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王都
第二十五話 王都散策Ⅳ
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その後は何もなかったかのように商店を見つけたので、三人で服を選んでいた。
流石に下着を選んでいるところを一緒するのは気が引けるので、店舗内の少し離れたところで待たせてもらった。
「二人とも、お気に入りの服は見つかった?」
「うんっ!」
「はい、王都は良い物が多いですじゃ」
「ならよかった」
二人は大事そうに買ったばかりの服の包みを抱えていた。
「まだ、どこかに行きたい?」
「信希さまはどこかに行かれないのですか?」
「ん-そうだな…」
みんなみたいに、これを見たいとかやってみたいとかあんまり考えてこなかったからか、咄嗟には思い浮かばない…。
元の世界で外出していた時はどんなところを見ていたっけ…。
来る日も来る日も、オタ活、オタ活、オタ活…あれ?これまでのオレの人生オタ活だけで終わってない?
「う、ウケるんですけどぉ…」
「信希さま?」
ど、どど、どうしよう…こんな芋野郎なんてことを知られないためには…なにかやること…やることは…。
そうだ!この世界のこと!
「これだけ大きな街だったらさ、図書館とかこの世界のことを調べられる施設みたいなものは無いかな?」
「そ、そうですね…」
ユリアは、そんなことを聞かれるとは予想だにしていなかったようで、思案するような顔で「ん-…」と唸っている。
困らせちゃったかな…?
「思い当たらないのじゃ…、少し街中を歩いて探してみる…とか?」
「なるほど!そうしよう」
「はいですじゃっ」
そう言うと、ユリアはまたオレの腕にしがみついてくる。
こ、この吸血鬼…ほんとうに…。
かわいいなぁ!?
とは言ったものの、どの辺りをどう探せば何が見つかるなんて見当もつかない。
馬車なんかの販売店は外壁付近で、多くの人が利用する商会や宿なんかは街の中央部に…、だったら王城の方へ行ってみると街の傾向なんかが見えてくるかもしれないな。
「王城の方へ行ってみようか?」
「はぁーい」
「それだったらあちらに見えてますじゃ」
本当だ。かなり離れているようにもみえるが、やはり王城というべきかそれなりの大きさの城が見えている。
「うん、あっちへ行ってみよう」
そうしてオレたちは、王城の方角へ向けて散策を続ける。
──。
この世界に来て、ケモミミ様…特にイレーナとは随分と仲良くなったような気がして、少し浮かれていたのかもしれない。
吸血鬼ではあるが、ユリアの見た目は人間の女性そのものだ。その見た目だけでどうしても普通の女性に接しているような感じがしてドギマギしてしまう。
でもどうしてイレーナとは、あんなに普通に接することができるんだろう…?この問題は迷宮入りしそうだ。
「信希さま、あそこではないですか?」
「なんだかソレっぽいね。少し覗いてみようか」
オレたちが見つけたのは、他の建物よりも大きく豪華な建物だった。
どことなく厳かな雰囲気を纏った外見で、人が住んでいるような感じではないと直感的に感じたので、少し中を覗いてみる。
「あの、ここはどういった施設なのでしょうか?」
「ああ、ここは古い文献を扱っているんですよ」
「お金を支払えば色々調べられたり…?」
「ええ、一か月分の入場券を販売しています。一人あたり銅貨一枚になります」
いかにも司書といった風貌の人に尋ねると、ここは図書館のような場所であった。元の世界の常識で言えば、有料なのがちょっと気にはなるが郷に入っては郷に従えと割り切る。
少しだけ高いなとも感じたが、一か月分であればそこまでの出費ではないとも思えたので、すぐに三人分の入場券を購入する。
「レストにはちょっと退屈かもしれないけど付き合ってくれる?」
「うん!信希と一緒の見る!」
「ユリアはどうする?」
「特に見たいものはありませんし…、信希さまはどんなことを調べられるのじゃ?」
「そうだな、この世界のことをもう少し知りたくて、過去の事とか、この世界の大きさとか知りたいかな」
「余も手伝いますじゃ」
「本当に?ありがとう」
「手分けして探すのじゃ」
そうして、有料の図書館の様な施設でしばらくの時間を過ごすことになった。
──。
「なるほどなぁ、技術的にはそんなに歴史は感じられなかったけど、この世界はそれなりの歴史があるみたいだな…」
調べてみて分かってきたことは、この世界がかなりの歴史を積み重ねてきていることだ。
魔法と呼ばれる技術があるおかげで、他の現代的な技術が発展していないことも予測される内容だった。
ユリアも一緒に調べてくれてかなり捗り、少しだがこの世界のことを知ることができた。
「信希さま、これなんかいかがでしょうか?」
「ん?」
ユリアが持ってきてくれたのはこの世界の地図みたいなものだった。
「世界地図かな…?でもどこがどこだか全く分からないね…?」
「余もこの世界のことはそんなに詳しくなく…イレーナが居ればもっと詳しく調べることができるのじゃが…。お役に立てず…」
「そんなことないよ?いっぱい探してくれてるじゃないか」
「そう言ってもらえると嬉しいのじゃ」
調べものをしていることに集中して、これまでの事をすっかり忘れていた。
オレの言葉に喜んでいるユリアの笑顔に、不意を打たれたようにドキッとしてしまう。
「じ、時間はまだ大丈夫かな…」
「集中している間にかなり経っていたみたいじゃ、そろそろ戻りますか?」
「ん、レストも寝ちゃってるし…。手伝ってくれる?」
「はいですじゃ」
オレは眠ってしまっているレストをおんぶするためにユリアに手伝ってもらう。
「じゃあ、もどろうか」
「はい。さすがにおんぶしていては抱き着けません…」
「また、今度…ね?」
少し照れくさいけど、これからはケモミミ様以外にも慣れていけるように頑張ってみようと思った。
オレの中で、少しずつ女性に対する考え方が変わってきているような気がした。
「はい、また今度っ」
──。
流石に下着を選んでいるところを一緒するのは気が引けるので、店舗内の少し離れたところで待たせてもらった。
「二人とも、お気に入りの服は見つかった?」
「うんっ!」
「はい、王都は良い物が多いですじゃ」
「ならよかった」
二人は大事そうに買ったばかりの服の包みを抱えていた。
「まだ、どこかに行きたい?」
「信希さまはどこかに行かれないのですか?」
「ん-そうだな…」
みんなみたいに、これを見たいとかやってみたいとかあんまり考えてこなかったからか、咄嗟には思い浮かばない…。
元の世界で外出していた時はどんなところを見ていたっけ…。
来る日も来る日も、オタ活、オタ活、オタ活…あれ?これまでのオレの人生オタ活だけで終わってない?
「う、ウケるんですけどぉ…」
「信希さま?」
ど、どど、どうしよう…こんな芋野郎なんてことを知られないためには…なにかやること…やることは…。
そうだ!この世界のこと!
「これだけ大きな街だったらさ、図書館とかこの世界のことを調べられる施設みたいなものは無いかな?」
「そ、そうですね…」
ユリアは、そんなことを聞かれるとは予想だにしていなかったようで、思案するような顔で「ん-…」と唸っている。
困らせちゃったかな…?
「思い当たらないのじゃ…、少し街中を歩いて探してみる…とか?」
「なるほど!そうしよう」
「はいですじゃっ」
そう言うと、ユリアはまたオレの腕にしがみついてくる。
こ、この吸血鬼…ほんとうに…。
かわいいなぁ!?
とは言ったものの、どの辺りをどう探せば何が見つかるなんて見当もつかない。
馬車なんかの販売店は外壁付近で、多くの人が利用する商会や宿なんかは街の中央部に…、だったら王城の方へ行ってみると街の傾向なんかが見えてくるかもしれないな。
「王城の方へ行ってみようか?」
「はぁーい」
「それだったらあちらに見えてますじゃ」
本当だ。かなり離れているようにもみえるが、やはり王城というべきかそれなりの大きさの城が見えている。
「うん、あっちへ行ってみよう」
そうしてオレたちは、王城の方角へ向けて散策を続ける。
──。
この世界に来て、ケモミミ様…特にイレーナとは随分と仲良くなったような気がして、少し浮かれていたのかもしれない。
吸血鬼ではあるが、ユリアの見た目は人間の女性そのものだ。その見た目だけでどうしても普通の女性に接しているような感じがしてドギマギしてしまう。
でもどうしてイレーナとは、あんなに普通に接することができるんだろう…?この問題は迷宮入りしそうだ。
「信希さま、あそこではないですか?」
「なんだかソレっぽいね。少し覗いてみようか」
オレたちが見つけたのは、他の建物よりも大きく豪華な建物だった。
どことなく厳かな雰囲気を纏った外見で、人が住んでいるような感じではないと直感的に感じたので、少し中を覗いてみる。
「あの、ここはどういった施設なのでしょうか?」
「ああ、ここは古い文献を扱っているんですよ」
「お金を支払えば色々調べられたり…?」
「ええ、一か月分の入場券を販売しています。一人あたり銅貨一枚になります」
いかにも司書といった風貌の人に尋ねると、ここは図書館のような場所であった。元の世界の常識で言えば、有料なのがちょっと気にはなるが郷に入っては郷に従えと割り切る。
少しだけ高いなとも感じたが、一か月分であればそこまでの出費ではないとも思えたので、すぐに三人分の入場券を購入する。
「レストにはちょっと退屈かもしれないけど付き合ってくれる?」
「うん!信希と一緒の見る!」
「ユリアはどうする?」
「特に見たいものはありませんし…、信希さまはどんなことを調べられるのじゃ?」
「そうだな、この世界のことをもう少し知りたくて、過去の事とか、この世界の大きさとか知りたいかな」
「余も手伝いますじゃ」
「本当に?ありがとう」
「手分けして探すのじゃ」
そうして、有料の図書館の様な施設でしばらくの時間を過ごすことになった。
──。
「なるほどなぁ、技術的にはそんなに歴史は感じられなかったけど、この世界はそれなりの歴史があるみたいだな…」
調べてみて分かってきたことは、この世界がかなりの歴史を積み重ねてきていることだ。
魔法と呼ばれる技術があるおかげで、他の現代的な技術が発展していないことも予測される内容だった。
ユリアも一緒に調べてくれてかなり捗り、少しだがこの世界のことを知ることができた。
「信希さま、これなんかいかがでしょうか?」
「ん?」
ユリアが持ってきてくれたのはこの世界の地図みたいなものだった。
「世界地図かな…?でもどこがどこだか全く分からないね…?」
「余もこの世界のことはそんなに詳しくなく…イレーナが居ればもっと詳しく調べることができるのじゃが…。お役に立てず…」
「そんなことないよ?いっぱい探してくれてるじゃないか」
「そう言ってもらえると嬉しいのじゃ」
調べものをしていることに集中して、これまでの事をすっかり忘れていた。
オレの言葉に喜んでいるユリアの笑顔に、不意を打たれたようにドキッとしてしまう。
「じ、時間はまだ大丈夫かな…」
「集中している間にかなり経っていたみたいじゃ、そろそろ戻りますか?」
「ん、レストも寝ちゃってるし…。手伝ってくれる?」
「はいですじゃ」
オレは眠ってしまっているレストをおんぶするためにユリアに手伝ってもらう。
「じゃあ、もどろうか」
「はい。さすがにおんぶしていては抱き着けません…」
「また、今度…ね?」
少し照れくさいけど、これからはケモミミ様以外にも慣れていけるように頑張ってみようと思った。
オレの中で、少しずつ女性に対する考え方が変わってきているような気がした。
「はい、また今度っ」
──。
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