マイニング・ソルジャー

立花 Yuu

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section 1

No.024

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 見た瞬間、また「うわっ」と声が出そうになった。
 長身の着流し姿に草履、手足には鱗、藍白の肌に瑠璃色の髪を肩に落としている。とにかく青一色の竜アバターだ。顔まで青白いぞ、こいつ。よくよく見るつもりはなかったが、よく見ると顔にも鱗模様があった。
 うわっ、すごい再現率。
「こいつは、ギャシュリー。少し前から、俺の協力者だ。未来都市で改造銃や改造バイクを売ってる。カスタマイザー兼情報屋ってところかな。あーそうそう、ギャシュリー聞いて驚け。ヴェインの改造バイクに、飛行型の変形スキルが出現したぞ」
 もう、いきなりそれ言うのか、と驚嘆させられた。
 やはり他にも仲間がいた。どこの誰と付き合おうが、一向に構わないのだが、よく分からない靄が視界に掛かった。場の雰囲気に違和感を覚えて、ヴェインの隣に孤独が居座った。
 しかもレインツリーが、知らないアバターの名を口にした途端、急に知らない人間に見えた。溝が生まれて、見る見る内に溝は深く広がっていく。焦れば焦るほど溝は広がっていく。
 レインツリーに他に仲間がいたってだけじゃないか、何をそんなに焦ってんだ俺は。
 疎外感? 自営業が長くて途端に人恋しくなったか、イヤ違う、レインツリーの思惑にはめられた?
 蟀谷が痛いぐらい冷え切っていく。
「ミュータントスキルか――それは、凄いな」
 恐ろしく棒読みだった。無機質に張り付けた笑顔に、目は笑っていない。寧ろ、敵意さえ感じた。
 こんな窮屈な違和感、気のせいだと信じたい。
「君が、ヴェインか。レインツリーから話は聞いていた。これからは、よろしくな・・・・・・・・・・・。にしても随分と可愛いアバターだね。君、男だよね?」
 猫アバターに加え女兵士のスタイルを見たギャシュリーは、頭から足先まで物珍しそうにヴェインを観察していた。観察しながら、アバターの奥から放たれる視線は冷たかった。
「おい、レインツリー。俺、聞いてないけど」
 ますます視界の靄が濃くなった。蟀谷がジンジンする。
 人選は俺に任せろとは言っていたが、ギャシュリーからもレインツリーと同類らしき異様な空気を感じた。
 部外者を倦厭けんえんしているわけではない。ただ、ギャシュリーとはうまくやっていけそうにないと感じた。
 建物を出るレインツリーについて行くと、周りからの視線に気付いて、ヴェインは「何だよ」と威嚇するように視線だけをきょろきょろさせた。
 虫の居所が悪い、その上この視線ってなんだよ、イライラすーー
「あれ、レインツリーだぜ。二週間前は、まだランク外だったよな」
「さすが、レインツリーよね。復活して、もうあんな上位にいるなんて」
「一緒にいる奴、カスタマイザーのギャシュリーだぜ」
「じゃあ、ヴェインって女? ウソだろ?」
 野次馬たちは声を落としながらも、ばっちり聞き取れる音量で口々に話していた。
 ていうか、ギャシュリーも有名人かよ。ますます、この場から逃げたくなった。
 なんだよこれ、こんなのきーてねぇよ。
「今日、言おうと思ってさ。ヴェインも気に入ると思う」
 レインツリーはパンと手の甲で、ギャシュリーの腹を景気良く軽く叩いた。
 俺も気に入るって、どうしてそんな簡単に断言できるんだよ、お前は俺の何を知ってるんだよ。
「おい、ヴェイン?」
 目の前でレインツリーが手を振って、呆然としていたヴェインの目を覚まさせた。
「戦闘機に乗れば分かるが、仮想空間であっても重力加速度つまりGがある。現実世界と違って、Gが掛かった時は操縦が効かなくなったり、酷い時は空中に放り出される」
 素人に説明るすようにギェシュリーが飄々と言葉を並べた。
「でも、きっと、それだって、耐Gスキルがあるんだろ? 経験値を積めば、Gも軽減されるように」
 そんなこと、想定済みだ。今更、何を考えさせたいんだ。
 ギャシュリーの体温のない態度に、無暗に翻弄されそうになる、絶対に越えられない壁があるような威圧感だ。
「さすが、ヴェイン。そうなんだけど、耐Gスキルは、経験値を上げるに最も難易度の高いスキルで有名だ。完全修得までに、とんでもなく時間を要する。そこでギャシュリーが、容易にスキルアップさせるツールを戦闘機に組み込む技術を持ってる」
「つまり、短時間で耐Gスキルを修得することができるのか?」
 レインツリーがわざとらしく上機嫌な態度を見せる。
 後ろに立つギャシュリーはどの吹く風のように、表情を変えない。二人の付き合いは、ヴェインが思っている以上に長そうだ。しかも想像以上にギャシュリーは喰えない奴だ。
「ちょっと待てよ。それって――、チート・ツールだろ」
 大声を出す前に声を噛み殺した。
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