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第6話
しおりを挟む‥‥うぅ、いてて。
うつ伏せのまま寝ていたせいか腰が痛む。
それに風呂も入らず‥‥。
とりあえずシャワーで汗を流すか。
俺はまるで今までもずっとこの部屋に住んでいたかのように、自然に風呂に向い、シャワーを浴びる。
それにしても妙に落ち着くんだよな。
俺の部屋のようで違うはずなのに。
熱いシャワーを浴びながら、俺は考えるのを少しやめた。
恐らくこの後も驚く事が沢山ある、しかしその度に戸惑っていては身が持たない。
ひとまず今の目標は死なない事としよう。
生きていればなんとかなる。
風呂を出ると、体から湯気が上がる程温まっていた俺は心なしか頭もスッキリしていた。
開き直れば気は楽になるもんだな。
そんな事を呑気に思っていたが時計を見て思い出した。
仕事だ。いくら俺がスッキリしようが時間は止まってはくれない。
急いで支度をし、アパートを出る。
外はまだ薄暗いが、徐々に明るくなるんだもんなぁ、不思議だ。
昨日の今日で慣れるはずもないが、幸いにも俺は方向音痴ではない為、割とスムーズに現場に向かう事が出来た。
薄暗い時は人とあまりすれ違わない、殆どの人は明るくなってから出勤なのか。
地下では出勤の時間は会社によってばらつきがある為ラッシュなるものもない。一応学校は時間が決まっているから子供の頃はそれに合わせて生活していただけで社会人になるとそんなの関係ない。
大勢の人が一斉に動き出すのに何か意味があるのか、俺には理解できない。
そんな事を考えながらも今日は遅刻せずに来れたからトンさんに怒られることもないだろうと、高を括っていた。
しかし、待てど暮らせど誰も来ない。
おかしい。昨日の現場に間違いないし時間通りに来たはずなのに。
気付けば一時間が過ぎようとしていた。
もしかして、人が消えた?
俺はありえない事ばかり起きていたせいか、疑心暗鬼になっていた。
外はすっかり明るくなっているのに、あの昨日のような慌ただしい空気がない。
痺れを切らした俺は現場を出てみると、一応人はいるようだ。
しかし、一人、二人と少なく、昨日と違い急いでる様子もなければ、今から出勤という感じでもなさそうだ。
俺は思い切って近くを歩いていた若そうな男性に話しかけて見る事にした。
「あのぅ!」
「は?」
男性は少しだるそうな様子だった。
「ちょっと聞きたいんですけど、なんで今日はラッシュがないんですか?」
「ラッシュ?あぁ、通勤ラッシュのこと?今日は土曜だからじゃね?」
「土曜だから?」
「今日は土曜だよ、もしかしておっさん朝まで飲んで曜日感覚なくなってんじゃないの?」
「飲んでません。じゃあ土曜はみんな出勤しないんですか?」
「まぁ、殆どの会社は土日休みだからね」
それで現場に誰もこなかったんだ。
「ありがとうございます。ちなみにあなたはどこに行くんですか?」
「俺は昨日遊んでて終電逃したから今始発で帰ってきたとこ。この時間歩いてるのはだいたいそんなやつらだよ」
「そ、そうなんですか」
終電、始発。これは多分電車の事だろう。
昨日も歩いている時に見かけた。それはそれは大きな音でゴゴゴゴゴーと走っていた。
そうだ、休みならば丁度いい。
人が少ないうちに探索でもしてみるか。
俺はゆっくりと地上を見て回る事にした。
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