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魔族の存在2

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「メリー、ごめんなさいね。受付をお願いするわ!」


 アンナはメリーに声を掛けると響を奥に案内する。

 響を別室に通し、暫く待つように告げる。

 響はソファーに腰掛け、ゆっくり寛ぎながら待つ。

 たいして時間を掛けずに、アンナはアイシャと供に部屋に戻って来た。


「お待たせしました。」


 アンナとアイシャが対面に座る。


「ヒビキ、先刻の話をもう一度話してもらえるかしら?」


 アンナの促しで響は改めて話始めた。


「実は昨日、人族に姿を変えて戦いを挑んできた魔族と交戦しまして···。その魔族は赤い肌で白い髪で、霊廟のスライムの件の当事者らしくて、俺に報復の為に接触して来たようです。生憎、逃げられてしまったのですが···。とにかく魔族を見掛けたのが初めてだったので、色々と詳しい話が聞ければと思いまして。」


 響の話を聞き終えたアンナは響を見据える。


「暗黙の了解ではあるけれど、実は魔族の存在が確認されたら、ギルドに緊急報告することが義務付けられているの。魔族は場合によっては町や都市単位で壊滅する程の脅威に成りうる存在だから···。」


 深刻な表情でアンナは響に告げる。


「ヒビキが交戦したであろう魔族については、こちらで対処する事が幸いにも出来ましたので、心配には及びませんが···。問題は魔族が単独ではない可能性について···ですね。」


 アイシャが口を開き淡々と告げる。

 アイシャの使った裏技を知らない響は、もう対応してあったのかと少し驚く。


「流石ですね。ギルドの見解としては、他にも魔族が居ると思われるのですか?」


 響の問いにアイシャはため息をつく。


「過去から今までの魔族の動きの傾向としては、先ず仲間が居ると考えて間違いは無いでしょう···。はっきりと魔族の関与が確認出来ているので、他のギルドにも連絡を取り異変が無いか緊急に調査を依頼している所です。もしかしたら何等かの被害が出ている所も在るかもしれません。現状としては一刻の猶予もならない状況ですが、魔族の情報が余りにも不足しています。後手に廻る可能性が高いのは否定できませんね。」


 魔族の出現は予見が難しいらしく、何処のギルドや領でも対応について苦労しているそうだ。

 その上、魔族に対抗出来る者も多くないらしい。

 魔族の特徴としては、下級魔族は黒い肌に白髪、中級魔族は赤い肌に紺色の髪、上級魔族は青い肌に金の髪、最上級魔族は人族とはあまり変わらない姿をしているらしい。

 ただ、魔族は総じて紅い瞳を持っており、唯一最上級魔族だけは金の瞳であるらしい。
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