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本来の自分
しおりを挟む目を覚ますとそこは‥‥
自分の周りが慌ただしい。
あぁ、死ななかったんだ。
しばらく目だけを開けている、体の感覚はない。喋りたいのに喋れない。
お母さんが泣いてる。
こんな時でも考えるのがゆいちゃんの事だ。結局分からなかったな。
その後の経過の中で先生が言っていた。僕は脊髄の損傷が酷く、この先体が動く事は望めないそう。
辛うじて話は出来た。
僕はゆいちゃんに会いたいとお母さんに頼んでみた。
お母さんはゆいちゃんに連絡を取ってくれたみたいだが、実際に来たのはたいちくん一人だった。
たいちくんは僕の姿を見て驚いていた。
「かずき、大丈夫か」
「うん。それよりゆいちゃんは?」
「その事なんだけど‥‥」
たいちくんは気まずそうに話し出した。
「‥‥ゆいはこれない」
「なんで?」
「それは‥‥」
「言って」
「お前が事故した時、俺も一緒にいたんだ」
「そうなんだ」
ゆいちゃんしか見えなかったけど、たいちくんもいたんだ。
「ゆい、事故を目撃したショックで倒れた」
「えっ?!」
「次の日には目を覚ましたんだけど。‥‥お前の事覚えてない」
僕は言葉を失った。
「ごめん。思い出せるように必死に色んな事教えたんだけど、お前の名前だすと頭かかえて苦しむんだよ、だからそれ以上は言えなくて」
「‥‥そんな」
「俺がゆいの事呼び出したりなんかしたから」
「ねぇ、ゆいちゃん、何て返事したの」
「え?」
「たいちくん、告白したんでしょ」
「あぁ、ゆいはお前の事が好きだから俺とは付き合えないって振られたよ」
「そっか‥‥よかった」
僕は目から勝手に涙が溢れた。
「俺、ゆいが思い出せるように頑張るよ。だからそれまで待ってくれ」
たいちくんも泣いている。
「泣かないで、僕は最低だから」
「お前は最低なんかじゃないよ!」
「最低なんだよ‥‥こうなったのも全部自分のせいだから」
「また来るから。次はゆいを連れて来る、絶対!」
「たいちくんって中身までイケメンなんだね」
「何言ってんだよ、必ず連れてくるから」
「ありがとう」
しかし、たいちくんがゆいちゃんを連れて来る事はなかった。
そして、お母さんは昔の事を僕に謝った。
こんな事になるんだったらかずきの好きなようにさせてあげればよかった。あの子の事が好きなら一緒に居られるようにしてあげればよかった。後悔してもしきれないと。ずっと泣いていた。
もし、僕があそこで死ななかったらゆいちゃんとあのまま幸せに暮らしていたんだろうな。
でもたいちくんにもゆいちゃんと過ごした時間があって、僕には分からない苦労や葛藤があったと思うと、これでよかったんだよね。
入れ替われたお陰で一生分の思い出が出来たし、逆に感謝しないと。
だってこっちが本当の人生だったから。
でも一つわがままが言えるなら、ゆいちゃんの中に僕の記憶が一瞬でも残ってくれてたらいいな。
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