先生と私とゾンビ

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第七話

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 シャッターを叩く音は続いている。

「ゾンビですかね?」

「ゾンビが助けを呼んでいるのかな、開けてみる?」

「死にたいんですか?」

「死ぬ前にする事があるから今はまだ死にたくないよ、でも僕にも好奇心はあるよ」

「私は教室で待ってますよ」

 先生はまたバリケードを一つずつ下ろし、シャッターの所までそっと向かう。
 私は先生の後を追いかけた。

「どうしたの?」

「トイレ行きたいです」

「えっと、どっち?」

「どっちとは?」

「生理現象の方のトイレか、僕の事を考えながらのトイレか‥‥」

「あっ、生理現象の方です」

 トイレは階段の横にある為、先生がトイレの前で見張ってくれる事になった。


「ところで君、名前は?」

「朱理です」

「かわいい名前だね」

「そうですよね」

 トイレを済まし、私だけ教室に戻る。
 教室の隙間から顔だけを覗かして先生を見守る。


 先生は本当にシャッターを開けるつもりだ。ガラガラと音を立てながら開けると、誰かを招き入れ、またシャッターを閉めて戻ってくる先生。

 教室に先生と入ってきたのはゾンビだった。

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