ふざけるな!

うさみん

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「男に戻った時には僕の付けた跡は消えてたけど、呪いの影響だったのかな?レオンに似合ってた僕の印だったのに、残せなくて残念・・・。」

 ライナスはレオンの艶姿を思い出しながら、溜め息を付く。

「今度はそのままのレオンを僕色に染めたいなぁ・・・。」

 つい、ライナスがそんな煩悩に浸ってしまうのは、彼の苦手な団長の元に報告の為に赴かなければならないからだ。

 何故だか、ライナスは団長のクラウスが苦手だ。
 強靭で実力に伴った揺るぎ無い自信を見せるクラウスは、団長に相応しい人物だったが、団長を目の前にすると全てを見透かされる様な居心地の悪さを感じてしまうのだ。

「第1部隊第1陣ライナスです。レオンの指示で緊急の報告に来ました!」
 
 空元気で声を張り上げたライナスに、低く落ち着いた声が返る。

「第1部隊か、入れ。」

 本部の天幕に入ると、団長のクラウスが魔性の森の地図を見詰めていた。

「ライナス、第1陣が戻るには予定よりかなり早いが、何が有った?」

 クラウスの射抜く様な視線に、ライナスは緊張で身を固くする。

「はい、レオンが最上級魔族の淫魔妃と交戦して殲滅したのですが、呪いを受けて月の出ている間は魔法が使えない状態になっています。呪いを解除するには法具が不足しているので、現状では無理との事です。だから、現在は第2陣が夜間殲滅を担当してます。後、最上級魔族出現により、第2級警戒体制への移行を進言します!」

 一気に言い切って、内心ほっとしたのも束の間に、剣呑な視線がライナスに向けられる。

「レオンの迅速な対応に感謝しよう。先刻、最上級魔族のヴァンパイアロードが出現したと第3部隊から緊急報告が入った、現在交戦中だ。第2級警戒体制に移行する。ヴァンパイアロードには、第2部隊を増援として向かわせて対応に当たっている。まだ、ゲートが閉じる気配が無い。レオンに直ぐに『早急に呪いを解除して殲滅に当たれ、第4級警戒も念頭に置け』と伝えてくれ。エクストラゲートの使用を許可する。」

「第4級・・・。」

 ライナスの顔色が変わる。

 第2級警戒体制は最上級魔族が出現した際に発令される。
 そして、第3級警戒体制は最上級魔族がした際に発令される。
 更に、第4級警戒体制はがある場合に発令される。

 直近で魔王の出現が有ったのは10年前、その時は大きな被害が出て多くの人命が失われたとライナスも聞いている。

 現状、最強クラスの第2騎士団といっても、魔王相手では無傷では済まないのは解りきっている。

 ライナスは思わず固唾を飲み込むと、嫌な汗をかきながら直ぐ様レオンに向けて、クラウスの言った言葉を一字一句違えずに風魔法に乗せて送る。

「猶予は余り無い。頼んだぞ・・・。」

「はい・・・。」

  クラウスの言葉の重さに、ライナスは表情を強張らせたまま本部の天幕を出た。

 ゲートが開いてから5日目、通常なら後2日から5日は開いたままの状態で、現状最上級魔族が2人も出現している。

 このまま、何事も無くゲートが閉じるとは、流石にライナスでも思えなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 ライナスからの風魔法での連絡を受けて、レオンの顔色が明らかに変わる。

 最上級魔族が現れた時点で、可能性としては無い訳では無かったが、現実的に第4級警戒に入る確率としての要素は限り無く低い筈だった。

「レオン、大丈夫か?」

 レオンの余りの顔色の悪さに、カイルから気遣う声が掛かり、レオンは我に返る。

「何でもない。エクストラゲートの使用が可能なら一時間も有れば呪いを解除出来る。」

 月光を避ける為にレオンは雨天用のローブを羽織る。

 月光を遮りきる訳ではないので、気休め程度なのは解ってはいたが、無いよりはマシに思えた。

 エクストラゲートは望む場所へ一瞬で行ける便利な物だが、魔力の消費量がとても多い為に汎用出来ない欠点がある。
 その為、全ての騎士に携行品として貸与されているが、あくまでも非常時の緊急回避用としての使用を許可されている物だった。

 エクストラゲートを展開させると金色の魔法陣が現れる。

 「同行は必要か?」

 カイルの問い掛けに、レオンは視線を向ける。

 これから行く先では、魔法を使わないとならない場所が何ヵ所かある。
 魔法が使えなくなった時の事態も想定して動かなければならず、何等かの対処手段が必要だった。
 レオンの心情としては頼みたくは無かったが、一刻を争う現状を考えると選択の余地は無かった。

「背に腹は代えられない。カイル、すまないが一緒に来てくれ。」

「フッ、本音がだだ漏れだな・・・。」

 渋り顔のレオンに、カイルが柔らかく笑う。

 含みの無いカイルの笑顔に、そんな笑い方も出来たのかと、レオンは思わず不意打ちを食らった気分になる。
 
「時間が惜しい!行くぞ!カイル!」

 なんだかむず痒くて、誤魔化す様に声の口調を強くする。

 そんなレオンに続き、カイルはエクストラゲートの陣の中に入った。

 魔力に反応して魔法陣が輝き、光に包まれる様に2人の姿が消えていった。
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