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転生幼児は友達100人は作れない8
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臭い臭いうるさい男は一の村のラキアスと言った。
三人で肉っ子を匿っていたことをイレインスが尋問しようとしたのだが、あまりにラキアスが騒がしかった為、四人+幼児+仔魔猪で川にやってきた。とはいっても、村人以外が三の村の川に近寄れないらしく、私達は川の上流である森の深部へと来ている。
「ピキーッ!」
「暴れんな暴れんな、今キレイにしてやるからなー」
肉っ子はバーゲルに胴体を捕獲された格好でマールとラキアスに水洗いされている。
三人の行動に躊躇いがないので、きっと結構長い間三人で肉っ子を育てていたのだろう。
カワイイ生き物と三人の青年達。
とても美味しい。
生き物と絆を育むついでに3人の中で愛を育んでくれたら猶のこと美味しい。
そこで私はハッとした。
いけない! 彼らは三人、奇数だ! これでは一人あぶれてしまう! おそらく最初は三人で誰と誰が付き合うかすったもんだした後、二人がくっつき一人は彼らの幸せを願って身を引くのだ。そして傷心の彼をここにいるイレインスがーー
「ティカ、お前は暴れるなよ」
唐突に抱き上げられて妄想を中断させられた。
「暴れないよ」
私は道理の解った大人らしく神妙に頷いてみせた。
「ったく……」
口の中で何やらブチブチ言いながら、イレインスは私ごと川の中に入った。
冷たい。
ヒッ! と喉が鳴って、反射的に私を掴む手を握りしめてしまった。学校のプールに入る前に浸かる消毒液プールを思い出す冷たさだ。
上流である川は浅いものの流れが早く、幼体である私が流れていかないようにとの配慮だろう。イレインスは、川底に尻を付けて座り胸の下程のところにある水面に私の顔がつかないよう抱え直した。
「よし。目閉じて息止めて口閉じろ、ティカ」
随分とワイルドな方法で私を洗うつもりだと察した。
私は大人しく言葉に従い、キツく目を閉じて両手で鼻と口を覆った。手のひらに付いた御腐れ汁が一層強く感じられて凹んだが、今は我慢だ。
「いくぞ、せーの」
この世界でも「せーの」は「せーの」なんだな、と感慨深く思いながら、私はイレインスの手によって頭から水につけられた。
髪をゆすぐようにかき混ぜられ、顔を手のひらで拭われて水から揚げられる。
「ぷはっ」
ぐいぐいと顔を手で拭われ、目を開けるとイレインスは渋い顔をしていた。
「なに?」
「……まだ臭ぇな」
今度は仰向けのまま頭を水に浸けられ、美容院のシャンプースタイルで髪をかき混ぜられた。
大変気持ちがいい。
何だかんだ言っていてもイレインスは面倒見が良い男だ。子供の柔らかな髪の毛が絡まらないよう優しく梳いてくれている。こんな優しいイレインスには早く恋人を作っていただいて、幸せな毎日を送っていただきたい。
私の体を持ち上げ、頭に鼻を近づけた彼はまだまだ渋面のままだ。
「このまま川に浸かってるのが一番楽だけど、ティカが風邪ひくかもしれないな」
呟きつつ一人で納得した子供当番は、おもむろに自分が着ていた生成り色の貫頭衣を脱いだ。
狩りに行ったり村を守ったり子供のおもりをしなければいけないこの村の男達は、細マッチョ体型率が高い。もれなくイレインスも仕上がった上半身をしていた。
同じような体型の四人の中で誰が溺愛姫ポジになるだろうか、と発酵した物思いに耽っていると、気が付いたら貫頭衣を脱がされていた。
抵抗する間もなく手際よく上半身裸にされてしまい、私はぽかんとしてしまった。
「クッサくなった服洗ってやるから、流されないように俺の首に掴まってるんだぞ、ティカ」
御腐れ汁まみれになった服を両手に持って私へと屈むイレインスに頷き、モチモチ紅葉な両手を伸ばす。
「やめろ! イレインス!」
が、唐突に聞こえた切羽詰まった声に驚き止まった。
振り返ると、肉っ子をラキアスに受け渡したバーゲルが泡を喰った表情でこっちに走って来るところだった。
「何考えてんだ、ティカを剥くなんて!」
水を跳ね上げ川底の石に足を取られながらもバーゲルは止まらない。
「タウカに知られたらタダじゃ済まないぞ!」
ああ、とマールも納得したような表情を浮かべた。
「村のみんなの前でティカのオムツ替えをするのを拒否するほどの過保護だからな。下手したら裸を見た責任取ってティカと結婚しろとか言われるかも」
「はあ?」
イレインスの顔が「俺は人の汗で自然塩を作ってナチュラル・オーガニックソルトとして売る会社を立ち上げる!」と友人に言われた人のように、グロテスクで馬鹿げた話を聞いたかのように歪んだ。
「守番のタウカは頑固だからな。お前がアルファに選ばれても絶対に許してくれないぞ」
「タウカは俺の親じゃない!」
「番候補を全員追い払って夜這いに来た奴は真っ二つにして村から叩き出したタウカだぞ! 番うからなんて理由だけでお前を逃がすはずがないな」
真っ二つ?
何をどうしたっての?
そう自分の親の過去に好奇心を抱いた私とは正反対に、イレインスは首を横に振って聞きたくないという意思表示をした。
「ま、村の掟で添うことに合意した二人の邪魔はできないから、せいぜいティカを連れて三人で家庭を築けって言われるくらいじゃないか?」
肩を竦めて見せたラキアスに、イレインスは真っ青になる。
「冗談じゃない! 」
三人で肉っ子を匿っていたことをイレインスが尋問しようとしたのだが、あまりにラキアスが騒がしかった為、四人+幼児+仔魔猪で川にやってきた。とはいっても、村人以外が三の村の川に近寄れないらしく、私達は川の上流である森の深部へと来ている。
「ピキーッ!」
「暴れんな暴れんな、今キレイにしてやるからなー」
肉っ子はバーゲルに胴体を捕獲された格好でマールとラキアスに水洗いされている。
三人の行動に躊躇いがないので、きっと結構長い間三人で肉っ子を育てていたのだろう。
カワイイ生き物と三人の青年達。
とても美味しい。
生き物と絆を育むついでに3人の中で愛を育んでくれたら猶のこと美味しい。
そこで私はハッとした。
いけない! 彼らは三人、奇数だ! これでは一人あぶれてしまう! おそらく最初は三人で誰と誰が付き合うかすったもんだした後、二人がくっつき一人は彼らの幸せを願って身を引くのだ。そして傷心の彼をここにいるイレインスがーー
「ティカ、お前は暴れるなよ」
唐突に抱き上げられて妄想を中断させられた。
「暴れないよ」
私は道理の解った大人らしく神妙に頷いてみせた。
「ったく……」
口の中で何やらブチブチ言いながら、イレインスは私ごと川の中に入った。
冷たい。
ヒッ! と喉が鳴って、反射的に私を掴む手を握りしめてしまった。学校のプールに入る前に浸かる消毒液プールを思い出す冷たさだ。
上流である川は浅いものの流れが早く、幼体である私が流れていかないようにとの配慮だろう。イレインスは、川底に尻を付けて座り胸の下程のところにある水面に私の顔がつかないよう抱え直した。
「よし。目閉じて息止めて口閉じろ、ティカ」
随分とワイルドな方法で私を洗うつもりだと察した。
私は大人しく言葉に従い、キツく目を閉じて両手で鼻と口を覆った。手のひらに付いた御腐れ汁が一層強く感じられて凹んだが、今は我慢だ。
「いくぞ、せーの」
この世界でも「せーの」は「せーの」なんだな、と感慨深く思いながら、私はイレインスの手によって頭から水につけられた。
髪をゆすぐようにかき混ぜられ、顔を手のひらで拭われて水から揚げられる。
「ぷはっ」
ぐいぐいと顔を手で拭われ、目を開けるとイレインスは渋い顔をしていた。
「なに?」
「……まだ臭ぇな」
今度は仰向けのまま頭を水に浸けられ、美容院のシャンプースタイルで髪をかき混ぜられた。
大変気持ちがいい。
何だかんだ言っていてもイレインスは面倒見が良い男だ。子供の柔らかな髪の毛が絡まらないよう優しく梳いてくれている。こんな優しいイレインスには早く恋人を作っていただいて、幸せな毎日を送っていただきたい。
私の体を持ち上げ、頭に鼻を近づけた彼はまだまだ渋面のままだ。
「このまま川に浸かってるのが一番楽だけど、ティカが風邪ひくかもしれないな」
呟きつつ一人で納得した子供当番は、おもむろに自分が着ていた生成り色の貫頭衣を脱いだ。
狩りに行ったり村を守ったり子供のおもりをしなければいけないこの村の男達は、細マッチョ体型率が高い。もれなくイレインスも仕上がった上半身をしていた。
同じような体型の四人の中で誰が溺愛姫ポジになるだろうか、と発酵した物思いに耽っていると、気が付いたら貫頭衣を脱がされていた。
抵抗する間もなく手際よく上半身裸にされてしまい、私はぽかんとしてしまった。
「クッサくなった服洗ってやるから、流されないように俺の首に掴まってるんだぞ、ティカ」
御腐れ汁まみれになった服を両手に持って私へと屈むイレインスに頷き、モチモチ紅葉な両手を伸ばす。
「やめろ! イレインス!」
が、唐突に聞こえた切羽詰まった声に驚き止まった。
振り返ると、肉っ子をラキアスに受け渡したバーゲルが泡を喰った表情でこっちに走って来るところだった。
「何考えてんだ、ティカを剥くなんて!」
水を跳ね上げ川底の石に足を取られながらもバーゲルは止まらない。
「タウカに知られたらタダじゃ済まないぞ!」
ああ、とマールも納得したような表情を浮かべた。
「村のみんなの前でティカのオムツ替えをするのを拒否するほどの過保護だからな。下手したら裸を見た責任取ってティカと結婚しろとか言われるかも」
「はあ?」
イレインスの顔が「俺は人の汗で自然塩を作ってナチュラル・オーガニックソルトとして売る会社を立ち上げる!」と友人に言われた人のように、グロテスクで馬鹿げた話を聞いたかのように歪んだ。
「守番のタウカは頑固だからな。お前がアルファに選ばれても絶対に許してくれないぞ」
「タウカは俺の親じゃない!」
「番候補を全員追い払って夜這いに来た奴は真っ二つにして村から叩き出したタウカだぞ! 番うからなんて理由だけでお前を逃がすはずがないな」
真っ二つ?
何をどうしたっての?
そう自分の親の過去に好奇心を抱いた私とは正反対に、イレインスは首を横に振って聞きたくないという意思表示をした。
「ま、村の掟で添うことに合意した二人の邪魔はできないから、せいぜいティカを連れて三人で家庭を築けって言われるくらいじゃないか?」
肩を竦めて見せたラキアスに、イレインスは真っ青になる。
「冗談じゃない! 」
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