地女に恋した俺は夢を見ていた

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第13話

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 カチッ。

 スイッチを押すのはこれで二回目だ。


 しばらくすると、

 ガタガタッ。

 何やらトイレから音がする。

 と思っていたらカエさんがトイレから出てきた。

「あっ!!」

 思わず驚いてしまった。

「アニさんこんにちは。昨日会ったばかりなのにもう会いたくなったんですか?」

 カエさんは微笑みながら近づいてきた。

 本当にすぐ現れた事に俺は感激していた。

「あ、会いたいのもそうですけど聞きたい事があって」

「とりあえず横、座っていいですか?」

「あ、どうぞ」

 カエさんが俺の横にすっと座る。

 ん?何か甘い香りがする、なんだろ。

「で、聞きたい事ってなんですか?」

「えっと‥‥スイッチの事なんですけど」

「はい、それがなにか?」

「知り合いから聞いたんですけど、未経験の女性に配られてるんですか?」

「あぁ、アニさん知らなかったからテレビとか見ない人なんだなぁって思ってたんですけど、聞いちゃったんですね」

「本当なんだ」

「昨日言ったじゃないですか、未経験だって。私が嘘ついてると思ってたんですか?」

「違いますよ」

「じゃあがっかりしました?」

「がっかりだなんてそんな!ただ‥‥心配なんですよ」

「‥‥心配?」

「聞いた話だとスイッチ保持者が閲覧出来るらしいじゃないですか。困った事あったらいつでも俺の事頼って下さいね」

「ふふっ。アニさんって理性とか保てる人なんですね」

「当たり前じゃないですか!俺をそんな目で見てたんですか!」

「違いますよ、私の思った通りの人ですよ。だからこそ、アニさんがいいんです」

「だから、その話はもう少し良く考えた方が‥‥」

「私が自分で決めたんです!」


 そう言われても‥‥不覚にも俺は先ほど風呂でカエさんを想像しながら済ませてしまった。

 出来ない事はない、ただ俺ももう長いこと女性に触れてない。

 カエさんを満足させれるだけのスキルが‥‥。

「分かりました。でもお互いの事もう少しよく知ってからですよ」

「もちろん、分かってますよ。ところでアニさんはスマホ買わないんですか?」

「それが、店の場所が分からなくて」

「なら私案内しますよ!一緒に行きましょう!」

「これからですか?」

「もちろんです」


 カエさんについてきてもらい買いに行く事に。

 しかし何故か契約が出来ない。

「おかしいですね、本当にこの職場で合ってますか?」

「合ってると思うんですけど」

 どうやら職場を入力する所で進まなくなっているようだ。

「何回してもエラーが出ますね」

「そうですか。登録出来ないと契約は出来ないですか?」

「そうなりますね、一応審査がいるので」

「分かりました。じゃあ今回は諦めます」

「申し訳ございません」

 店員さんが申し訳なさそうに頭を下げている。

「なんで出来なかったんでしょうか」

 カエさんも不思議そうな顔をしていたが、俺には心当たりがある。
 
 それは俺が地上の人間ではないという事だ。おそらく、いや、絶対そうだ。

 この地上では俺の存在自体曖昧なのだろう。

 俺ががっかりしているようにでも見えたのか、カエさんはフォローするように言ってくれた。

「まぁでもスイッチさえあれば会いたい時に会えるじゃないですか!」


 なんて優しい‥‥。

「カエさんは前向きですね」

「落ち込んでても仕方ないですし。それよりもう時間も遅いので今日は帰りますね」

「今日は突然呼び出してすみませんでした」

「私はいつでも呼んでもらえたら嬉しいですよ。だから遠慮せずにどんどん押して下さいね」

「は、はい」

 カエさんとは街中で解散した。

 俺もなんだか疲れたなぁ。

 いざ地上に来て地女にも出会えたのに一筋縄ではいかなそうだな。
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