上 下
94 / 111

94,未知なる魔力

しおりを挟む
 応接室の扉を開きシャルダンは驚愕する。

 布を被された水晶が有り得ないレベルで発光しているのが見える。

 あの水晶は元来属性と内包する魔力を調べる為の物で、魔力を込めてもあそこまで発光するものではない。

 眩しさの為か目を閉じているソウタに目を向けて、更にシャルダンは驚く。

 滲み出る魔力が既に人のレベルの物ではなく、虹のように豊かな色と輝きを発していた。

 水晶に魔力を流した事で誘発されて、本来の魔力の姿が顕現したのだろう。

 シャルダンは思わず唾を飲み込む。

 なんと言うことだろう!?今までこんな事例は見たことも聞いたことも無い。

 未知なる畏怖に心を震わせながら、探求の好奇心には勝てない性分に苦笑しつつソウタに近付く。

「驚いたな···。君は稀に見る逸材のようだ!」

 シャルダンは平静を装いながら、水晶に触れる。

 水晶は光を失い、透き通った輝きを取り戻す。

 大袈裟にせず、警戒心を持たせず懐に取り込んでいかなければならない。

 幸いにもソウタは魔法使いの事には精通して居ないようだ。

 そこを大いに利用してしまおう。

「そうなんですか?いきなり眩しくて驚いてしまいまいたが···。」

「魔力の量に合わせて発光する仕組みだよ。君は矢張、魔力量が多いらしい。属性も全属性に適性が在るようだ。それも稀な事だよ。歴代でも全属性の適性が在ったのは僅かに2名程だ。」

 ソウタは曖昧な笑みを浮かべながら水晶に視線を落とす。

「実はね···。君の魔法の威力を高められる方法が在るんだ。試してみたいと思わないかい?」

 含みを持たせた言い回しに、ソウタの表情が少し変化する。

「何か、条件があるんですか?」

「察しが良くて助かるよ···。」

 シャルダンは笑みを深めた。
しおりを挟む
1 / 4

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

生残の秀吉

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:242pt お気に入り:2

小説家に恋しちゃったので、恋人ごっこはじめました!

BL / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

穴の影

現代文学 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

錬金術師のカルテ

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:6

名も無い男の慕情

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:8

ベスティエンⅢ【改訂版】

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:25

大杉の誓い~外交官 安達峰一郎 青春譜~

歴史・時代 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

処理中です...