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83,情報収集

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 魔物を退けた後は、何事もなく無事町中に入る事が出来た。

 今度の町は通商が盛んな町らしく、色んな服装の色んな人種が見られた。

 町の規模は双子の居た町と然程違いが無いようなので、ゆっくり町中を見て回る。

「図書館?」

 町の中程に差し掛かった所で、ふと役人達の詰所に併設された小さな建物の看板が目に留まる。

 引き寄せられるように建物の中に入ると、20畳程度の空間の壁面に所狭しと蔵書が並び、中央に閲覧用の簡易テーブルと椅子が置かれていた。

 学者風の若者や役人らしき人が本を片手に書き物をしていた。

「こちらは初めてですか?」

 突然、背後から声を掛けられて、思わず慌てて振り返る。

 そこには若い司書風の女性が優しい微笑みを浮かべ立っている。

「はい。この町に来たばかりで、見たことの無い場所だったので覗いてみたのですが、此方は許可や資格の必要な場所でしたか?」

 安易な行動だっただろうか?

 探るような俺の視線に気付いているのかいないのか、彼女は微笑みを深める。

「ここは許可も資格も必要ありません。領主様の意向で市井の有能な人材を育成するための学びの場として提供されている施設ですから。閲覧は自由にして頂けます。ただし、貸し出しは行われておりません。破損や持ち出しも禁じられておりますのでご注意下さいね。」

 そんな所が有るなんて驚きだ。

 有能な人材を身分問わず分け隔てなく広く育成しようだなんて、この世界の文化ではかなり先進的な考えだ。

「どの様な蔵書が置かれているのですか?」

 元々本好きなので、少しワクワクする。

「政治、経済、魔法、生活、動植物、魔物、歴史、戦術、医療、野営、農耕、狩猟···多岐にわたる専門書が有ります。」

「それは素晴らしいですね!」

 俺は魔法書が有る棚を教えてもらうと、早速手に取る。

 魔法書はそんなに冊数が多い訳では無いが、専門書を専門に置いてあるだけあって、中身は折り紙付きだ。

 ハリーじいさんの魔法書で学んだ初級魔法から下級魔法、中級魔法、さらには上級魔法まで魔法書が揃っている。

 何冊か中を確認しながら、下級魔法書から上級魔法書までの3冊と、生活魔法や無属性の魔法が乗っている本2冊など計5冊を手にする。

 魔法は属性の適応が有れば、原理を理解できていれさえすれば工夫次第で習得する事が可能だ。

 威力に関してはその限りでは無いが、習得さえ出来れば応用は効かせる事が出来る。

 読み始めるとつい時間を忘れ、5㎝の厚みがあった5冊を熟読してしまった。  

 どのくらいの時間が経ったのだろうか?

 建物には窓はなく外の様子が分からない。

 時間によっては、宿を探さなければならないかもしれない。

 まだ読みたい本は有るが、明日にしようと本を棚に戻す。

 司書風の女性にお礼がてら声を掛けて建物を出ると、日は少し傾き掛けていた。

 先刻とは打って変わって足早に町中を散策する。

 事前の仕込み場所を押さえながら、日が暮れきる前に町中を廻りきり、息を付く。 

 

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