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第二十一話
しおりを挟む翌日疲れた体と眠たい目を擦りながら学校に向かった。
私は教室に入るや否や机に伏せた。
「ももー、何かあったの?」
友達のゆいが私の机の前にしゃがんだ。
「あー、最近色々あってさぁ」
「彼氏と上手くいってないの?」
「ううん、上手くはいってるよ、上手くはいってるんだけど‥‥」
「けど?」
一瞬ゆいに言おうか迷った。しかし一人で考えるにも限界があった私は思い切って相談してみる事にした。
「ゆいってさ、店長見た事あるよね?」
「うん、何回か店には行った事あるからね。顔はぼんやりだけど。それがどうかしたの?」
「うん‥‥」
「まさかとは思うけどその店長が悩みの種?」
俯く私の顔をゆいが覗き込んだ。
「種ってゆうか‥‥」
「えっ、もしかして店長と?」
「‥‥うん」
「マジかぁ。でもなんでももが悩むの?」
思ったよりリアクションは薄かったが少し呆れ気味にも聞こえた。
「店長の事が好きになって、彼氏と別れようと思ってるんだけど中々言い出せなくて」
「まぁ言いにくいのは分かるけどさ、自分の気持ちがハッキリしてるなら早めに言ってあげた方が彼氏の為だよ」
「だよね。ゆいはずっとたいち一筋ですごいよね」
「そんな事ないよ。初恋はたいちじゃなかったし」
「そうなの?小さい頃からずっと一緒って感じだったからてっきり初恋もたいちだったのかと思ってた」
「初恋はね‥‥。って私の話は別にいいの!それより彼氏にちゃんと言うんだよ」
「分かってるよぉ」
「てか、あれは全部済ませてるんだよね?」
「彼氏と?」
「彼氏と?って事は店長とまで済ませちゃった?」
「‥‥はい」
「あーあ。それはアウトだね」
「本当自分を殴ってやりたいよ。でもゆいもその状況になったらきっと雰囲気に押されちゃうよ」
「私はまだなんだよね。だから悪いけどその気持ち分からないや」
「あ、なんかごめん」
「謝られるとなんかムカつくんだけど!そもそもたいちは私を女と思ってないような気がする」
「それはないでしょ、一応付き合ってるんだし」
「長くいすぎてそんな気も起こらないんだろうな」
「でも逆に言えば楽しみがまだ残ってるって事じゃん!羨ましいよ」
「はいはい。ありがとうね」
ゆいの事は本当に羨ましいと思っている。彼氏の事をあんな風に言っているけど、中学時代の事故の後遺症で朝起きれないゆいを毎朝起こしに行ってあげてるんだからそれはもう愛なのだ。
手を出さないのもきっと大事にされているだけだと思う。
私も体の関係なしに考えた時、柊生と冬馬さんどっちを選ぶだろうか。恐らく以前の私なら柊生を選ぶだろう。
でも今は違う。
あんな温もりを感じて、正常でいられるわけがない。
それに大人な冬馬さんとは逆に幼い柊生は行為も自分本位だ。幸い私は受け気質な為、最中は何も思わないが思い返してみると、自分の私欲を満たす為だけに私がいるのではないかと思わなくもない。
そう考えた時、やはり冬馬さんは私の事を本当に大事に思ってくれているのが伝わってくる。
冬馬さんに会いたい。
私は学校が終わると、時間的には少し早いが急いで店に向かった。
電車に揺られ、駅の改札を抜けると雨がパラパラと降っていた。学校を出た頃は降ってなかったのに。傘を持っていなかった私は途中で雨宿りをしながら走って店に向かった。
気温も低いうえに雨に濡れた体は冷え切っていた。
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