中二な僕がささやかな祝福で生き延びる方法

75,奇跡の痕跡

　宿の部屋に入るとベットに横になる。

　精神を集中させ、微量に漏れ出て行く魔力を辿っていく。

　ソウタの意識は、魔力を道標に遥か彼方迄辿り着く。

　中継地に在ったあの小さな村だ。

　様々な人達の想いが渦巻いていたが、ソウタの込めた想いに助けられる様に、一人また一人と思い遣りと前向きな気持ちへと導かれていく。

　ああ、気持ちを後押しする為に魔力が使われているのか···そう納得してしまえば気持ちが高揚する。

　細やかでも自分の力が誰かの為になる、それはソウタにとって至上の喜びだった。

　そのうちの誰かが、『こんなに上手くいくのは神様のお蔭だ。』と感謝を捧げた。

　するとソウタの中に小さくても熱い活力が急に沸き上がる。

　突然の事に戸惑いを感じながらも、ソウタは意識を元に戻す。

　今のは一体何だったんだろうか？そう考えているとまた小さな熱い力が沸き上がった。

　自分の込めた想いが力になることで、相手の気持ちが返って来ているのかもしれない。

　自分のしたことの手応えを強く感じて新たなる喜びに繋がる。

　ソウタの気持ちに呼応する様に、双子達から喜びの感情が伝わってきた。

　ソウタは自分の体を抱き締めながら、想いを受け止めて安心する。

　これからも想いを込め続けよう···それが俺にしか出来ない世界を救う方法なのだから···。

　ソウタは強く想いながら回復の為に眠りについた。

　この選択がソウタの更なる苦難の始まりになるとは、その時のソウタには想定出来なかった。