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新たなる依頼1

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 宿で朝食を済ませ、響はギルドに向かう。

 同行すると言って聞かないティアは、居場所を何処にするか響と交渉を繰り返した結果、響が肩からぶら下げている道具袋の上に乗った状態で落ち着いた。

 頭の上や肩の上だとどうしても悪目立ちしてしまうので、響が速攻で却下したのは仕方の無いことだったが、ティアが渋々だったのは言うまでもない。

 それでも竜は珍しいらしく、通りすがりで気付いて物珍しげに見ている人は結構居た。

 ギルドに向かうと掲示板から新しい魔物の討伐依頼と採集依頼を合計3枚ほど取って受付に向かう。


「おはようございます。アンナさん。」


 笑顔で依頼書をアンナに渡すとアンナが小さく手招きする。

 顔を近付けるとアンナが小さな声で囁く。


「連日引き留めるのは申し訳無いのだけれど、アイシャが個人的にヒビキにお願いしたい事が有るそうなの···。これが終わったらギルドマスターの部屋に行って貰えないかしら。」


 何だろうと思いながらも快く了承する。


「分かりました。依頼の方は大丈夫ですか?」


「Cランクのキラービーの討伐とDランクのラフレシアの討伐とBランクのあかつき草の収集依頼ね。キラービーはCランクのモンスターで、この依頼はこの町から西側のネル村からの物よ。村の中にキラービーが巣を作ってしまって、危険で出歩けなくて困っているらしいわ。緊急性が高い依頼ね。歩いても半ゴウ(日)有れば辿り着ける距離よ。Dランクモンスターのラフレシアは、町から北の森の最北端に群生していて、この時期になると幻覚と麻痺作用の有る花粉を放出するから、森に入る狩人や木こりをしている人達の被害が増えない様に、定期的に討伐して貰っているの。こちらは歩きで2~3ゴウ(日)は必要になってくるかも。準備は充分にしてね。最後のあかつき草だけど、この辺りでは北東に有るガゼル山の山頂付近にしか生えていない希少な薬草で、出現するモンスターは強くてもDランク留まりなのだけど、ここからだと山頂迄登るのにどうしても3~4ゴウ(日)はかかるし、労力が掛かる割りに報酬額が高くないから、正直余り人気の無い依頼ね。でも呪いの解除には必須の薬草だから、これも定期的に依頼が有るわ。とにかく時間と事前準備が必ずいる依頼ばかりだから、単独で受けるより2~3人で受けた方が安全なのだけど···。」


 強くても駆け出しの冒険者である響に一抹の不安を覚えるらしいアンナに響は気楽な口調で答える。
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