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No.025
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大声を出す前に声を噛み殺した。
レインツリーがギャシュリーに踊らされているのか、ギャシュリーがレインツリーに使われているのか分からない。どっちにしろ、二人は結託している。
「そこまで理解が早いとは思わなかったよ。ヴェインの戦闘機に組み込む場合は、現実世界の端末からでないと難しいんじゃないかな。なあ、ギャシュリー」
平然と語るレインツリーは、首だけを後ろに傾けた。
「そうだな。できないことはない」
「でも、ユグドの不正防止プログラムが働いてるだろ。もし、違法行為で抹消されたら、二度とユグドには登録できないぞ」
その時、ふとギャシュリーが嘲笑を交えて鼻で笑った。
「ド素人の科白が、そんなにおかしかったか」
堪忍袋の緒が限界にまで来たヴェインは、心の底から睨み付けた。
「色々と裏ルートがあってね。未来都市で造れば見つかりにくい、とか」
もうこれ以上は話しても意味がないと言いたげに、言葉を止めた。
「俺は、違法改造ツールを使ってまで、強くなろうとは思わない」
「ヴェイン」と真摯に名を言ったレインツリーが一歩、ヴェインに近寄った。真正面まで近づいて来たが、ヴェインは下がる術も忘れていた。
顎を掴まれ、視界が勝手に揺れるほど強く持ち上げられた。
「俺たちよりランクの高い奴らは、誰かしら、ギャシュリーのチート・ツールを使っている。ギャシュリー以外のチート・ツールもあるが、結局のところ、それがないと『倒せないエイリアン』と対抗するすべはない」
間近まで迫ったレインツリーの琥珀色の瞳に、ヴェインが映り込んでいた。
ここまで精巧に作られているんだなと、こんな時に、ユグドのプログラムに感心した。
だからこそ、いつまでもチート・ツールが通用するとは思えない。リスクを追って不正をしなくとも、『倒せないエイリアン』を根元から駆逐する手段は、あるはずだ。
「俺は、お前とのパーティを解消する」
言いながらヴェインはレインツリーに解消の申請を送りつけた。向こうでは【YES・NO】の表示が出ているはずだ。
「ヴェインーー」
眉間に深い皺が刻まれた。
「ここまで仲間でいてくれて、色々と教えてくれて、本当に感謝している。これからは、別々だ。敵対は、したくない」
「俺のギルドに入れ。お前がギルド・マスターになればいい。汚い仕事は、俺がやる。武器も俺が集める。お前は皆を率いる道標になればいい。そのために、ここまで強くしたんだ」
顎を掴んでいるレインツリーの手首を掴んで、引き離そうとする。だが、視界がぐらぐら揺れるだけだった。
「俺は、お前の兵隊じゃねえ! 弟子でもねえ、奴隷でもねえ! 友達だと思ってた」
目尻が熱くなった。アバターも涙は流すのだろうか。
全力を振り絞って、レインツリーの腕を払いどけた。
「ダチでなくなる前に、早く【YES】をタッチしろ」
何かを言いたそうなレインツリーだったが、最後は軽く笑みを零して、【YES】をタッチした。
「ありがとう。どこかで会ったら、声を掛けるよ」
レインツリーには絶対に消えてほしくないから。
立ち去る前に、「やられるんじゃねえぞ」と声に出しては言わなかった。
レインツリーがギャシュリーに踊らされているのか、ギャシュリーがレインツリーに使われているのか分からない。どっちにしろ、二人は結託している。
「そこまで理解が早いとは思わなかったよ。ヴェインの戦闘機に組み込む場合は、現実世界の端末からでないと難しいんじゃないかな。なあ、ギャシュリー」
平然と語るレインツリーは、首だけを後ろに傾けた。
「そうだな。できないことはない」
「でも、ユグドの不正防止プログラムが働いてるだろ。もし、違法行為で抹消されたら、二度とユグドには登録できないぞ」
その時、ふとギャシュリーが嘲笑を交えて鼻で笑った。
「ド素人の科白が、そんなにおかしかったか」
堪忍袋の緒が限界にまで来たヴェインは、心の底から睨み付けた。
「色々と裏ルートがあってね。未来都市で造れば見つかりにくい、とか」
もうこれ以上は話しても意味がないと言いたげに、言葉を止めた。
「俺は、違法改造ツールを使ってまで、強くなろうとは思わない」
「ヴェイン」と真摯に名を言ったレインツリーが一歩、ヴェインに近寄った。真正面まで近づいて来たが、ヴェインは下がる術も忘れていた。
顎を掴まれ、視界が勝手に揺れるほど強く持ち上げられた。
「俺たちよりランクの高い奴らは、誰かしら、ギャシュリーのチート・ツールを使っている。ギャシュリー以外のチート・ツールもあるが、結局のところ、それがないと『倒せないエイリアン』と対抗するすべはない」
間近まで迫ったレインツリーの琥珀色の瞳に、ヴェインが映り込んでいた。
ここまで精巧に作られているんだなと、こんな時に、ユグドのプログラムに感心した。
だからこそ、いつまでもチート・ツールが通用するとは思えない。リスクを追って不正をしなくとも、『倒せないエイリアン』を根元から駆逐する手段は、あるはずだ。
「俺は、お前とのパーティを解消する」
言いながらヴェインはレインツリーに解消の申請を送りつけた。向こうでは【YES・NO】の表示が出ているはずだ。
「ヴェインーー」
眉間に深い皺が刻まれた。
「ここまで仲間でいてくれて、色々と教えてくれて、本当に感謝している。これからは、別々だ。敵対は、したくない」
「俺のギルドに入れ。お前がギルド・マスターになればいい。汚い仕事は、俺がやる。武器も俺が集める。お前は皆を率いる道標になればいい。そのために、ここまで強くしたんだ」
顎を掴んでいるレインツリーの手首を掴んで、引き離そうとする。だが、視界がぐらぐら揺れるだけだった。
「俺は、お前の兵隊じゃねえ! 弟子でもねえ、奴隷でもねえ! 友達だと思ってた」
目尻が熱くなった。アバターも涙は流すのだろうか。
全力を振り絞って、レインツリーの腕を払いどけた。
「ダチでなくなる前に、早く【YES】をタッチしろ」
何かを言いたそうなレインツリーだったが、最後は軽く笑みを零して、【YES】をタッチした。
「ありがとう。どこかで会ったら、声を掛けるよ」
レインツリーには絶対に消えてほしくないから。
立ち去る前に、「やられるんじゃねえぞ」と声に出しては言わなかった。
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