーか、でも異様なまでに朔のことは寵愛してる感じだからさ。なんでかなーって」
なんだ、寵愛って。理央、どっかの王様かよ?
……傍からは、そう見えてるってことなんだろうけどさ。
「高校んときの理央は、今ほど出来上がってなかったんだよ。青田買いに成功したって感じ? じゃなきゃ、俺みたいな下々の者が気軽に近づけるわけないだろ」
調子を合わせて、理央を持ち上げておく。
「紹介してよ、理央君に俺らのことも」
「すぐそこにいるんだから、自分で頑張れよ。大体、俺とお前もほぼ今日が初対面だろーが」
「ケチすぎない? 恩恵を独り占めとかないわ」
笑顔で圧してくるな。
悪気のない悪意が刺さったような気がした。悪意に悪気がないってのも変な話だけど。
「なんだよ、恩恵って。まあ、高校のときから勉強は見てもらってるけど」
「金回りも良さそうじゃん、イイとこに住んでるって聞くし」
折戸とは反対側に座っていた男が、勢いよく肩を抱きこんで口を挟んできた。
理央が、ただの大学生が借りるには過ぎた部屋に住んでいるのは事実だ。なんなら本人の口から、本気なのか冗談なのかわからない口で、
「俺、天変地異でも起きないかぎり就職しなくても金に困ることはないかも」
なんて、ポロっと言ったのを聞いた気もする。
「理央の家が金持ちかどうかとか知らねーけど。仮にそうだったとしても関係ないだろ。借金でもあるなら、貸してくれないかとか気になるかもだけど」
こいつらのパーソナルスペースどうなってんの。酒臭いし。
苦笑しつつチラと理央の方を見れば、バチンと視線があった。
「理央、こっち来いよ。そんな遠いところに座ってたら寂しいだろ」
それだけの人数に囲まれておいて”寂しい”って。
自分なら、冗談でも言えないようなことをさらっと口にできる理央の鋼メンタルに引きそうになる。まあ今回は、ほぼ初対面の男サンドから抜け出すきっかけになって助かったけど。
人垣を抜けて隣に来た理央が、新しいコップにウーロン茶を注いでくれる。
「ちゃんと食べた?」
「食べたよ。お前は? イヤ、近いな」
クンと鼻先を近づけてきたので、肩を反らして避ける。
「酒、飲んでないよね?」
フッと息を小さく漏らした理央が、わかっているくせに確認してくる。
「飲まねーよ、とりあえず二十歳になるま―」
「ねえねえ、理央君と高木君ってどういう関係なの?」
割り込んできた女の子たちが、また同じ質問をしてくる。
また、その質問か。
軽い頭痛を感じて眉間に皺を寄せる俺に、リオが流し目をよこす。チャシャ猫のような笑みを浮かべたかと思うと、
「恋人」
藍の眸が、至近でにじむ。
理央が俺を恋人と称すことは珍しくもないのに。
──その色が、あの日と重なり、胸の奥をざわつかせた。
自分たち以外は、すでに顔見知りの集まりらしく、特に自己紹介もなく飲み会は始まった。
ってかお前誰よ? と言わんばかりの警戒心を見せれば、
「折戸たけし。よろしくね」
午後の講義に俺も出てた、同じ学科だよね、とニヤニヤと自己紹介してきた。
「高校が一緒だったって聞いたんだけど、そんだけであんなベッタリなもん?」
「ベッタリ?」
「脅威の履修シンクロ100%」
……あ、うん。確かに二年次になってまで履修登録が100%丸かぶりするのは異常だよな。ちょっと俺もそう思う。
そもそも、理央がどんな将来を見据えてこの大学に決めたのかも聞いたことがない。「俺も同じとこ受ける」と気づいたときには理央が言いだしていて、深く考えもせずに「それなら一緒に勉強しようぜ」という軽いノリだった。あいつの主体性はどうなってるんだろうな。
「同じ高校だったよ。家も、割と近所だったし」
「あー、幼馴染」
「どうかな。高校んときに理央が引っ越してきて――三年ぐらいの付き合いになるけど。その前のことは詳しくは知らねぇし」
「え、思ったより歴史が浅ぇ。
眞田ってなんか、金持ちの家の子だとかイロイロ噂があるみたいなんだけど。人当たり良さそうに見せて案外ガード固いっつーか、でも異様なまでに朔のことは寵愛してる感じだからさ。なんでかなーって」
なんだ、寵愛って。理央、どっかの王様かよ?
……傍からは、そう見えてるってことなんだろうけどさ。
「高校んときの理央は、今ほど出来上がってなかったんだよ。青田買いに成功したって感じ? じゃなきゃ、俺みたいな下々の者が気軽に近づけるわけないだろ」
調子を合わせて、理央を持ち上げておく。
「紹介してよ、理央君に俺らのことも」
「すぐそこにいるんだから、自分で頑張れよ。大体、俺とお前もほぼ今日が初対面だろーが」
「ケチすぎない? 恩恵を独り占めとかないわ」
笑顔で圧してくるな。
悪気のない悪意が刺さったような気がした。悪意に悪気がないってのも変な話だけど。
「なんだよ、恩恵って。まあ、高校のときから勉強は見てもらってるけど」
「金回りも良さそうじゃん、イイとこに住んでるって聞くし」
折戸とは反対側に座っていた男が、勢いよく肩を抱きこんで口を挟んできた。
理央が、ただの大学生が借りるには過ぎた部屋に住んでいるのは事実だ。なんなら本人の口から、本気なのか冗談なのかわからない口で、
「俺、天変地異でも起きないかぎり就職しなくても金に困ることはないかも」
なんて、ポロっと言ったのを聞いた気もする。
「理央の家が金持ちかどうかとか知らねーけど。仮にそうだったとしても関係ないだろ。借金でもあるなら、貸してくれないかとか気になるかもだけど」
こいつらのパーソナルスペースどうなってんの。酒臭いし。
苦笑しつつチラと理央の方を見れば、バチンと視線があった。
「理央、こっち来いよ。そんな遠いところに座ってたら寂しいだろ」
それだけの人数に囲まれておいて”寂しい”って。
自分なら、冗談でも言えないようなことをさらっと口にできる理央の鋼メンタルに引きそうになる。まあ今回は、ほぼ初対面の男サンドから抜け出すきっかけになって助かったけど。
人垣を抜けて隣に来た理央が、新しいコップにウーロン茶を注いでくれる。
「ちゃんと食べた?」
「食べたよ。お前は? イヤ、近いな」
クンと鼻先を近づけてきたので、肩を反らして避ける。
「酒、飲んでないよね?」
フッと息を小さく漏らした理央が、わかっているくせに確認してくる。
「飲まねーよ、とりあえず二十歳になるま―」
「ねえねえ、理央君と高木君ってどういう関係なの?」
割り込んできた女の子たちが、また同じ質問をしてくる。
また、その質問か。
軽い頭痛を感じて眉間に皺を寄せる俺に、リオが流し目をよこす。チャシャ猫のような笑みを浮かべたかと思うと、
「恋人」
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──その色が、あの日と重なり、胸の奥をざわつかせた。
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