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96,食事の席で

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 促されるままに食堂に案内され、恭しくメイドに引かれた椅子にソウタは少し所在なさげに腰掛ける。

 魔法が使える事は付加価値がかなり高い事は理解してはいたが、魔道士は儲かる職業なのだろうか?

 屋敷はこじんまりとしていても、置かれている調度品は高そうな物ばかりだ。

 メイドが今日のメニューの説明をしてくれたが、まるで暗号の様な料理名だった。

 今まで触れ合った人達が庶民的だったので、落差に感覚が追い付いていかない。

 ソウタは慣れないテーブルマナーに四苦八苦しながら、食事をこなす。

「魔法と云えば···。」

 シャルダンがおもむろに会話を始める。

「今朝、神様の奇跡という現象が起こされていたが、君はどう考える?」

 唐突な質問に意図が読めずに食事は続行させつつ、シャルダンに視線を向ける。

「シャルダンさんは魔法と神様の奇跡が関係していると考えているのですか?俺にはそう感じられなかったし、どう繋がるのかはわかりませんが···?」

 敢えて分からない振りをしながら様子を窺う。

「魔法だったかどうかは重要じゃない。どういった思惑でこの現象を引き起こしたのか?という点だ····。」

 何だか···視る視点が違うようだ···。

「思惑?」

「あの魔法は初級魔法を幾重にも構築して発動されたものだった。初級魔法とは言え、あれだけの物となると膨大な魔力を必要としてしまう。とても単独で行われた事だとは思えない。何等かの意図を持った者達によって、組織的に行われた事だと私は推測している。」

「組織的···?」

 何だか、話が大きくなっていないか?

 持っていたフォークの動きを思わず止めてしまった。

 シャルダンは少し重い口調で、ソウタに語り掛ける。 

「組織ぐるみで何等かの謀略を企てているのではないかという可能性を示唆しているんだ。」 

 そんなわけ無いじゃないか!と思わず叫び出しそうになった。

 表面上は変化を見せずに、内心青くなる。

 でも、そう考える人達も居るんだと改めて気付く。

「本来なら此処まで労力を掛けてまで、こんな一文の得にも成らない慈善事業の様なことをするメリットは無いと思うかもしれないが····。見方を変えれば、人心の掌握には一役担っている。此処まで派手にやっているんだ···。此処で神様と名乗る者が現れたらどうだ?心根の弱いものはいとも簡単に信じ込み、その者の言い分を信じるかもしれない。しかも真偽には関係無く···ね。」

 情報戦や心理戦の常套手段で在ることは自覚してやっていたけれど、浅はかな考えは読まれてしまうのが常と云うことなんだろう···。

 疑いを持たれる事は深くは想定していなかった。

 いや···考えないようにしていたという方が正しいのか···?
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