男しか存在しない世界に女として転生した私の幸福な毎日。

ココナツ信玄

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転生幼児は友達100人は作れない13

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「!!!」

 躊躇なく差し出されたきのこを口に含んだ私を見て、タウカは微笑みながら目を潤ませた。

「ティカ、よーく聞いてくれ」

「? うん」

「ティカは俺が用意した食い物は何でも食べてくれるいい子だ。俺は好き嫌いしないティカが誇らしいし、大好きだ!」

「うん! 私もお父さん大好き!」

 今世の父に言葉で好きだと言ってもらえて、嬉しくてニコニコしてしまう。

「ありがとうな、でも!」

 タウカは唐突に私の手を掴んだ。

「俺以外の誰かに食べ物を差し出されてもすぐ口に入れたら駄目だぞ!」

「うん、分かった」

 私はこう見えても精神は成人なのだ。目の前で喋っている大人達の会話をちゃんと理解している。「あーん」は家族以外としたら恥ずかしいことだ、とちゃんと理解した。

「それから、自分が口をつけたものを誰かにあげるのも駄目だ!」

「う、ん?」

「もちろん誰かの食べかけをもらうのも駄目だぞ! 求婚を受け入れたことになるからな!」

「あの、お父さん、私……もう何度も友達と食べ物わけあってるけど……」

 私達、三の村の子供達は五人しかいないので仲良しなのだ。美味しいものはみんなで分け合うのが習慣のようになっている。
 その樣を子供当番に咎められることも、みんなの父親達を慌てさせることも無かったのに。
 タウカは私の手を掴んだまま首を横に振る。

「分け合うのは良いんだ。半分こもいい。でも食べかけをあげるのは駄目だ! 特に口をつけたところを相手に食べさせるのは本当に駄目だ!」

 虫歯菌云々の話ではないのは流れ的に察した。

「"貴方の毒見を一生したい"って意味に取られて、結婚の申し込みだと思われるからな!」

 人に食い止しくいさしをあげたらプロポーズになるとは。
 小さな友人たちとは、甘い花の蜜が吸えるツツジみたいな花を回し吸いしたりしている。これがプロポーズになるなら困ったものだ。しかし私達はまだ幼気な子供だ。恋愛感情など毛ほども芽生えていない。これはノーカンだ。
 子供当番にタウカお手製ちまきの食べかけをあげたとき、なんとも言い難い表情で見られた理由が今わかった。
 私は知らぬ間にプロポーズをしてしまっていたらしい。
 しかし私は幼児なので、彼等にとっても意味をなさなかったはずだ。あれもノーカンになると思う。

「わかったよ、お父さん!」

 友人達が食べかけを分け合いっこするのを止める気は無いが、慣習を知った私は今後気を付けていこうと思う。
 友人達の恋の当て馬になるのは本望だが、わざわざ黒歴史を作りまくらなくても、数多あるBL本を嗜んだ私だ。そんな自虐行為をしなくても立派な当て馬になれるはずだ。
 大きく頷いて見せた私に、タウカは真剣な顔で続けた。

「それから! 絶対人前で裸を見せるんじゃないぞ!」

 ギクリとした。
 男性らしからぬ私の体を晒してはいけないことはわかっていたが、既に上半身はイレインス達に見られてしまっている。
 タウカの言い付けを破ってしまっているのだが、大事な下半身はまだ誰にも見られていない。それならばギリギリセーフのはずだ。これもノーカンに入るだろう。

「わ、わかってるよ!」

 何度も頷く私を見て、タウカはようやく安堵したように表情を緩め、手を放した。

「良かったな、ティカは物わかりが良くて」

 トールは当然のように私の隣の丸太風椅子に腰掛けた。タウカも何も言わず、自然な仕草でトールの前に黄魚の塩煮をよそった木のお椀と白いフォークを置いた。四本爪のフォークは獣の白い骨製だ。幼児の私が二爪木製フォークを置かれていることから、骨のそれはお客様用のイイヤツなのだと思われた。
 トールはタウカに短く礼を言うと、黄魚を一口食べて微笑んだ。

「うちのマールは利かん坊だったからな。やめろと注意すると余計にやるんで大変だった。成長したらそれを皆にからかわれてなあ、大喧嘩するやら泣かされるやら泣かすやら……ことを収めようと親同士出しゃばったが反抗期突入されて……本当に大変だった」

 意外な事実を知ってしまった。
 トールの息子、マールは現在理知的な肉っ子大好きベータなのに。黒歴史がてんこ盛りな少年時代を過ごしていたらしい。
 幼馴染への過去の振る舞いがプロポーズだったことに気付き、ギクシャクしてしまった二人がお互いを意識しまくった果てに恋に落ち、本当のプロポーズをするという甘酸っぱいBLシチュエーションは、マールが体現してくれそうな気がした。
 これは……マールのおはようからお休みまでを観察しなければならないという神のお告げでは?
 ふとBL神の意志に触れた気がして、私はキクイモと茸にフォークを突き刺した格好で止まる。

「そうだったのか、あのマールがなあ」

「タウカ、お前はティカが恥ずかしい思いをしないで済むように気を付けてやれよ」

「ああ。ありがとう、トール。でもまあ、そんな大騒動も今は楽しい思い出なんだろ? だったら俺もティカの好きにさせてやるかなあ。どうせ大きくなったら自然と止めるんだろうし、友達と分け合う思いやりの心と協調性は村にとっても良い事だし」

 そんな事を言ってタウカが笑うと、トールは大きなため息を吐いた。

「俺も、そう思っていたんだがな……」

 苦く、眉間に深い皺を作りながらトールは苦笑し、話し出した。
 



 

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