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88,語りかける男

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 思わず疑り深い視線になってしまい、眉を寄せた。

 すると、フードの人物は笑いながらフードを下ろす。

 長い金髪を束ねて後に流した30代後半の男が柔らかな笑みを向けてくる。

「すまない。怪しい者ではないんだ···。私は魔道士でね。君は昨日も此処で熱心に魔法書を読んでいただろう?もしも魔法使いを目指しているのなら有能な魔道士や賢者に師事を仰いだ方が効率的だ。勿論、魔法附与に関してもね。だから、君さえ良ければ有能な魔道士に口添えしてもかまわないんだが、どうかな?」

 青田買いという事だろう。

 声を掛けられた理由に当りがついてほっとする。

「お話は有り難いのですが、魔法使いを目指している訳では無いので、口添えは不要です。」

 キッパリとした拒絶に男は苦笑する。

「魔法附与の蔵書は中身を読んでも要領を得なかっただろう?魔法附与は魔法使いの特権の様な物だ。その手法も魔法使い達によって秘匿されている。」

 足元を見られている。

「どうする?」

 思わず奥歯を噛み締める。

「魔法附与を覚える間だけでもかまわないのでしたら、師事の口添えをお願いしたいのですが···。」

 正直リスクが高いのは承知の上だが、これからの事を考えると背に腹は代えられない。

「だったら私が適任だ。私はシャルダン。その本の著者だよ。」
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