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95,困惑

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 何だか面倒な事態になりそうで、ソウタは内心歯噛みする。

「条件は何でしょうか?」

「まあ、焦らずに私の話を聞きたまえ。」

 思わず表情を難くしたソウタに、シャルダンは余裕の笑みを浮かべる。

「君の魔法の威力が弱い理由について、先ず説明しよう。当たり前の事だが、魔力を持っているだけでは魔法は使えない。魔法を使う為には、体内に魔法を行使する為の魔力を出力させる出口が必要だ。その出口は人其々で大きさも形も個人差がある。魔力もその純度によって個人差はあるのだが、基本は水溶液の様なもので純度は低く流動的で自在に形が変わる。だからどんな出口でも、量に違いがあれど魔法を発動させる事が可能だ。だが稀に純度が高過ぎて魔力が水溶液ではなく結晶になっている場合がある。そうすると、結晶に合った出口で無ければ魔力の出力が出来ずに魔法が使えない状態になってしまう。君の場合は結晶と水溶液が混在している状態で、しかも出口が小さいのだろう。だから魔法の威力も弱くなる。」

 そこで一旦言葉を切り、ソウタを見据える。

「君の出来うる対策としては体の中の出口そのものを変化させるか、もしくは魔力調整をして魔力の結晶を出口から出る様に変化させるかしかない。しかし、体の中の出口を変化させる事はまず不可能だから現実的ではない。残された道は魔力調整を会得する事だ。」

 ソウタはシャルダンの言葉を反芻する。

「魔力調整···。」

「その為には恐らく遥かに時間が掛かる。故に私の条件は、一緒に王都に行き、仮ではなく正式な弟子になって貰うことだ。」

 キッパリと告げるシャルダンに、ソウタは詰めていた息を吐いた。

「少し考えさせて下さい。」

 口ではそう言ったものの、悠長にシャルダンに付き合える程、そんなにのんびり出来る時間は多分無いのだ。

 其なりに情報を手に入れる事が出来たのでそろそろ潮時か···。

 決意の感情を隠し、ソウタはシャルダンを見上げる。

「考える前に、魔法附与はどんな物なのか一度見せては頂けませんか?」

 考えるまでもなくソウタはシャルダンの意を飲むしかないだろう。

 ソウタが魔法使いについて素人な故にシャルダンはそう考えた。

「そうだね···。見せるのは構わないが、準備が必要だ。食事の後にでも披露しよう。」

 シャルダンはソウタを食堂へと誘った。

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