地女に恋した俺は夢を見ていた

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第8話

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 突然美女にデートに誘われた俺。

 並んで歩くには釣り合わなさすぎて恥ずかしい。


「あ、お、お名前って聞いてもいいですか?」

 そうだ、名前ぐらいは聞いておかないと話にならない。

「カエって言います」

「カエさんですか。俺はアニって言います」

「アニさん、いい名前ですね」

 そう言って微笑むカエさん。

 またしてもつられてこっちまで頬が緩む。

 俺とカエさんはしばらく散歩をする事にした。

 デートってこうやって歩くだけなのか。
 
 俺は昔の事を思い出していた。


 初恋は高校一年の時だった。

 クラスでもムードメーカー的な存在だった子に恋をしていた俺は、その時の俺は、普通に告白とか出来ていた。

 もちろん玉砕したが、それでも挫けず次の恋に向かった。自分では割りと周りに馴染んでいると思っていたが、ある時告白した子に言われた。


 "アニ君ってナルシストっぽくて苦手。それに浮いてるよ?"


 そう、俺は勉強も出来て運動もそこそこ出来ていたが故に自信があったんだと思う。しかし、それが周りから見ればナルシストに見えていたらしい。

 結局高校では彼女が出来る事はなかった。

 初めて彼女が出来たのは大学に通い出してからすぐの事だった。

 サークルで知り合った同じ歳のその子はメガネをかけてとても真面目そうな、大人しそうな雰囲気がしていた。

 しかしイメージとは裏腹に、俺にとてもぐいぐい迫ってきて勢いで付き合う事になったのだ。

 それでも初めての彼女に浮かれていた俺はそのまま初体験をする事になる。

 結局後から知った話だが、その子は結構な肉食女子で大人しそうな男を見つけると誘っていたらしい。

 という事は付き合っていたと思っていたのは俺だけで、向こうからしたらただの遊びだったとも考えられる。

 しかし俺にとってはとても刺激的で、そして本物の男になれたと実感出来た瞬間でもあった。

 それによく考えてみればデートらしい事もした覚えがない。

 いわばこれが初めてのデートとも言える。

 
「アニさん何思い詰めてるんですか?」

「あっ、ちょっと昔の事を思い出してて‥‥」

「苦い思い出でもあったんですか?」

「いや、俺の人生って薄いなぁって思って」

「薄い?」

「あ、なんでもないです!」

 せっかくのデートなのに何言ってんだ俺。

「薄いならこれから濃くすればいいじゃないですか」

「え?」

「私がアニさんの人生、干渉していいですか?」

「カエさんが?俺の人生に立ち入ってくれるんですか?」

 こんな綺麗な顔でそんな事言われると本気で好きになってしまう。


 いや‥‥会った瞬間から俺はカエさんの虜になっていたに違いない。


「でもまだお互いの事よく知りませんね、今日は色々アニさんの事教えて下さい」


 カエさんは本当に俺のこと‥‥。


「俺なんかでよかったら仲良くして下さい!」

「もちろんですよ!」


 まさか本当に地上で女性とお近づきになれるとは‥‥トンさんに感謝しなければ。


 
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