中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

34,ナインの日常

　カインズが山小屋に向かい、俺は留守番をすることになった。

　朝晩と、裏に住むハリー夫婦が食事の準備と様子を見に来てくれる事になったらしい。

「いつ···かえる？」

　いくつか覚えた片言で尋ねる｡

「半月だ。其までにお前の家族がわかればいいんだが···。」

　カインズが頭を撫で回す。

「けが···するな。」

「心配してくれるのか？ありがとう。ナイン。お前こそ迷惑を掛けない様にな！」

　見送りの言葉にカインズに抱き締められる。

　意外に子供好きで世話焼きだ。

　別れの挨拶を済ませ、姿が見えなくなると、早速行動に移す。

　人に見咎められず行動出来る時間は、そう多くない。


　先ずは情報収集だ。

　生活様式、文化などを窓から行き交う人を見ながら記憶していく。

　なるべく、人間の生活圏で溶け込んで暮らしていかなければならない。


　そして、擬態。

　どう頑張っても、体液はでない。

　しかし、怪我を追っても傷口が真っ白なのはさすがに不自然だ。

　考えた結果、妄想力で再現する事にしたのだ。

　これが意外に大変で、想像したくないようなスプラッター映像を延々と妄想し、かなり心が折れそうだった。

　お陰で今では、例え体を切断されても、断面を再現出来るまでに成った。

　本当に俺は何を目指しているんだろうかと、少し虚しく成った。

　相変わらず精神強化と魔力強化も続けて、魂の回復にも余念がない。

　
　最後の難関はやっぱり言葉だ、最低限必要だがこればかりは妄想で何とかなる類いではないので、ハリー夫婦に地道に教わる。

　せめて、頭が良ければなぁ。

　３日経ったが、未だに片言だ。