ふざけるな!

うさみん

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 ゲートを抜けると、そこは庭園の様な場所だった。
 レオンは改めて、カイルに向き直る。

「不足しているのは、『聖樹の夜露』『百合水晶の花』『月光の滴』の3つ。どれも保存が効かない上に、採取後に使用の時間制限があり、入手も扱いも難しい。」

「3つ共どれも、神殿御用達の逸品だな?レオンはつては有るのか?」

 神殿の関係者だけが取り扱いをしていて、通常では入手困難な品ばかり名前が上がる。
 カイルが思わず尋ね返してしまったのも、無理も無い話だった。

「いや、私は神殿に伝は無い。ただあの品は聖職者でないと採取出来ないだけで、元々神殿が独占している訳では無い。」

 聖職者で無いと採取出来ないならば、レオンに採取出来る道理は無い。
 しかし、聖魔法が使えるレオンは聖職者と同じく神殿に所属する資格を有していると同義なので、採取が可能なのだろうとカイルは単純に考えた。
 本来、聖魔法が使えるからと言っても、聖職者と同義には成り得ないのではあるが、神殿や聖職者の情報は余り開示されていないので、カイルが分からないのも無理はなかった。

  目深にフードを被ったままにレオンは歩きだすと、庭園の端の結界の張られた扉を魔法で解除する。

 扉を潜ると、目の前に美しい白い大木が現れる。
 白い葉が仄かに発光して神秘的に魅せていて、カイルは息を飲んだ。

「これが聖樹・・・。」

 カイルは初めて見た聖樹を、もっと間近に見ようと側に近付こうとした。
 しかし、後2メートル程の距離まで来ると、それ以上進めなくなる。

「聖樹は人を選ぶ。だから、普通は近付く事も出来ない。」

 レオンは何の障害も無く聖樹に近付くと、白い葉に小さな瓶を寄せる。
 煌めきと供に小瓶に夜露が集まっていく。

「百合水晶の花も同じだ。普通に摘むと枯れて黒ずんでしまって使えない。だからの無い聖職者か子供が摘み取らないといけない。」

 常識的に考えて、性交経験のあるレオンが、とされるのは有り得ない筈だが、聖樹の美しさに気を取られていたカイルには、そこまで思考が廻らなかった。

 聖樹での採取を終えると、その場で魔法を展開させて違う扉を出現させる。

「百合水晶の群生地は精霊界に在るから、普通に行くことが難しい。それも希少性を高める原因ではある。」

 2人は精霊界へ通じる扉を潜り抜ける。
 精霊界は虹色の空をしていて精霊達が自由に飛び交い、物珍しそうにレオンとカイルを遠巻きに眺めている。

 レオンは迷う事無く、簡単に群生地まで辿り着く。
 百合水晶の花の群生地はキラキラと輝き、触れ合う百合水晶がシャラシャラと澄んだ音を奏でる。

「綺麗なものだな・・・。」

 カイルは初めて見る煌めく群生地を眺めながら、感想を口にする。
 レオンは感慨無く手早く百合水晶を摘み取ると、魔法を展開させて扉を出現させる。

 説明はしてくれるものの、レオンは採取に時間を掛けず、あくまでクールで情緒も何も無い。

 急いでいるのは理解出来るが、お陰で付き添いのカイルは何もする事が無くて、レオンの行動を見学するのみだ。

「此処までは、問題無い。後は『月光の滴』だけだ。『月光の滴』は、聖なる泉に月光が蓄積されて結晶化した物だ。満月が照らしている間だけ、神に連なる者だけが手に入れる事を許される。」

 カイルはレオンの言葉に違和感を感じたが、レオンの魔力が大きく膨れ上がった事に意識を奪われる。

 レオンは扉の前で無詠唱のまま、幾つか複雑な高位の魔法を展開させる。

「この先はからは多分・・・魔法が使えなくなる。事前に発動させられるものは用意しておくが、月光の滴を採取したら、番人が来る前に私を急いで回収して欲しい。帰還するのにエクストラゲートを展開するのも頼む。」

 そうカイルに告げて、レオンが扉を開いた途端に複数の魔法が同時に発動する。
 カイルにも、高位の聖魔法が複数展開される。

 扉の向こう側は、淡い光が溢れて幻想的だった。

「精霊界からは神域への不可侵の概念が無いから、『天上の庭』にも通じる。」

 『天上の庭』は、神が下界に降り立つ場所とされている『神域 』の1つだ。

「そんな所に『月光の滴』が?!」

 神級の強固な結界に阻まれ、常人は入ることはおろか近付くことさえ許されない、そんな神聖な場所である筈だ。

「他でも入手は可能だが、此処が一番確実だ。夜間なら常に満月が出ているから・・・。」

 レオンが扉を潜り、カイルも後に続く。
『天上の庭』にカイルが踏み入った途端に、感電している様なピリピリと刺すような痛みが全身に走る。

「カイルには守護の魔法を幾重にも掛けてあるが、天上の庭に資格の無い者が入ると、神気に耐えられなくてショック死する事も有る。」

「そういうことは先に言ってくれ・・・。」

 事後報告が過ぎるだろうと、溜め息を吐きながら脱力する。

 
『天上の庭』は月光が淡く降り注ぎ、夢のような場所だった。
 光の満ちた草原の中心に煌めく泉が見えた。

 月の光を乱反射させて、まるで光の湧き出る泉だ。

 展開された魔法に呼応する様に、一筋の光の道が泉に向けて出現する。

 レオンは迷う事無く、その道を足早に辿っていく。
 レオンの歩みと供に光は増していき、レオンを包み込む様に呑み込んでしまう。
 いくらフードを被っても確かにこれでは、月光を浴びないでいるのは不可能だろう。

 強く眩い光が泉から発せられ、集束する。

「カイル!急いでエクストラゲートを展開してくれ!」

 それを合図にレオンが脇目も振らず、全速力で走って来る。

 その鬼気とした表情に、カイルは瞬時にエクストラゲートを展開させながら、身体強化をしてレオンに急いで駆け寄ると、レオンを横抱きにしてエクストラゲートに疾走する。

 頭上から神々しくも恐ろしい圧力が、凄まじい速さで迫って来る。

「いそげ!カイル!追い付かれる!」

 頭上に出現した複数の光の矢が前触れも無く降り注ぎ、地面に突き刺さる。

 寸前の所で、2人はエクストラゲートに滑り込む事が出来た。


 エクストラゲートで移動した先は天幕では無かった。
 しかし、乱れた息を整えていたレオンは気付かなかった。

「何だったんだ、あれは?」

 レオンに問い掛けながら、カイルは抱き抱えたレオンの防具を、然り気無く外す。

「神の番人だよ。正規の手段で入って無いから、捕まると死ぬまで幽閉される。」

 髪を掻き上げながら、レオンがカイルの問いに答える。

「レオン・・・。」

 非難するカイルの視線に、レオンは気まずそうに視線を逸らせる。

「時間も無いし、緊急事態だから仕方無い。」

 そううそぶくレオンに、呆れた表情を見せながらもカイルの手の動きは止まらない。

「そうか・・・。なら、こっちも急ごう。」

 体勢を変えて、カイルはレオンを組み敷く。

「おい!何をする!?」

 漸く、現状に気付いたレオンは、カイルを押し返そうとした。

「急ぐんだろう?呪いの解除はお前が魔法を使えないと、話に成らない筈だ。」

 カイルが服の隙間から肌に直に触れると、レオンの体が震える。

「そっ・・うだが・・・。」

 思わぬ甘い疼きが全身に走り、レオンの声が乱れる。

「利用しろと言っただろう?」

 カイルは甘く囁き掛けて、男の急所を握りこむ。

「はっ・・・っうっ!」

 明らかに甘い艶めいた悲鳴が上がった。
 呪いは発動しており、レオンの体をじわじわと快楽へ追い込む。
 カイルの言わんとする事は分かる。
 しかし、享受出来る事では無い。
 レオンは理性を総動員させる為に、唇を強く噛む。
 口内に血の味が拡がる。
 しかしレオンが期待した程の、理性を引き留める様な痛みは得られない。

「くっ・・・・つっ。」

 優しく握られたまま擦られて、一瞬硬直したレオンの体が脱力する。
 体が心を裏切るとは、正にこの事だろう。

「そのまま、理性を捨てて委ねろ・・・。」

 カイルの腰砕け確実の色気の有る囁きに、レオンの反発心が一気に膨れ上がる。

「委ねてたまるか!」

 力の入らない体を無理矢理に捻って、カイルの下から逃れる。

「やっぱり、レオンのそういう所は堪らなく可愛いな。」

 カイルが愉しそうに、ニヤリと笑みを見せる。
 カイルは弱く抵抗するレオンを無理矢理引き寄せ、自分の下に組み敷き直すと強引に服を剥ぎ取る。

「まて!止めろ!!」

 拒絶は聞き入れられず、顎を掴まれ強引に口付けられる。

「んっ・・・んっ・・うっ・・・っ!」

 強く吸い上げられて、舌先に痺れがはしり甘い疼きに変わっていく。
 息継く隙も無く貪られて、徐々に酸欠に陥っていく。
 ねっとりと絡ませた舌が離れ、糸を引く。

 「本意で無いのは分かるが、呪いを解く迄の刹那の間だろ?楽しめよ。」

 心底愉しそうに悪魔の様な笑みを浮かべるカイルは、狡猾な獣の様に妖艶に舌舐めずりする。

「ふざ・・ける・・な・・・馬鹿・・野郎・・・。」

 悔し涙を滲ませて、レオンは体の力を抜く。
 自分の無力さを感じる時が、レオンにとっては一番辛い。
 本当の意味で無力だった頃に、失った物は余りにも大きかったから・・・。
 勿論、レオンが心に仕舞い込んでいるそれを、カイルが知り得る筈も無いが・・・。

 抵抗を止めたレオンに、カイルは笑いながら喉を鳴らす。
 淫魔の呪いは欲望を受け入れる事に貪欲で、淫魔化した体は受け入れの準備さえ必要としない。

「今回も時間は掛けない。」

 カイルはレオンの秘められた蕾に指を差し入れ、具合を確かめる。

「んっ・・・っ。」

 甘く息を詰めて、レオンが這い上がった快感を圧し殺そうとカイルの腕にすがる。
 それは、更なる情事の快楽を求めてねだる仕草に似て、劣情を煽る。
 男の体で受け入れる事は初めての身体が、娼婦の様に淫靡に欲する様は扇情的でいて、憐れみを誘う。

「ふっ。」

 悦びで思わず笑いが零れる。
 相手を征する仄暗い悦びは、カイルの興奮を高める。

 「はあああぁっっ!」

 いきなり受け入れさせられた熱に、悲鳴と嬌声が入り交じった声が上がる。

「二度目の処女喪失も、痛みも無く気持ち良いだけだなんて、最高に幸運だな?」

 カイルの揶揄する言葉もまともに入らない程の快感が、全身を駆け巡る。

 「ふっうっ・・うっ・・・っくうっ・・・。」

 官能を煽るようにカイルの熱を締め付けて、レオンの仰け反った喉がヒクヒクと快感を享受して震える。

 カイルは戯れにその喉元を甘噛みして強く吸い付き、紅い所有印を付ける。
 そしてそのまま、激しく腰を突き動かした。

「はあぁっっ!!あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!」

 気遣いの無い乱暴な動きなのに、淫魔化している体は快感しか拾わず、突き動かされる度にレオンの心身共に蝕む。

 カイルは前回と同じく、抜かないまま中に何度も精を吐き出す。
 その度にレオンの中が歓びに震えて、貪欲に締め付けて更なる精を渇望する。

「憐れだなレオン・・・。呪いが解けたとしても・・・。」

 快感に翻弄されるレオンに向けて、呟く。 
 憐れむよりも悦びが、強くカイルの胸中を満たす。
 淫魔の呪いは心身共に蝕む呪い・・・。
 解けたとしても、『元通り』とはいかない。

「あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!ああぁ!!」

 レオンも合間に精を吐き出し、深く悦楽に溺れていく。
 淫魔の性が、レオンの理性を上回り壊していく。

「んっああぁ!!いい・・・っ!もっ・・・とぉっ!!」

 ねだる声に、カイルの尽きない欲望が滾る。

「お前の望むままに・・・貪れ!!」 

「ああぁ!!」

 何度も痙攣するレオンの身体が、艶めいて美しい。

 結局、呪いを鎮める為に必要な15回よりも、余分に計20回程吐き出してカイルはレオンから自身を抜き取る。

「呪いに必要な分以外の精は、吸収しないか・・・。」

 少し残念そうにカイルが呟く。

 快感の余韻に翻弄されて、意識を飛ばしているレオンの下半身は、レオンの放った精に濡れ、ヒクヒク痙攣する秘められた後孔からはカイルの精が漏れ出す。 

 淫魔化の解けた事後でも、その色香は尽きない。
 惜しく思いつつも、レオンと自分の身を清めたカイルだった。
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