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第10話
しおりを挟む地上に来て今日で三日目だ。
日曜日、仕事は休みと昨日聞いたから今日は何して過ごそうか。
俺は布団に転んだまま天井を見つめていた。当たり前だがする事もなく、お腹も減っていた。
カエさんと別れた後俺はまたコンビニに寄っておにぎりを二つ買って帰り夜に食べた。
飲み物は水道水を飲んでいるが、地下に比べると結構まずくて驚いていた。
そういえば給料日はいつなんだ?
このまま給料がもらえないとなるといつか飢え死にする。
しばらくは限界までお金を使わないようにしなければ。
目標の死なないが達成出来ない。
ふと机に目を向けると、昨日カエさんにもらったスイッチが目に入った。カエさんに会えれば空腹もまぎれるかも。
試しに押して見るか。
スイッチを手に取りボタンを押し込む。
カチッと音がする。
しかし、何も起こらない。
もしかしてからかわれた?
いかにもおもちゃっぽいスイッチだ。
そんな機能付いているわけないか。
冷静に考えれば分かる事だが、昨日の俺は浮かれていた為そんな当たり前の事さえ気づかなかった。
俺はスイッチをその辺にぽいっとし、いつのまにか眠っていた‥‥。
ふぁ~。
大きなあくびと共に目が覚めた。
どのくらい眠っていたんだろう。
相変わらずの天井、今日はずっとこのままごろごろ過ごすのかぁ。
今何時だ?
俺が時計を見ようと横を向くと
「うわっ!!」
一瞬心臓が止まるかと思った。
何故ならそこにはカエさんがいたのだ。
驚き過ぎて言葉が詰まっていると、カエさんが俺に近づき言った。
「推しましたよね?」
えっ、もしかして押したってスイッチの事か?
「あ、スイッチ‥‥の事ですか?」
「そうですよ、私に会いたくなったんじゃないんですか?」
「え、あ、あのぉ‥‥そうです?」
状況が飲み込めない。
なんでうちに?
それにどうやって入った?
俺が考えているとカエさんは言った。
「私、男の人の部屋に呼ばれるのって初めてで。こうゆう時って料理とかするってドラマで見た事あったからとりあえず買い物して来たんですけど、キッチン借りてもいいですか?」
料理?
俺は無意識に首を縦に振っていた。
「じゃあキッチン借りますね!」
満面の笑みで立ち上がりキッチンに向かうカエさん。
これは‥‥夢??
しばらく布団の上であぐらを組んだままキッチンに立つカエさんを見ていた。
すぐにトントントンという音がした。
何を作ってるんだろう。
地上での手料理とはどんな物なのか。
やけに時間がかかっている。
が、不思議と退屈ではない。
何故ならカエさんをずっと見ていられるからだ。
色んな音や匂い、俺はワクワクしていた。
「もう出来ますから~」
「はい」
まるで餌を待っているペットのような気分だった。
カエさんがそう言ってからほんの数分で料理が運ばれてきた。
「おぉ~」
俺は思わず言った。
「お口に合うか分からないんですけど」
「じゃあ、いただきます」
俺は腹ペコだった為、カエさんの作った料理にがっついた。
が、‥‥ん?!
なんだこの食感。
すごく硬くてまるで岩みたいだ。
味は‥‥苦い。
「‥‥どうですか?」
カエさんは少し不安そうな顔で聞いてきた。
「と、とっても美味しいですよ!」
「よかった~、ハンバーグなら嫌いな人いないと思って、作った事なかったけど挑戦してみたんです!」
カエさんの顔がパァッと明るくなった。
はんばーぐ、地上では定番の料理なんだな。俺の口には少し合わないと思った。
しかし、カエさんがせっかく作ってくれた物、残すわけにはいかないと思い頑張って完食した。
「ごちそうさまでした」
「全部食べてくれたんですね!嬉しいです!」
「喜んでもらえてよかったです」
無事お腹は満たされた、そして頭もちゃんと回ってきた俺は聞いてみる事にした。
「あのぉ、一つ聞いていいですか?」
「はい」
「うちにはどうやって‥‥」
カエさんは少し考えてこう答えた。
「あぁ、スイッチですよ」
「スイッチ?スイッチってこれですか?」
「はい。押したら来るって言ったじゃないですか」
「言ってたけど、本当に来るとは思ってなくて。それに来るって言っても瞬間移動かなんかですか?部屋の鍵も閉まってるしどうやって入ったんですか?」
「ふふっ。それは秘密ですよ」
「秘密って‥‥」
「言っちゃったらもう会えないかもですよ?それでもいいんですか?」
「それは嫌だけど‥‥」
「細かい事は気にしない気にしない」
気にしないって言われても‥‥。
このスイッチ何?!
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