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第二十八話
しおりを挟む喧嘩なども特になく、冬馬さんと順調に過ごしていた。
3月中旬、私は高校を無事卒業した。
本当なら店を出す為に店舗を探したり計画を立てているはずだったが、思っていたより資金が十分に溜まっていない為、引き続きバイトを続けながら貯金をする事になった。
しかし卒業した事で生活はガラリと変わった。一番は開店の準備も手伝うようになった事だ。そうなると必然的に冬馬さんと居る時間が増え、家に帰る事が減っていた。
私は冬馬さんと同棲する為に両親に冬馬さんを紹介したりもした。
冬馬さんはしっかりしてるし、人当たりもいいせいか両親もすっかり気に入っていた。
同棲の許可ももらえ、荷物も比較的少なかった私はすぐに冬馬さんのアパートに転がり込む事に成功した。
私は持ってきた荷物をクローゼットにしまい、冬馬さんが入れてくれたお茶を一口飲んで言った。
「今日からよろしくお願いします」
「こちらこそ来てくれてありがとね」
そして合鍵を貰い、二人での生活に胸を膨らませていた。
「そう言えば来月はももの誕生日だね。何か欲しい物とかある?」
私の誕生日は4月14日だ。
「うーん、ネックレスとか!」
「でも、ももあんまりアクセサリー類は付けてないよね?」
「うん、私はそうゆうのあんまり買わないんだ。だから貰ったら嬉しいかなぁって思って」
「じゃあ今度見に行く?」
「ううん!それは冬馬さんに選んで欲しい!サプライズ的な?」
「もうサプライズにはならないけどね、わかった、ももに似合うの探してみるよ!」
「楽しみ~」
「その日は外で食事をしよっか」
「わーい、デートだ!」
「ももと出会って一年ちょっとかぁ。短いけど濃厚な一年だったなぁ」
冬馬さんが私に優しい眼差しを向ける。
「うん、一年前はまさか冬馬さんと同棲までするなんて思ってもみなかったし」
「俺もだよ!今でも夢を見てるみたい」
「てか冬馬さんは私のどこを好きになったの?」
何気なく聞いた質問に冬馬さんは少し照れながらも答えた。
「どこってそりゃ全部だよ?」
「割と最初の方から好きだったって言ってたけど」
「実はももがうちで働きたいって言った時、バイト募集もしてなかったし人雇うつもりもなかったんだよね」
「あー、なんか言ってたね」
「でもさ、ももがあまりにタイプ過ぎてつい採用しちゃったんだよ。馬鹿だよね」
苦笑いを浮かべながら頭を触る冬馬さんがとてつもなく可愛く見えた。
「じゃあ一目惚れだ!」
「まぁそうなるかな?ももは?」
「私は正直冬馬さんと関係を持つ前は少し世話焼きなお兄さん的な存在だったし鬱陶しい時もあったりした」
「酷いなぁ、俺はずっとももの事ばっか考えて行動してたのに鬱陶しいとか‥‥」
「でも今は違うじゃん!」
「そうだね!でも、ももがうちでバイトしてから何気にお客さんも増えたし貢献してくれてるよ」
「そうなの?それは嬉しいな」
「それに毎日ももがいてくれたお陰で仕事頑張れたし、嫉妬する事も多かったけどね」
「嫉妬?」
「店内で食べるお客さんでももの事とか足をずっと見たりする男性客って結構いたから本当は厨房に居て欲しかったけどそんな事言えるわけなくて、辛かったなぁ」
「そんな事あったんだぁ。知らなかった」
「多分制服ってのもあったんだと思う。エプロンだけじゃなくて店用のズボンを用意しておけばよかったと思ったよ!」
「冬馬さんってそんなに過保護だったの?」
「過保護じゃないよ!ももの事が大事なだけ!」
それを過保護って言うのだと思ったけど冬馬さんが嬉しそうに喋るものだからこっちまで嬉しくなっていた。
そしていつも泊まりの時は帰る時間も気にしながらだったけど今日からは気にせず冬馬さんと仲良く出来ると思うと一層楽しめた夜だった。
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