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転生幼児は友達100人は作れない14

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「確かに、成長して友達にからかわれて大喧嘩して大騒ぎになってからは、食べ物を家族以外と食べさせ合うことはやめたんだけどなぁ……」

 トールはフォークをテーブルに置き、話し出した。

「喧嘩した友達と仲直りしないまま二の村に行ってしまってな、反抗期中のことだったから父親の俺ともぎこちなくなっててなあ……そのまま三の村には帰って来れなくなって、教育が終わるまでは両方の父親とは会えなくなるから、ニの村でかぶれたと思うんだがーー」

 トールは苦虫を噛み潰したような顔になる。

「オメガ差別思想に染まってしまったんだよな……」

「なんだって?!」

 オメガの父≒母であるとするなら。
 マールのそれは反抗期あるあるだ。
 お母さんに制服を洗ってもらって手作り弁当を持たせてもらっておきながら「ハハオヤがうぜーの!」と言い放っていた中学時代のクラスメイトの在りし日を思い出した。
 私には両親が居なかったので、彼等を羨ましく思っていた。そんな風に言うなら、私と立場を交換して欲しいと思っていた。彼等こそが「うぜー」二親を亡くし、私の両親を生き返らせてくれたら、と。

 口に出したことは無かったけれど。

 前世の父と母の写真を思い出し、この世界にそれを持ってこれなかったことを残念に思う。
 しゅんとしてしまった私に気付き、タウカが気遣わしげな表情で私を見下ろしてきた。

「どうしたティカ? 別にお父さんはティカに怒鳴ったんじゃないからな! 驚いてナンダッテー?! って大きな声出しただけだからな」

 タウカの大声に私が萎縮したのだと勘違いしてしまったようだ。

「俺はティカに怒ってないぞ! お父さんはティカが大好きだぞ!」

 焦りながら魚の塩煮を食べさせようとしてくる今世の養父に胸が暖かくなる。

「うん!」

 差し出された魚の白身にパクリと食いつくと、タウカは破顔してくれた。

「はぁ……ティカは可愛いなあ」

 トールが物憂げな声で褒めてくれた。
 声のテンションが低いと、良い事を言われても嬉しくならないのだと知ってしまった。
 モグモグ咀嚼しながらトールを見上げると、おでこを撫でられた。

「頭を撫でられても嫌がらないしなぁ……」

「トール、いくら実の息子といえども差別してくるならば対処しないといけないぞ。部族全体の調和を崩す行動は諌めないといけない! まずは村長に言って」

「いや! マールのオメガ蔑視は一時期で終わったんだ!」

 私は咀嚼しながらウンウン頷く。
 肉っ子飼育が私達にバレた時、マールはバーゲルともイレインスとも仲が良さそうだった。幼馴染という関係性からかお互いに恋愛感情をまだ持っていなさそうだったが、私の腐女子レーダーではゆくゆくは自分の想いに気付いてモダモダし始めると予測できた。差別している相手と、恋愛感情が芽生えるのが見え見えなほど(私目線)仲良くする差別主義者はいないだろう。

「ああ、まあなぁ……性が発現してすぐは、自分の性を特別視したり他性を下に見たりは……まあ、したなぁ……」

 タウカまでもが!
 一瞬驚いたが、この男しか存在しない世界では「女なんかキタネェ!」「男の子きらーい! 乱暴でうるさいしー」とか言ってお互いに距離を置く時期が、性が発現する時期にズレたのだろうと思われた。
 それは……差別っていうより第二次性徴期的な精神の成長の証なのでは、と思ったが、幼児が口に出したらおかしな知識だと思ったので、黙って口の中のものを飲み込んだ。

 



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