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王都
第二十六話 宿にて
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そうして、オレは眠ってしまったレストをおんぶして、ユリアと共にみんなの待つ宿に戻ってきた。
宿の中に入り、先ほど戻ってきた時にみんなが集まっていた席には誰も座っていなかった。
「あれ、みんな部屋に行ってるのかな」
「かもしれませんの…?」
「部屋に行ってみよう、レストも寝かせないとだし」
「はいですじゃ」
店主に軽く挨拶を済ませ、オレたちは泊っている部屋に向かう。
女性陣が集まっている部屋に入ると、シアンとポミナは豪快に眠っていて、ミィズとイレーナにロンドゥナは楽しそうに談笑していた。
「信希、ユリア、おかえりなさい」
「おお、みなおかえり」
「もう体の調子は戻ったのか?」
「みんな、ただいま。体は今朝からいつも通りだよ」
昨日知り合ったばかりであるはずのロンドゥナは、オレの体調を気遣ってくれる。「出会ったばかりなのにどうして?」と思ってしまったが、心配してくれる気持ちには答えるべきだと思った。
「みんな、夕食は食べちゃった?」
「いえ、みんな信希と一緒がいいみたいでしたから。信希が出かけて少ししてから、ここでゆっくりしていました」
「そうか、レストは眠ってしまっているけど、みんな起こしてみようか」
「そうですね。起きなくても食事は取り置きできますから」
「みんな起きてー?ご飯だよ」
今しがたベットに下ろしたレストから順番に、シアン、ポミナと起こしてみるが、目覚めたのはシアンだけだった。
「まさき、おかえりぃ…」
「ね、寝起きケモミミ…」
かわいい。
「じゃあ、二人は残して食事にしようか」
「「はーい」」
──。
その後はみんなでゆっくり、食事と会話を楽しんだ。
寝るには少し早いかもしれないが、この日は朝から夕方まであれこれしていたせいか、気持ちい程度の疲労を抱えていたオレは就寝の身支度を終える頃には、良い眠気を感じていた。
「みんなはそろそろ休む?オレは眠たいけど」
「ええ、そうですね。女性陣だけで話したいことがありますし…」
なにやら意味ありげなことをイレーナが言っている。
「…?オレには内緒なこと?」
「まぁまぁ、信希。いずれ話すことになるだろうから、イレーナの好きなようにさせてはどうだ?」
「ミィズ…、まぁいいんだけど。嫌われていそうで…」
「信希さま、余が信希さまを嫌いになることは一生ありませんのでご安心ください」
そう言うとユリアが、オレに抱き着いてくる。
今日新しくした寝巻に御髪を整えた後もあって、とても良い匂いや柔らかい感覚にまた暴走しそうになる。
「ああ、わかってるんだけど…。ちょっとだけ心配になっちゃうんだ」
「…」
オレはしばらくの間、抱きしめてくれていたユリアの頭を撫でて「ありがとう」と告げるとニコリと笑顔を向けてくれる。
この吸血鬼、可愛すぎやしないか?
「んんっ、信希。ちょっとした心配ごとですから。確認が取れたら信希にもお教えしますから…」
「うん、分かったよ。じゃあオレは寝るね、おやすみー」
「おやすみー」
「ああ、おやすみ」
「「おやすみなさい」」
「おやすみなさいませ」
女性たちは全員が泊っている大部屋に入っていった。
最後に部屋に入るシアンが、寂しそうにこちらを向いて手を振っていたので「また明日ね」と手を振り返すと、にっこり笑い「うんっ」と言いつつ部屋へ入っていった。
──。
眠れると思っていたけど、二十分ほど経っても眠れなかった。
オレはこの世界に来てからのことを色々考えながら、これから先のことをどうしようかと悩んでいた。
「せっかくの異世界だし、世界中を旅してみるかー?」
布団の中で盛大に伸びをしながら、旅をするならどんな感じだろうと思案する。
「安全圏じゃないと風呂とかがなぁ、女の子ばかりだし…。あ、でも亜空間収納があれば風呂って持ち歩けたりする…?そういえば、イレーナから水晶貰うの忘れてたけど、明日聞いてみるか…」
今朝イレーナと共に行った魔法具店のおかげで、もっともっと旅路は楽で快適なものになりそうな予感がしていた。
「これまでの旅で欲しかったものは…」
どんなものがあれば便利か考えてみる。
「風呂、馬車、テントの様な天幕、人数分のベット、新鮮な食料、狩りに使える武器、料理に使えそうな道具…こんな感じか?」
こういうのって体験してみないと分からないからなぁ…。
それなりの期間旅してきたわけだけど、馬車があったらまた話は変わってきそうだし…。
旅の知識が豊富なイレーナも交えて考えたいところだな。
もうすっかり旅に出るつもりでいる自分に驚きつつも、ケモミミ様が居れば何でもできそうな気がしているから不思議だ。
こんな風に先のことを考えられるようになったのも、王都まで来ることができたからだな。
この世界に来てからは、ケモミミ様たちが安心して生活できるようにすることが第一目標だったから…。
「ちょっとわくわくするよな…。前の世界に居た時には感じなかったことばかり、ケモミミ様が居るのも、冒険してるのが生の実感を味わえるというか…」
でも、他のみんなは旅をしたいんだろうか。
イレーナは、何か目的と掟のため…?
シアンは、ご飯が食べれて暮らせればそれでよさそう。
レストは…、これと言って目的がある感じじゃなかったか…?
ポミナは、お酒飲んでおいしい物食べてれば幸せそう。
ミィズは、オレの子供をとか言ってたけど…旅は出来なくなるよな。
ユリアは、従属させたせいでついてくるだろうし…。
旅そのものが目的なのってオレだけだよな。強いて言えばイレーナは同じかもしれないが、掟とか目的とかオレとは別の場所にありそう。
「どうしたもんか」
旅をするならどのくらいか目的を決めて…からかな。
もしも、この世界から元居た世界に戻ることができないなら、このケモミミ様たちが居る世界で生活することになる。
そんな時に、自分の住む家にケモミミ様たちが一緒にいて静かに暮らせたなら…、これ以上に幸せなことはないと言ってもいいかもしれない。
「ここに住みたいって景色を探すか」
オレはぼんやりとだが、この世界での目的を持ち始めていた。
──。
宿の中に入り、先ほど戻ってきた時にみんなが集まっていた席には誰も座っていなかった。
「あれ、みんな部屋に行ってるのかな」
「かもしれませんの…?」
「部屋に行ってみよう、レストも寝かせないとだし」
「はいですじゃ」
店主に軽く挨拶を済ませ、オレたちは泊っている部屋に向かう。
女性陣が集まっている部屋に入ると、シアンとポミナは豪快に眠っていて、ミィズとイレーナにロンドゥナは楽しそうに談笑していた。
「信希、ユリア、おかえりなさい」
「おお、みなおかえり」
「もう体の調子は戻ったのか?」
「みんな、ただいま。体は今朝からいつも通りだよ」
昨日知り合ったばかりであるはずのロンドゥナは、オレの体調を気遣ってくれる。「出会ったばかりなのにどうして?」と思ってしまったが、心配してくれる気持ちには答えるべきだと思った。
「みんな、夕食は食べちゃった?」
「いえ、みんな信希と一緒がいいみたいでしたから。信希が出かけて少ししてから、ここでゆっくりしていました」
「そうか、レストは眠ってしまっているけど、みんな起こしてみようか」
「そうですね。起きなくても食事は取り置きできますから」
「みんな起きてー?ご飯だよ」
今しがたベットに下ろしたレストから順番に、シアン、ポミナと起こしてみるが、目覚めたのはシアンだけだった。
「まさき、おかえりぃ…」
「ね、寝起きケモミミ…」
かわいい。
「じゃあ、二人は残して食事にしようか」
「「はーい」」
──。
その後はみんなでゆっくり、食事と会話を楽しんだ。
寝るには少し早いかもしれないが、この日は朝から夕方まであれこれしていたせいか、気持ちい程度の疲労を抱えていたオレは就寝の身支度を終える頃には、良い眠気を感じていた。
「みんなはそろそろ休む?オレは眠たいけど」
「ええ、そうですね。女性陣だけで話したいことがありますし…」
なにやら意味ありげなことをイレーナが言っている。
「…?オレには内緒なこと?」
「まぁまぁ、信希。いずれ話すことになるだろうから、イレーナの好きなようにさせてはどうだ?」
「ミィズ…、まぁいいんだけど。嫌われていそうで…」
「信希さま、余が信希さまを嫌いになることは一生ありませんのでご安心ください」
そう言うとユリアが、オレに抱き着いてくる。
今日新しくした寝巻に御髪を整えた後もあって、とても良い匂いや柔らかい感覚にまた暴走しそうになる。
「ああ、わかってるんだけど…。ちょっとだけ心配になっちゃうんだ」
「…」
オレはしばらくの間、抱きしめてくれていたユリアの頭を撫でて「ありがとう」と告げるとニコリと笑顔を向けてくれる。
この吸血鬼、可愛すぎやしないか?
「んんっ、信希。ちょっとした心配ごとですから。確認が取れたら信希にもお教えしますから…」
「うん、分かったよ。じゃあオレは寝るね、おやすみー」
「おやすみー」
「ああ、おやすみ」
「「おやすみなさい」」
「おやすみなさいませ」
女性たちは全員が泊っている大部屋に入っていった。
最後に部屋に入るシアンが、寂しそうにこちらを向いて手を振っていたので「また明日ね」と手を振り返すと、にっこり笑い「うんっ」と言いつつ部屋へ入っていった。
──。
眠れると思っていたけど、二十分ほど経っても眠れなかった。
オレはこの世界に来てからのことを色々考えながら、これから先のことをどうしようかと悩んでいた。
「せっかくの異世界だし、世界中を旅してみるかー?」
布団の中で盛大に伸びをしながら、旅をするならどんな感じだろうと思案する。
「安全圏じゃないと風呂とかがなぁ、女の子ばかりだし…。あ、でも亜空間収納があれば風呂って持ち歩けたりする…?そういえば、イレーナから水晶貰うの忘れてたけど、明日聞いてみるか…」
今朝イレーナと共に行った魔法具店のおかげで、もっともっと旅路は楽で快適なものになりそうな予感がしていた。
「これまでの旅で欲しかったものは…」
どんなものがあれば便利か考えてみる。
「風呂、馬車、テントの様な天幕、人数分のベット、新鮮な食料、狩りに使える武器、料理に使えそうな道具…こんな感じか?」
こういうのって体験してみないと分からないからなぁ…。
それなりの期間旅してきたわけだけど、馬車があったらまた話は変わってきそうだし…。
旅の知識が豊富なイレーナも交えて考えたいところだな。
もうすっかり旅に出るつもりでいる自分に驚きつつも、ケモミミ様が居れば何でもできそうな気がしているから不思議だ。
こんな風に先のことを考えられるようになったのも、王都まで来ることができたからだな。
この世界に来てからは、ケモミミ様たちが安心して生活できるようにすることが第一目標だったから…。
「ちょっとわくわくするよな…。前の世界に居た時には感じなかったことばかり、ケモミミ様が居るのも、冒険してるのが生の実感を味わえるというか…」
でも、他のみんなは旅をしたいんだろうか。
イレーナは、何か目的と掟のため…?
シアンは、ご飯が食べれて暮らせればそれでよさそう。
レストは…、これと言って目的がある感じじゃなかったか…?
ポミナは、お酒飲んでおいしい物食べてれば幸せそう。
ミィズは、オレの子供をとか言ってたけど…旅は出来なくなるよな。
ユリアは、従属させたせいでついてくるだろうし…。
旅そのものが目的なのってオレだけだよな。強いて言えばイレーナは同じかもしれないが、掟とか目的とかオレとは別の場所にありそう。
「どうしたもんか」
旅をするならどのくらいか目的を決めて…からかな。
もしも、この世界から元居た世界に戻ることができないなら、このケモミミ様たちが居る世界で生活することになる。
そんな時に、自分の住む家にケモミミ様たちが一緒にいて静かに暮らせたなら…、これ以上に幸せなことはないと言ってもいいかもしれない。
「ここに住みたいって景色を探すか」
オレはぼんやりとだが、この世界での目的を持ち始めていた。
──。
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