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八章

56.操り人形編②<猫集会>

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翌日、予定通り僕らはハロルドの地下室に集まった。

(※以下猫語で会話は進みますが、この先は人語に翻訳した表示が行われます)

「では、まず始めにミーシャについて。侍女のマシマと王妃のシャーレンさんからの報告なんだけど、ミーシャは至って健康。気絶しただけだったみたい」

全員が神妙な顔つきで僕の方を見ている。

「ただ、やっぱり神通力を持っていて、それを消費したことによる気絶だと思う。詳しくはクローデンから」

前足をクローデンの方に向けると、みんながさっとそちらを向いた。

「私から話をするつもりだったが、この件に関して最も詳しい方が来てくださった。全員後ろを見てくれ」

クローデンが示したのは、僕の真うしろ。

なんだか大きな鏡があるなぁ……と思っていたら、反射していた面が水の波紋のようにゆれて……一人の女神を映した。

「ツクヨミ様!」

思わず声を上げると

「アニャビス、津波ぶりかしら?」

と、微笑んでくれた。

あぁ本物だ……。本物のツクヨミ様だ……。

感動で体が震える。

もう神界を離れてから一年ぐらい経っただろうか……。

人の一年は猫の七年程にもなる。

気分は七年越しの再会だ。

一人でうるうるしていると

「おいこらテトラ。何一人で感涙してんだ」

と、つっこみを入れられてしまった。

「うっ……うるさいな!泣いてないわ!」

顔を振って水気をとばして言うとクローデンが『嘘つけ』とでも言うのかように微笑してくる。

「では、ツクヨミ様。お話をいただけますか?」

このヤロウ。笑うだけ笑ったらいいとこ全部持っていきやがって……。

そんな僕らの様子を楽しそうに、ツクヨミ様は眺めると

「そうね、では私から説明しましょう」

とおっしゃった。

全員キチッと背筋を伸ばす。

「まず始めにミーシャさんについて」

ゴクリと唾をのんだ。

「彼女はなんらかの影響により、体内に大量の神通力を保有しているみたい。元々、それは内側に秘められていたんだけど、神との接触により開花。神通力による攻撃を目にして使い方を知り、暴走って感じね。それで疲れて気絶ってわけなんだけど……」

淡々と語られていた話が、何故か突然打ち切られる。

「?どうしたんですか?」
「あー……えっとー……その……どうやら神通力切れってわけでもないっぽいの」

神通力切れじゃない?

「と、言うと?」
「要するに、あの子の身体には神通力がまだある……というより、神通力を他者から吸収するの。自身の周辺の攻撃や防御、身体的接触、いっそ何も意識しなくても可能でしょうね。下手すれば私やアマテラス姉さんよりも強い筈よ」

……それはやべえ強いのでは?

「んー、でも、あまり大量に吸収するのは無理みたいね。反発しちゃうみたい」

とすると、アマテラスやツクヨミ様には勝てないだろう。

彼女らの神通力は無限とも言える。

「だから神通力の受け渡しも、自分の神通力がゼロの時しか不可能ね」

つまり、神通力切れにでもならない限り、他の神にはミーシャを助けられない、ということ。

まぁ、仕方がないことだし、第一今回ミーシャが倒れたのはただの疲労ということが分かったので問題なしだ。

「話は以上よ。クローデン、この後は?」

側に居たクローデンがさっと傅く。

「はい。一度解散して、ミーシャの様子を見に行こうかと」
「わかったわ。では明日、もう一度この場所に」
「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」

全員が声をそろえて応えると、ツクヨミ様は満足そうに頷く。

すると鏡はまた水の波紋の様に揺蕩って、また普通の鏡に戻っていった。
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