7 / 11
5.日常へ返す
結局、葬式はあげなかった。
葬儀屋に頼んで用意してもらった簡素な後祭壇に、両親の骨を安置してある。
新聞にお悔やみ情報を載せたことで、近所の人が弔問に顔を出してくれた。連絡をした両親の兄弟や従兄弟たちも顔を出し、喪主を務める俺の横で、理央は終始、細かいところに気を配ってくれた。
そんな中で、思いがけない来客があった。
「遅くなって悪い。急のことでさ――」
高校時代の友人たちだった。
「大丈夫か?」
「って、眞田いるし。相変わらずかよ」
口々に出迎えた俺に声をかけながら、横に立つ理央に、ほっとしたような表情をみせた。
仏間からリビングへ通すと、張りつめていた空気がほどけていった。少しずつ笑い声が混ざりはじめる。
「眞田、お前なんか、あか抜けた?」
「ってかさ」
俺と理央を指さして、
「座る位置まで高校のときと変わってねぇし」
笑い声がこぼれた。
理央の見た目が変わっても、高校の頃と同じように、俺と理央が並んでいることを当たり前のように受け止めてくれる。
痛みが、薄れた。
名残惜しさもあって「泊まっていけよ」と言ったけれど、
「それはさすがに悪い」
と、それぞれに帰っていってしまった。
「困ったことあったら、連絡しろよ」
玄関先で、ずいぶん友達甲斐のあることを言われて、心がじんわり温かくなる。
彼らの気配が消え、部屋が静かに冷えてゆく。
テーブルの上を片づけながら、
「なあ。お前、そろそろ戻っておいたほうがいいんじゃね?」
流しに向かう理央の背に、声をかけた。
「なんで?」
背中を向けたまま、問いが返ってくる。
「弔問客も落ち着いたし。大学、もう始まるじゃん」
「朔と一緒に戻るよ。それまで、こっちにいる」
ようやく振り返った理央の顔が不満を滲ませていた。
「俺も、あといくつか手続きとか後始末を済ませたらそっちに戻るし。
世話になった礼はそのときにさせて」
言葉を重ねて、ようやく理央を頷かせた。
その後の三日で、思いつく限りの手続きを役所や銀行で済ませた。
一段落ついたところで、大学近くのアパートではなく、遠方に住む祖父を訪ねることにした。
両親の骨を預けるためだ。
葬儀のことで連絡をして初めて知ったのだが、祖父は裏山で足の骨を折っていた。
連絡がなければ黙っているつもりだったらしい、その頑固さに思わず呆れる。
納骨の前に墓の様子も見ておきたかったので、祖父の様子見も兼ねて、
そのまま四十九日まで世話になることにした。
あなたにおすすめの小説
笑って下さい、シンデレラ
椿
BL
付き合った人と決まって12日で別れるという噂がある高嶺の花系ツンデレ攻め×昔から攻めの事が大好きでやっと付き合えたものの、それ故に空回って攻めの地雷を踏みぬきまくり結果的にクズな行動をする受け。
面倒くさい攻めと面倒くさい受けが噛み合わずに面倒くさいことになってる話。
ツンデレは振り回されるべき。
そんな拗らせた初恋の話
椿
BL
高校生で許婚の二人が初恋拗らせてるだけの話です。
当て馬と受けが一瞬キスしたりします。
Xのツンデレ攻め企画作品でした!
https://twitter.com/tsubakimansyo/status/1711295215192121751?t=zuxAZAw29lD3EnuepzNwnw&s=19
【完結】I adore you
ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。
そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。
※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。
魔法の言葉
すずかけあおい
BL
ずっと仲良くしていた幼馴染の実凪が突然よそよそしくなり、弦矢を避けるようになった。いつも隣にいた実凪がそばにいない毎日は寂しい。
*外部サイトでも同作品を投稿しています。
【完結】大学で再会した幼馴染(初恋相手)に恋人のふりをしてほしいと頼まれた件について
kouta
BL
大学で再会した幼馴染から『ストーカーに悩まされている。半年間だけ恋人のふりをしてほしい』と頼まれた夏樹。『焼き肉奢ってくれるなら』と承諾したものの次第に意識してしまうようになって……
※ムーンライトノベルズでも投稿しています
【完結】後悔は再会の果てへ
関鷹親
BL
日々仕事で疲労困憊の松沢月人は、通勤中に倒れてしまう。
その時に助けてくれたのは、自らが縁を切ったはずの青柳晃成だった。
数年ぶりの再会に戸惑いながらも、変わらず接してくれる晃成に強く惹かれてしまう。
小さい頃から育ててきた独占欲は、縁を切ったくらいではなくなりはしない。
そうして再び始まった交流の中で、二人は一つの答えに辿り着く。
末っ子気質の甘ん坊大型犬×しっかり者の男前
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………