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第一章・突然の廃妃
7・変わらぬ笑顔
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一夜明けて思う事は、私はあのまま切って捨てられていたかもしれない┉という事だ。
気が動転していて昨日は気付かなかったが、王がお一人で来たとは思えない。
部屋の外には誰かしら騎士が控えていた筈。
その者に命じて┉もあったかも。
なにせ、王の求めを拒んだのだから┉。
もしも、昨日でなかったら?
廃妃の儀の前であったら、恐らくそのまま抱かれていただろうと思う。
だけど、その儀も済んで一王子に戻った私を、何故に抱かねばならないのだ?
──勝手過ぎる!
だけど、もう終わった事なのだろう┉。あの時殺さなかったならば、もうその件については今後触れないのだと思う。
今でも思い出すと、恐怖で震えが来るけれど、もう忘れてしまわなければ。
妃ではなくなったが、臣下の妻になるのだから┉。
「もう辺境伯様が城に到着されているそうです。そしてこちらがお持ちになった本日の衣裳です。」
朝物凄く驚いていたロイも、今は既に平然としている。
そして辺境伯様から受け取った衣裳を、広げて見せてくれた。
「わあ、綺麗な色だな?それに上質なシルクの。本当に有り難い┉。」
気分が浮き立つような淡紅藤色の、少し裾が緩やかに拡がった上品な上着だ。
私の瞳の色よりも淡い色合いだが、きっと合うように考えて決めていただいたのであろうと思う。
その事が、落ち込んでいた私の心を温かくしてくれる。
いくら半性身とは言え、男を妻にするなど申し訳ないかぎりなのに┉その心遣いが嬉しい。
これから辺境伯様と共に、王の前で婚姻の書状に署名しなければならない。
昨日の今日で、また王の前に立つなど足が震えるだろうが、今日は一人ではない!
辺境伯様と一緒ならば┉と、勇気が湧いてきた。
それからロイに手伝ってもらいながら身支度をする。唇の傷を化粧で何とか隠してもらって、一度辺境伯様にお会いする為に控えの間に向かった。
中に入って行くと、見覚えのある美しい銀色の髪の┉。
「ベルード辺境伯様┉」
思わず呟いた私の声に気付いて振り返り、眩しい笑顔を見せてくる。
助けていただいた、あの時と全く変わらぬ笑顔を見せられて、何だか分からぬが落ち着かない気持ちになる。
──この気持ちは┉何なのか?私は、どうしてしまったのだ┉。
辺境伯様はさっと私に近付いて、いきなり傅く。それから私の手を取りそっと甲に口づけを落とす。
「改めまして。私は辺境伯のマクシミリアン・ベルードと申します。シルバ・ラシュア様に求婚致します。私の手を┉取っていただけますか?」
そう真剣な表情で求婚され、私は狼狽える。
──ま、まさかこのように正式に求婚されるなど、思ってもみなかった!あのガルド王でさえもこのような事をされなかったから。
下げ渡し┉これは決定事項で、私には拒否権などないものだと┉。
「シルバ様、この衣裳を着て下さったのですね。とてもお似合いです。それに┉あの時よりもずっとお綺麗になりましたね。この度は自分本位な行動をしてしまいましたが、この先は私がお守り致しますので、一緒に辺境の地へ行っていただけますか?」
綺麗などと┉。それから再び言葉を変えて懇願され、初めての事に戸惑いを隠せないが、私の気持ちは既に決まっている。
「ベルード辺境伯様。こちらこそよろしくお願い致します。故国のカリシュとこの国の後宮以外、何も知らない無知な身ではありますが私を是非に辺境の地へお連れ下さいませ。」
そう私が告げると、不安そうな表情から一転、安堵の表情が浮かぶ。
「私のことは、マクシミリアンとお呼び下さい。」
「はい、マクシミリアン様。私のことは婚姻の署名が終わった後は、シルバとお呼び捨て下さい。ベルード辺境伯夫人になるのですから。」
そして私は笑顔でマクシミリアン様の手を取り、二人で王の間に向かったのだ。
気が動転していて昨日は気付かなかったが、王がお一人で来たとは思えない。
部屋の外には誰かしら騎士が控えていた筈。
その者に命じて┉もあったかも。
なにせ、王の求めを拒んだのだから┉。
もしも、昨日でなかったら?
廃妃の儀の前であったら、恐らくそのまま抱かれていただろうと思う。
だけど、その儀も済んで一王子に戻った私を、何故に抱かねばならないのだ?
──勝手過ぎる!
だけど、もう終わった事なのだろう┉。あの時殺さなかったならば、もうその件については今後触れないのだと思う。
今でも思い出すと、恐怖で震えが来るけれど、もう忘れてしまわなければ。
妃ではなくなったが、臣下の妻になるのだから┉。
「もう辺境伯様が城に到着されているそうです。そしてこちらがお持ちになった本日の衣裳です。」
朝物凄く驚いていたロイも、今は既に平然としている。
そして辺境伯様から受け取った衣裳を、広げて見せてくれた。
「わあ、綺麗な色だな?それに上質なシルクの。本当に有り難い┉。」
気分が浮き立つような淡紅藤色の、少し裾が緩やかに拡がった上品な上着だ。
私の瞳の色よりも淡い色合いだが、きっと合うように考えて決めていただいたのであろうと思う。
その事が、落ち込んでいた私の心を温かくしてくれる。
いくら半性身とは言え、男を妻にするなど申し訳ないかぎりなのに┉その心遣いが嬉しい。
これから辺境伯様と共に、王の前で婚姻の書状に署名しなければならない。
昨日の今日で、また王の前に立つなど足が震えるだろうが、今日は一人ではない!
辺境伯様と一緒ならば┉と、勇気が湧いてきた。
それからロイに手伝ってもらいながら身支度をする。唇の傷を化粧で何とか隠してもらって、一度辺境伯様にお会いする為に控えの間に向かった。
中に入って行くと、見覚えのある美しい銀色の髪の┉。
「ベルード辺境伯様┉」
思わず呟いた私の声に気付いて振り返り、眩しい笑顔を見せてくる。
助けていただいた、あの時と全く変わらぬ笑顔を見せられて、何だか分からぬが落ち着かない気持ちになる。
──この気持ちは┉何なのか?私は、どうしてしまったのだ┉。
辺境伯様はさっと私に近付いて、いきなり傅く。それから私の手を取りそっと甲に口づけを落とす。
「改めまして。私は辺境伯のマクシミリアン・ベルードと申します。シルバ・ラシュア様に求婚致します。私の手を┉取っていただけますか?」
そう真剣な表情で求婚され、私は狼狽える。
──ま、まさかこのように正式に求婚されるなど、思ってもみなかった!あのガルド王でさえもこのような事をされなかったから。
下げ渡し┉これは決定事項で、私には拒否権などないものだと┉。
「シルバ様、この衣裳を着て下さったのですね。とてもお似合いです。それに┉あの時よりもずっとお綺麗になりましたね。この度は自分本位な行動をしてしまいましたが、この先は私がお守り致しますので、一緒に辺境の地へ行っていただけますか?」
綺麗などと┉。それから再び言葉を変えて懇願され、初めての事に戸惑いを隠せないが、私の気持ちは既に決まっている。
「ベルード辺境伯様。こちらこそよろしくお願い致します。故国のカリシュとこの国の後宮以外、何も知らない無知な身ではありますが私を是非に辺境の地へお連れ下さいませ。」
そう私が告げると、不安そうな表情から一転、安堵の表情が浮かぶ。
「私のことは、マクシミリアンとお呼び下さい。」
「はい、マクシミリアン様。私のことは婚姻の署名が終わった後は、シルバとお呼び捨て下さい。ベルード辺境伯夫人になるのですから。」
そして私は笑顔でマクシミリアン様の手を取り、二人で王の間に向かったのだ。
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