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第54話
しおりを挟む「引っ越しやめるよ。ももの側にいる」
ソファで隣に座りながら冬馬さんは私を優しく抱き寄せている。
「でももう準備してるんじゃないの」
この状況だけを見れば私たちは何の問題もないように見えるだろう。
「そもそも県外行こうと思ったのは、ももと会うのが辛くて決めた事だから。一緒に居られるなら行く必要はないしね」
「待って冬馬さん、まだ私決めたわけじゃないよ‥‥。あくまで相談したかっただけで」
「分かってる。でもこうして来てくれたって事は少なからず迷ってるんだよね」
「それは‥‥」
「結局あいつに対する気持ちもそれまでだったって事でしょ?」
「ねぇ‥‥冬馬さん。DNA鑑定出来ないかな」
「DNA鑑定‥‥?」
そう、私は妊娠が分かってから密かに調べていた。父親がどちらかはっきりすれば私も決断出来ると考えたからだ。
「うん、私調べたんだけど妊娠中でも出来るらしいの。冬馬さんが協力してくれるならやりたいと思ってる」
冬馬さんは一瞬嫌そうな顔をした。
「それはどうかな。そこまでして調べる必要ある?」
「‥‥うん」
「じゃあ父親だった方と一緒になるって事?」
冬馬さんからしたらそうとしか思えないだろう。でも、今の私にはそれだけ重要な事だ、正直柊生と居たい気持ちはあるが、子供を産むとなれば話は別だ。これまで好き勝手してきた私はこれ以上周りに迷惑をかけたくなかった。
「そうじゃないけど、最低限知っておきたくて」
「もも?不安なのは分かるよ。でも俺はどっちの子でも関係ない。なにより大切なももの子供だもん」
やっぱり冬馬さんは優しい人だ。
私の事を一番に考えてくれてる。
「冬馬さん‥‥」
「大丈夫だよ。きっと俺たちはそうゆう運命だったんだよ」
「私って本当最低だよね。冬馬さんに酷いことして、その上DNA鑑定までさせようとするなんて‥‥」
「いいよ。俺はどんなももでも受け止めるから」
冬馬さんの言葉はどれも私にとって都合が良く、嬉しい言葉ばかりだ。
「いつ引っ越しする予定になってるの?」
「一週間後だよ」
「少し時間が欲しい。冬馬さんの言葉は嬉しいけど、それじゃあただ甘えてるだけで自分では何も決めた事にならない。だから待ってほしい」
「分かった、でもこれだけは忘れないで。俺はいつでも、ももの味方だから」
「ありがとう」
「寒いからこれ来て帰りな」
冬馬さんは私が冷えないように上着を貸してくれた。
私は冬馬さんの香りがする上着を着て電車に乗った。
そういえば柊生と出会ったばかりの頃、よく電車で送ってくれてたんだよなぁ。
その頃の思い出が蘇っていた。
柊生また傷つけちゃうかな‥‥。
そして、私は実家に帰った。
「ただいま」
「帰るなら電話の一本ぐらいしてよね。ご飯は?」
「まだ」
「ちょっと座っときなさい」
母は冷たく言いながらもご飯を用意してくれた。
「今日はここで寝るから」
「わかった」
それ以上の会話はなかった。
きっと私の事呆れてるんだろうな、そう思っていた。
久しぶりの実家のお風呂、自分の部屋、疲れた心が少しホッとした気分だった。
母とは気まずいが、それでもやはり実家は落ち着くものだ。久しぶりに自分の部屋でゆっくり眠る事が出来た。
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