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109,神の嘆き

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 モニターに映し出されるソウタは、苦境や困難を自らの力で次々と乗り越えていく。

 その度に世界から神の所にも力が流れ込む。

「期待以上と言うべきなのですか?ソウタ・・・過負荷で貴方の魂の変質が加速して止まらないのです・・・・。このままだと取り返しがつかなくなってしまいます・・・。」

 流れ込んで来る力は神にとっては僅かで、神の概念の喪失した世界に干渉するには、余りにも足りない。

 砂時計が零れ落ちる様に、ソウタの魂の限界の刻限が近付いていく。

「駄目・・・駄目です・・・ソウタ・・・。世界が壊れる前にソウタが・・・。もっとゆっくり干渉して行ってくれれば、こんな事にはならなかったのに・・・。彼の行動力がこんなにも影響を及ぼすなんて、想定外でした・・・。」

 伝えられないもどかしさは、後悔の苦悩に変わっていく。
 彼と繋げた絆が、時間と注ぎ込まれる力と供に、深まっていく程に神のやるせなさが募る。

 そして、図書館や人に尋ねる事で疑問を調べようとするソウタに改めて感心する。

「あの世界が神の概念を失った原因を調べようとしてくれているのですね・・・。私達神は大きな事象は認識出来ますが、小さな事象は掴み取る事が出来ない。だから、私の上の神たちは調べる事もろくにしていない・・・。私にも何か出来る事が有るでしょうか?」

 魔族がソウタを追い、絶望的な死闘が始まる様もモニター越しに、神は震えながら見ていた。

「あの子に次々と試練が続くのは、私が無力だったのが原因でしょうね・・・。私に力が無いせいで、助ける所か助言する事すら叶わないですし・・・。」
 
 一蓮托生と言えども、ソウタに対しては軒並みならぬ想いがある。
 自分の命運を預けようとする相手なのだ、決して偶然選んだ訳ではない。

「それだけの力を秘めていたからこそ・・・選び取ったのに・・・このまま無駄な足掻きとして終わってしまうのでしょうか・・・。」

 魔族に勝利したソウタに思わず安堵の息を吐く。
 しかし、それは一時的な気休めでしかない。

「ソウタ・・・。お願いです・・・無理をしないで・・・。」

 そんな神の願いも、ソウタには届く事は無かった。

 さいは投げられた・・・後は・・・結果が出るのみ・・・。
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