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第二話
しおりを挟む翌日私は昨日の事が気になってあまり眠れなかった。授業中も少し居眠りなんかして。
「もも!もうお昼だよ、お弁当食べようよ」
私がよだれをふきながら顔を上げると同じクラスのゆいが目の前でお弁当箱を持って座っていた。
「う~ん!まだ眠たいよぉ」
「バイト大変なの?」
「まあね。色々あるし」
私とゆいが話をしていると教室の入り口からゆいの彼氏が呼んでいる。
「忘れてた!今日お昼たいちと食べる約束してたんだったぁ!ごめんもも!あとでね!」
「はいはい、いってらっしゃ~い」
学校も店もカップルばっかりでなんか自分が可哀想に思えてきた。
その日も学校が終わり真っ直ぐ店に向かう。
「おはようございます」
「おはよう。あれ?今日調子悪い?」
「少し寝不足気味で‥‥」
「毎日遅くまで手伝ってくれてるもんね。なんかごめんね」
「それは私がしたくてしてるので冬馬さんのせいじゃないですよ!」
「そっか、でも今日は早めに上がっていいよ」
「大丈夫です!若いんで!」
「ハハハッ!それもそうだね!」
冬馬さんと雑談してると、
昨日の子が店にやってきた。
「あっ、お客さん来たよ」
「はい!あ‥‥いらっしゃいませ」
内心またナンパされるのかなと思っていたが今日はどうやら友達と来ていたせいか昨日の事などまるでなかったかのように普通だった。
「ご注文伺います」
「えっとー、じゃあ昨日と同じので!」
「かしこまりました」
すると、友達がその子に向かって言った。
「昨日も来たのかよ」
「うん。これから毎日通うつもり」
えっ、今毎日通うって言った?もしかしてデートの事諦めてないのかな。
私は聞いてないフリをして商品を手渡した。
「お待たせしました」
その後友達も注文して二人で店内で食べていた。その光景を見て青春だなぁとか勝手に思ってた。
私にも一応青春らしい事はあった。
高一の時一目惚れした人に告白して付き合ったし、長くは続かなかったけど。
「本当、若いっていいね」
「冬馬さんもまだ若いじゃないですか」
「俺はさ、もうおじさんだよ」
「そんな事ないですって」
「ももちゃんがそう言うならそう思っておくよ」
冬馬さんは優しい笑顔で私を見つめる。
「顔になんか付いてますか‥‥?」
「うん。目と鼻と口がついてる」
「もー!何言ってるんですか!」
冬馬さんは冗談もよく言って私を笑わせてくれる。私たちが話をしていたからか席から視線を感じて見ると、その子がずーっと私の方を見ていた。
「なんかあの子ももちゃんの事さっきからずっと見てるよ?知り合い?」
「あっ、いや。知り合いではないです。昨日初めて店に来たお客さんです」
「そう」
その子と友達は食べ終わると店を出て行った。
「よし、今日はもう閉めようかな」
9時まで残り1分の所で閉店の準備を二人でして店の外で冬馬さんと分かれた。
今日はいつもの駅に向かわず隣の駅で電車に乗る為に歩いていた。一駅隣って言っても地味に遠い‥‥。朝から学校、その後バイトでその上この距離歩くのは流石に足にくるなぁ。歩く速度もどんどん遅くなりとぼとぼ歩いていると、車道の方から何やらクラクションを鳴らされた。
「ももちゃーん!」
「冬馬さん?」
そこには車を横付けして窓を開けた冬馬さんの姿が。
「こんな所で何してるの?駅はあっちでしょ?」
「あぁ。そうなんですけど‥‥」
「絶対何かあったでしょ。話しなさい」
いつもに増して真剣な顔の冬馬さんを前に私は正直に話す事にした。
そして、冬馬さんにこっぴどく怒られた。
「今日は俺が家まで送るから乗って」
「えっ、でも悪いですし‥‥」
「ももちゃん。真面目に」
「はい」
冬馬さんの圧に負けて渋々車に乗った。
最初後ろの席に乗ろうとドアを開けると荷物がどっさりあって乗れなかった為仕方なく助手席に乗る事に。
あー!なんか気まずい。早く家着かないかなぁ。私はそればっかり考えていた。でも冬馬さんの車初めて乗ったけどなんかいい匂いするし運転する姿って新鮮に見える‥‥‥って何私見惚れてんだろ。
「俺は怒ってるんだからね」
「はい。すみません」
冬馬さんは本当に不機嫌な感じでずっと無口だった。でも怒った顔もあまり見る事なかったせいか新鮮で何故かセクシーに感じた。
「ありがとうございました」
私はお礼を言い車を降りた。
車って楽ちんだなーなんて呑気だった。
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