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111,破滅の序章
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一万もの人々が、お互いに殺気立って睨み合う舞台が、薄暗がりに包まれてその様子が一変した。
淡く光る慈悲深い表情の女神の姿が、上空に映し出される。
次の瞬間、瞬きと共に大量の光の粒子が、広大な舞台に降り注いだ。
光に触れた人々は、驚愕に震える。
「『神の奇跡』だ・・・。」
たった一人の呟きが、伝播する。
「俺達は・・・今まで何をしていたんだ・・・。」
「悪い夢から醒めて、まるで心が洗われる様だ・・・。」
「何だ!?体の痛みが無くなった!?」
「『神様』・・・!ありがとうございます・・・!」
ある者は咽び泣き、ある者は天に向けて祈りを捧げ、ある者は頭を垂れ、百人百様の光景が拡がる。
癒しと浄化の光が消え、正気に返った人達が、1人また1人と戦場から離れていく。
殺伐とした舞台には、遂に誰も居なくなり、シン・・・と静けさが訪れる。
ソウタは、脱力した様に静かに、上空から降下していった。
「流石に・・・疲れた・・・かな?」
霞みの様に儚く・・・その姿が揺らぐ・・・。
少しずつ空気に溶ける様に、その姿が端から掻き消えていく。
ソウタの姿が、人の目に認識出来なく成る程に色を無くして希薄になり、まさに消え失せるかと思われた。
バシッ!!
しかし、寸前の所で、叩き付ける様な音と一緒に、黒く細い蔦にその希薄な体が締め付けられ、地面に縫い止められる。
「な!?」
自分が消えそうであった事すら、意識して居なかったソウタは、拘束された体に歯を食い縛り、直ぐに記憶に留めていたある一点を凝視した。
「やっぱり、気付かれてたよな・・・。」
黒い石で人々を煽っていた黒幕が、ソウタのした事に気付くのは時間の問題だったとはいえ、ソウタにとってはあまりにもタイミングが悪い。
ソウタが石を結界で覆ってから2時間、相手は少なくとも10㎞は離れた場所に居る。
ソウタは結界で気配を隠していたので、まさかこんなに早く干渉して来るとは思わなかったのだ。
しかも、ソウタは満身創痍な現状で、力のある魔族を相手に出来る準備も出来ていない。
「どうする?このまま、手も足も出せないまま、喰われてしまうのは嫌だ・・・。」
自分の甘さが招いた事ではあるが、ソウタにとっても赦せなくて、どうしても野放しにしたくない相手であることも事実だ。
「皆、一人一人家族が居て、大切な人が居る。そんな人達の人生を壊させたくない!守りたいんだ、少しでも!」
ソウタの脳裏に、今まで出会ってきた人達の顔が過る。
残存魔力は僅かで、魂も削って疲弊している。
それでもソウタに、「諦める」という言葉は浮かばなかった。
今まで得た知識で乗り越える為に、頭をフル回転させる。
相手と接触する迄、きっと時間は僅かであろうと、魔力消費の少ない下級魔法を中心に、じわじわと回復する魔力に合わせて、少しずつ小さな結界に閉じ込めていく。
5分・・・10分・・・・。
拘束されてから、じわじわと時間が経過していく。
30分・・・1時間・・・・。
ポツリ・・・ポツリ・・・。
雲が拡がり、雨粒が地面に落ち始める。
雨足は徐々に激しい物となり、大地に潤いを与える。
2時間・・・3時間・・・・。
激しかった雨も止み、拘束されたままに、それ以上変化も無く、時間だけが経過していく。
薄れていたソウタの体が、少しずつ色合いを濃くしていく。
魔族対策に必死だったソウタも、魔力と共に魂が回復して来るにつれて、平静さを取り戻してきた。
相手の反応の無い現状が、不気味に感じられる。
5時間・・・8時間・・・12時間・・・・。
流石に、魔力も魂も完全に回復出来たものの、精神的ストレスは半端無く、地味にソウタを苦しめる。
今のソウタに、講じられる手段は、全て準備を終える。
「覚悟は決めてるんだ!何時でも来いよ!」
ソウタの呟きとほぼ同時に、拘束されたまま蔦に引き寄せられる。
物凄いスピードで、平原を抜け、木々の合間を縫い、ゴツゴツとした岩山に、引っ張られるままに移動した。
そのまま、岩で出来た洞窟に、引きずり込まれる。
「お初に御目にかかって光栄だ・・・。神の眷族よ!」
其処には、ぼさついた白髪に白い髭を蓄えた老獪の魔族が、口の端を愉しそうに歪め、洞窟の中央の岩山の上に気だるげに腰掛けていた。
淡く光る慈悲深い表情の女神の姿が、上空に映し出される。
次の瞬間、瞬きと共に大量の光の粒子が、広大な舞台に降り注いだ。
光に触れた人々は、驚愕に震える。
「『神の奇跡』だ・・・。」
たった一人の呟きが、伝播する。
「俺達は・・・今まで何をしていたんだ・・・。」
「悪い夢から醒めて、まるで心が洗われる様だ・・・。」
「何だ!?体の痛みが無くなった!?」
「『神様』・・・!ありがとうございます・・・!」
ある者は咽び泣き、ある者は天に向けて祈りを捧げ、ある者は頭を垂れ、百人百様の光景が拡がる。
癒しと浄化の光が消え、正気に返った人達が、1人また1人と戦場から離れていく。
殺伐とした舞台には、遂に誰も居なくなり、シン・・・と静けさが訪れる。
ソウタは、脱力した様に静かに、上空から降下していった。
「流石に・・・疲れた・・・かな?」
霞みの様に儚く・・・その姿が揺らぐ・・・。
少しずつ空気に溶ける様に、その姿が端から掻き消えていく。
ソウタの姿が、人の目に認識出来なく成る程に色を無くして希薄になり、まさに消え失せるかと思われた。
バシッ!!
しかし、寸前の所で、叩き付ける様な音と一緒に、黒く細い蔦にその希薄な体が締め付けられ、地面に縫い止められる。
「な!?」
自分が消えそうであった事すら、意識して居なかったソウタは、拘束された体に歯を食い縛り、直ぐに記憶に留めていたある一点を凝視した。
「やっぱり、気付かれてたよな・・・。」
黒い石で人々を煽っていた黒幕が、ソウタのした事に気付くのは時間の問題だったとはいえ、ソウタにとってはあまりにもタイミングが悪い。
ソウタが石を結界で覆ってから2時間、相手は少なくとも10㎞は離れた場所に居る。
ソウタは結界で気配を隠していたので、まさかこんなに早く干渉して来るとは思わなかったのだ。
しかも、ソウタは満身創痍な現状で、力のある魔族を相手に出来る準備も出来ていない。
「どうする?このまま、手も足も出せないまま、喰われてしまうのは嫌だ・・・。」
自分の甘さが招いた事ではあるが、ソウタにとっても赦せなくて、どうしても野放しにしたくない相手であることも事実だ。
「皆、一人一人家族が居て、大切な人が居る。そんな人達の人生を壊させたくない!守りたいんだ、少しでも!」
ソウタの脳裏に、今まで出会ってきた人達の顔が過る。
残存魔力は僅かで、魂も削って疲弊している。
それでもソウタに、「諦める」という言葉は浮かばなかった。
今まで得た知識で乗り越える為に、頭をフル回転させる。
相手と接触する迄、きっと時間は僅かであろうと、魔力消費の少ない下級魔法を中心に、じわじわと回復する魔力に合わせて、少しずつ小さな結界に閉じ込めていく。
5分・・・10分・・・・。
拘束されてから、じわじわと時間が経過していく。
30分・・・1時間・・・・。
ポツリ・・・ポツリ・・・。
雲が拡がり、雨粒が地面に落ち始める。
雨足は徐々に激しい物となり、大地に潤いを与える。
2時間・・・3時間・・・・。
激しかった雨も止み、拘束されたままに、それ以上変化も無く、時間だけが経過していく。
薄れていたソウタの体が、少しずつ色合いを濃くしていく。
魔族対策に必死だったソウタも、魔力と共に魂が回復して来るにつれて、平静さを取り戻してきた。
相手の反応の無い現状が、不気味に感じられる。
5時間・・・8時間・・・12時間・・・・。
流石に、魔力も魂も完全に回復出来たものの、精神的ストレスは半端無く、地味にソウタを苦しめる。
今のソウタに、講じられる手段は、全て準備を終える。
「覚悟は決めてるんだ!何時でも来いよ!」
ソウタの呟きとほぼ同時に、拘束されたまま蔦に引き寄せられる。
物凄いスピードで、平原を抜け、木々の合間を縫い、ゴツゴツとした岩山に、引っ張られるままに移動した。
そのまま、岩で出来た洞窟に、引きずり込まれる。
「お初に御目にかかって光栄だ・・・。神の眷族よ!」
其処には、ぼさついた白髪に白い髭を蓄えた老獪の魔族が、口の端を愉しそうに歪め、洞窟の中央の岩山の上に気だるげに腰掛けていた。
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みんなの感想(2件)
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主人公無理ゲーだよねってつっこみ満載で読んでます。
次がどうなるのか続きが楽しみなのでがんばってください。
ありがとうございます。
主人公の一生懸命な頑張りを応援してあげてくださいo(^o^)o
こらからも頑張ります(*^ω^)
退会済ユーザのコメントです
感想ありがとうございます。
とても嬉しいですo(^o^)o
チートとは名ばかりですが、主人公を応援していきたいと思います。
よろしくお願い致します(*^ω^)