中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

うさみん

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74,奇跡の代償

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 日没が差し迫る中、二つ目の中継地の村に辿り着く。

 今夜は此処に一泊して、早朝に出発する予定だ。

 ようやく3分の1程進んだ所らしい。

 ソウタは馬車から降りようとして、膝下に上手く力が入らず転けてしまい、男に助け起こされる。

「大丈夫か?」

「ありがとうございます。」

 御礼を言いながら体に付いた土を払う。

 直ぐに自分の体に異変が無いかチェックして、微量に体から魔力が抜け出しているのに気付く。

 前はこんなことは無かった。

 以前との違いは何だろうと考えて、そう言えば想いを込めているなと想い至る。

 魔力が抜け出していると言うことは、何らかの作用が起こっている証拠だ。

 後で確認してみようと思いながら、男に声を掛ける。

「お話があるので、後で宿で落ち合いましょう。」

「ああ、かまわないぞ。坊主。」

 そう言えば名を告げていなかった。

「俺はソウタです。名乗らずにすみません。」

「あ···いや···気にするな。俺はテリーだ。」

 今更の事でお互いに苦笑した。

 テリーと馬車の所で別れて、村の中を歩きながら仕掛けを施していく。

 奇跡を発動させる時間に思い悩んだが、村人が働きに出る前の朝の時間帯にすることにした。

 一人でも多く、奇跡を体感してもらう方が理想だ。

 30分程で村を廻り終えたので、道具屋を覗く。

 小振りの解体用ナイフと布を購入して、村の唯一の宿に足を向けた。

 テリーと落ち合うと夕食を共にした。

「ソウタは食が細いが、大丈夫なのか?」

 俺の少食を心配して、皿におかずを追加してくれる。

 年下の兄弟が居るからつい、世話を焼いてしまうとこぼしながら表情は穏やかだ。

 食事を終えて、テリーの泊まる部屋に一緒に向かう。

 部屋に入ると俺は鞄の中から布に包まれた石を取り出しテリーの手の中に押し付ける。

「これを町で換金して、少しでも足しにして!そして、家族と幸せをつかんで欲しい。」

 テリーは包みの中を見て、目を見開く。

 昨日の話から、それが何であるか察したらしい。

「いいのか?こんなものを俺に····。」

「俺には必要ない物だから···誰かの為になった方がいいと思う。それに多分クズ石みたいなものだから。本当に心ばかりの気持ちだけだし···気にしないで···。」

 言いたいことだけ言うとテリーの部屋を後にした。

 



 
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