地女に恋した俺は夢を見ていた

9minute

文字の大きさ
6 / 32

第6話

しおりを挟む

 ‥‥うぅ、いてて。

 うつ伏せのまま寝ていたせいか腰が痛む。

 それに風呂も入らず‥‥。

 とりあえずシャワーで汗を流すか。

 俺はまるで今までもずっとこの部屋に住んでいたかのように、自然に風呂に向い、シャワーを浴びる。

 それにしても妙に落ち着くんだよな。
 俺の部屋のようで違うはずなのに。

 熱いシャワーを浴びながら、俺は考えるのを少しやめた。

 恐らくこの後も驚く事が沢山ある、しかしその度に戸惑っていては身が持たない。

 ひとまず今の目標は死なない事としよう。

 生きていればなんとかなる。

 風呂を出ると、体から湯気が上がる程温まっていた俺は心なしか頭もスッキリしていた。

 開き直れば気は楽になるもんだな。

 そんな事を呑気に思っていたが時計を見て思い出した。

 仕事だ。いくら俺がスッキリしようが時間は止まってはくれない。

 急いで支度をし、アパートを出る。

 外はまだ薄暗いが、徐々に明るくなるんだもんなぁ、不思議だ。

 昨日の今日で慣れるはずもないが、幸いにも俺は方向音痴ではない為、割とスムーズに現場に向かう事が出来た。

 薄暗い時は人とあまりすれ違わない、殆どの人は明るくなってから出勤なのか。

 地下では出勤の時間は会社によってばらつきがある為ラッシュなるものもない。一応学校は時間が決まっているから子供の頃はそれに合わせて生活していただけで社会人になるとそんなの関係ない。

 大勢の人が一斉に動き出すのに何か意味があるのか、俺には理解できない。

 そんな事を考えながらも今日は遅刻せずに来れたからトンさんに怒られることもないだろうと、高を括っていた。

 しかし、待てど暮らせど誰も来ない。

 おかしい。昨日の現場に間違いないし時間通りに来たはずなのに。

 気付けば一時間が過ぎようとしていた。

 もしかして、人が消えた?
 俺はありえない事ばかり起きていたせいか、疑心暗鬼になっていた。

 外はすっかり明るくなっているのに、あの昨日のような慌ただしい空気がない。

 痺れを切らした俺は現場を出てみると、一応人はいるようだ。

 しかし、一人、二人と少なく、昨日と違い急いでる様子もなければ、今から出勤という感じでもなさそうだ。

 俺は思い切って近くを歩いていた若そうな男性に話しかけて見る事にした。


「あのぅ!」

「は?」

 男性は少しだるそうな様子だった。

「ちょっと聞きたいんですけど、なんで今日はラッシュがないんですか?」

「ラッシュ?あぁ、通勤ラッシュのこと?今日は土曜だからじゃね?」

「土曜だから?」

「今日は土曜だよ、もしかしておっさん朝まで飲んで曜日感覚なくなってんじゃないの?」

「飲んでません。じゃあ土曜はみんな出勤しないんですか?」

「まぁ、殆どの会社は土日休みだからね」

 それで現場に誰もこなかったんだ。
 
「ありがとうございます。ちなみにあなたはどこに行くんですか?」

「俺は昨日遊んでて終電逃したから今始発で帰ってきたとこ。この時間歩いてるのはだいたいそんなやつらだよ」

「そ、そうなんですか」

 終電、始発。これは多分電車の事だろう。

 昨日も歩いている時に見かけた。それはそれは大きな音でゴゴゴゴゴーと走っていた。

 そうだ、休みならば丁度いい。
 人が少ないうちに探索でもしてみるか。

 俺はゆっくりと地上を見て回る事にした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...